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コラム
FCC FORUMリポート
タナベコンサルティングが年に1度開催する「FCC FORUM(ファーストコールカンパニーフォーラム)」のポイントをレポート。
コラム 2024.10.01

「あそび」でより良い世界を目指す未来価値創造戦略 酢谷 亮介:ジャクエツの戦略解説

ジャクエツ

 

こどもが関わる環境をワンストップでプロデュース

 

福井県敦賀市に本社を置く株式会社ジャクエツは、幼児保育の教材教具や遊具などの企画・製造を行う幼稚園、保育業界のリーディングカンパニーである。

 

同社は全国に約4万施設ある幼稚園・保育園・こども園の約70%と取引があり、現在は色紙1枚の製造から幼児教育のノウハウを生かした街づくりやコンサルティングまで、あそび環境に関わる製品やサービスをワンストップで提供。創業以来、「すべてはおさな子のために」という理念を掲げて、「子どものあそぶ環境」を軸に社会課題の解決に取り組んでいる。

 

同社の創業は1916年。創業者の徳本達雄氏が、「これからの地域をつくっていくには幼児教育が重要である」との使命感に基づき、早翠さみどり幼稚園を開設したことが始まりだ。ビジネスの視点ではなく、社会事業としての創業であり、そのとき掲げた「すべてはおさな子のために」という理念は今もなお同社の戦略展開における軸となっている。

 

同社の強みは徹底した現場主義、実証主義、品質主義にある。全国約70カ所の営業拠点は全て直営店だ。約300名の営業担当者は直接顧客の元へ足を運び、自らの目で現場を見て、顧客の声を聞き、悩みを解消するために日々尽力している。

 

また、全ての製品を自社生産する同社は、品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO9001:2015」を取得。さらに、国の基準よりも精緻な独自の「JQ 遊具安全規準」(ジャクエツ・クオリティー規準)を設定し、より高いレベルの安心・安全を追求し続けてきた。この体制こそが、いち早く顧客のニーズを拾い上げ、顧客に寄り添った新しい製品・サービスを開発し、選ばれる価値を生み出し続ける原点である。

 

幼稚園の開設から幼児向け教材のメーカーへと成長を遂げてきた同社だが、1973年をピークに国内の出生数が減少に転じると、戦略のターニングポイントを迎えた。少子化という逆風の中、戦略を時代に合わせるべく原点である幼児教育の専門性を深掘りし、直販体制と安全で高品質なものづくりを掛け合わせた高付加価値商品の提供を強化していったのだ。

 

結果として、教材や遊具の製造販売から園庭のランドスケープデザイン、園舎の建築・リノベーション、街づくりまで、幼児が関わる環境全体をワンストップでプロデュースするようになった。さらに、園の新設や運営、ブランディング、商業施設の空間づくりコンサルティングまで事業化。子どもの関わる空間を一気通貫で提供できるバリューチェーンを構築した。ワンストップの価値提供こそ戦略によって磨き上げた強みであり、同社が価格決定権を持つ理由である。

 

PROFILE
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酢谷 亮介
Ryosuke Sudani
タナベコンサルティング エグゼクティブパートナー
困難なことこそ分かりやすく解決に導くことを信条に、クライアント視点でコンサルティングを展開。上場企業から中堅・中小企業まで、クライアントの強みを生かす戦略立案や組織デザインを得意とする。また、人事処遇制度・人材開発体系の構築も数多く手掛け、独自の視点に基づく「現場に合った風土改革」や人材育成支援も高い評価を受けている。