メインビジュアルの画像
研究リポート
ライフスタイルビジネス研究会
変容する社会課題や顧客課題を的確に掴み、ドメインとバリューチェーンの拡大を切り口にした新たな「ライフスタイル価値」を創造するための真髄に迫ります。
研究リポート 2024.10.07

事業拡大による食を通じた社会貢献 土佐料理 司

【第6回の趣旨】
タナベコンサルティングのライフスタイルビジネス研究会(第4期)は、「ライフスタイルカンパニー100社の創造―10年後のビジネスモデルをデザインしよう」をコンセプトとして掲げている。①コングロマリットモデル(単一から複数ドメインへの複合化・多角化するモデル)、②マルチソリューションモデル(複数の技術や情報により課題解決するモデル)、③コネクテッドモデル(自社・顧客・社会をつなぎ共創し続けるモデル)の3つを研究する中で、第6回は「自社ビジネスの進化」をテーマにモデル企業をゲスト講師として招き、講話いただいた。

開催日時:2024年7月26日(高知開催)

 

 

 

株式会社 土佐料理 司
代表取締役社長 竹内 太一 氏

 

 

はじめに

 

土佐料理 司は、1917年に高知県で創業し、「祢保希(ねぼけ)」や「司(つかさ)」など、日本料理店の6ブランドを東京・大阪・高知で展開している。同社は「100の店舗を出す店より、100年続く店でありたい」という創業初期の思いを持ち続け、チェーンレストランとは異なり、急速な規模拡大ではなく、企業の永続性を重視して堅実に成長してきた。

 

「地域社会にとってなくてはならない存在」であるために、時代の変化に対応し、常に新しさを追求する同社の姿勢やビジネスモデルのポイントを、代表取締役社長である竹内太一氏の講話から学んだ。

 

 


 

まなびのポイント1:土佐料理専門店のニッチトップモデル

 

同社の創業は「料亭」だった。戦後は「料亭」から「大衆食堂」へ転換、その後「中華・洋食店」「和風レストラン」を経て、1964年に「土佐料理 司」を出店。日本初の「土佐料理専門店」という業態に至った。

 

土佐料理 司は、その後、大阪や東京など県外へ展開。食材にこだわった土佐料理を提供し続けることによって、差別化が難しい飲食店業において独自の地位を確立し、持続的に成長を続けている。

 

 


「土佐料理 司』の1号店 出所:土佐料理 司の講演資料

 

 

 

まなびのポイント2:時代変化への対応

 

「古いから老舗になるのではない。時代の変化に対応するから老舗になれる」と竹内氏が言うように、同社は強い覚悟を持ち、経営環境・社会環境の変化に対応してきた。土佐料理専門店として事業エリアを広げていったものの、1990年代に入ってバブル経済が崩壊し、借り入れ金が40億円を超える状況になったこともあった。

 

その際、同社はこれまでのリアル店舗による外食事業だけではなく、インターネット通販を含めたビジネスモデルへ転換していくことで、時代に対応することができた。また、近年はコロナ禍の影響で、店舗休業よる売上高の激減という危機はあったものの、これを1つの転換期と捉え、「働き方改革」「デジタル化対応」「インバウンド獲得を狙ったブランドの確立」など、さらなる変化への対応策を打ち続けている。

 

 

 

 

 

まなびのポイント3:地域に密着し、企業価値を高める

 

「良き店は良き街を作り、良き街は良き店を育む」という思いの下、同社は地元である高知に対してさまざまな活動を行っている。一例としては、カツオ資源保護のための「高知カツオ県民会議」へ参画。また「海の幸を未来に残す会」を応援し、持続可能な水産資源の普及に努めている。さらに、仁淀川のアユを守るため、森林再生による環境保全活動「協働の森」にも積極的である。

 

加えて、地元農家と連携した「直七農園」で、すだちの希少品種「直七」を活用した事業を促進し、農業振興や地域経済の発展にも貢献している。このような活動を通じ、地域の持続的な発展と企業価値の向上に大きく寄与しているのである。

 


地元の水産業や農家と連携し、持続可能な社会の実現を目指す 出所:土佐料理 司の講演資料