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研究リポート

新しいものを生み出す組織カルチャー研究会

ビジネスモデルや組織の変革が求められる現代において、人材価値を見直し、その価値を最大限に引き上げイノベーションを起こすことは必須の経営技術です。成長発展の足掛かりとなる「新しいものを生み出す組織カルチャー」を研究します。
研究リポート 2024.09.12

「ともにしあわせになるしあわせ」をコアバリューに活動するフェリシモの取り組み

フェリシモ

【第3回の趣旨】
新しいものを生み出す組織カルチャー研究会では、「文化」を研究対象とし、変革を起こし、持続的に成長している企業ではどのような「文化」を創り出しているのか、またはすでに「風土」となっているケースも含めて研究テーマとして扱い、相互に学び合う場としている。
第3回は、フェリシモが講演。社名のFELISSIMOは、「最大級で最上級のしあわせ」を意味しており、経営理念である「しあわせ社会学の確立と実践」を表現している。当日は、講演に加えてパネルディスカッションや本社施設、チョコレートミュージアムの視察を通して、同社がコアバリューとしている「ともにしあわせになるしあわせ」について学んだ。

開催日時:2024年6月20日(兵庫開催)

株式会社フェリシモ
経営企画室 広報部 部長 吉川 貴志 氏(中央)
新事業開発本部 文化事業推進部 部長 能勢 加奈子 氏(右)
生活雑貨事業部 猫部グループ 兼 キャラクターグループ 上席係長 小木 のり子 氏(左)

 

 

はじめに

 

1965年5月創業のフェリシモは兵庫県神戸市に拠点を置く、WEB・カタログでの接点を中心とした通販・EC事業、新規事業をはじめとするダイレクトマーケティング事業を行う企業でああり、2025年で創業60年を迎える。

 

経営理念「しあわせ社会学の確立と実践」のもと、「ともにしあわせになるしあわせ」をコアバリューにさまざまな事業を展開し、「永続的なしあわせ社会の創造」を目指している。

 

同社が目指すのは、①事業性(企業活動を維持発展させるための土壌)、②独自性(豊かな感性と情熱でなにかを生み出す力)、③社会性(社会全体の「ともにしあわせになるしあわせ」を増やそうという意思)、この3領域の同時実現の追求であり、同社が情熱を燃やして取り組む価値があり、永続的なしあわせ社会の創造につながると考えている。

 


フェリシモの社名の由来


フェリシモが目指す事業領域

 

 


 

まなびのポイント1:一人一人の思いの源「パッション・ドリブン」

 

フェリシモは、情熱こそが原動力である「パッション・ドリブン」という考え方に基づき、「社員が自発的・自覚的に取り組める仕事こそが取り組む意味のある仕事である」と定義している。

 

パッション・ドリブンを育むためにさまざまな施策を進めているが、その中でも特徴的なのが「自分カタログ」の作成である。同社は、採用試験からパッション(情熱)を重視しており、自分カタログは自分を改めて見つめ直し、履歴書だけでは表現できない個性や感性を一冊にまとめることで、これまでの人生の棚卸しとこれからの人生について考える良い機会となっている。

 

入社後の面談時にも自分カタログを活用しており、定期的に振り返る事で就職活動時の自らの思いを思い出し、再燃できるような仕組みづくりを行っている。

 


フェリシモのリクルートサイト

 

 

まなびのポイント2:「好き」から始まる事業展開

 

フェリシモは、社員と顧客の垣根を超えて、同じ気持ちを持つ仲間とともにかなえたい夢や新しいチャレンジを起点とした「フェリシモ部活」を行っている。

 

その中でも「猫部」は、「猫と人がともにしあわせに暮らせる社会」の実現を目指し、猫好きのためのオリジナルグッズ開発や、SNS投稿などのWEBコンテンツ運用、ショップ展開などの販売販促事業のほかに、保護猫の譲渡会のためのオフィス開放、基金活動、猫と猫好きのためのコンサルティング活動など、ビジネスを通して社会課題を解決する活動も行っている。

 

顧客との距離も近く、猫好きを集めたコミュニティづくりや、ユーザー・SNSフォロワーの声を取り入れた企画・商品開発は、顧客の関心を高めている。このような「好き」を原動力にした事業展開こそ、事業性・独自性・社会性が同時実現した取り組みである。

 


猫好きの心をつかむオリジナル企画

 

 

まなびのポイント3:「ともにしあわせになるしあわせ」の具現化

 

コアバリューである「ともにしあわせになるしあわせ」は、事業展開や仕組み、制度などさまざまな場面に表れている。その中でも象徴的なのは、フェリシモ本社である。

 

開放的なオフィスや社内報の展示、同社のロングセラー商品「500色の色えんぴつ」の展示など、各所にフェリシモらしさを体感することができる。また、2021年には新たなチョコレート文化を発信するために、「felissimo chocolate museum(フェリシモ チョコレート ミュージアム)」を本社2階にオープンした。館内はチョコレートの香りが漂う展示室やチョコレートとアートの融合など、チョコレートの魅力に溢れている。特に、symphonic forest(シンフォニック フォレスト)には世界中から寄贈された15000点以上のチョコレートのパッケージが展示されている。「贈られた箱の数だけしあわせがある」。

 

ここでも、「ともにしあわせになるしあわせ」が具現化されており、コアバリューを象徴する空間となっている。


フェリシモのロングセラー商品「500色の色えんぴつ」

「フェリシモ チョコレート ミュージアム」内の「symphonic forest(シンフォニック フォレスト)」