【第5回の趣旨】
建設ソリューション成長戦略研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会と、経営改革・業務革新のヒントを提供する。昨今は、経済的価値(技術・請負金額・工期などを通じて顧客に提供する価値)と社会的価値(人的資本の充実、地球環境配慮など社会課題の解決に資する価値)を組み合わせた経営が、高収益ビジネスモデルを実現する鍵となる。第5回はローカルエリアにおいて最先端の事業に取り組むイトイグループホールディングスの菅原氏にご登壇いただいた。
開催日時:2024年5月21日(北海道開催)
代表取締役 菅原 大介 氏
はじめに
イトイグループホールディングスの前身は、祖業であるイトイ産業が1948年に創業した地方建設業である。現社長である菅原氏が就任した2018年に、母体であるイトイ産業の「公共事業依存」「多様な人材獲得」「新規事業開発」という課題解決のために、イトイグループホールディングスを設立した。M&Aを進めながら現在のグループ数は11社まで拡大し、地方創生企業・街づくり企業として事業のコングロマリット化に取り組んでいる。
“自助努力から始まるインベストメントチェーン”をビジネスモデルとして、土木・住宅・介護・飲食・再生エネルギー・クラフトビール醸造など、多岐にわたる事業を展開。建設業を母体とする企業の地方都市における取り組み事例として、学んでいきたい。
イトイグループホールディングス企業理念
出所:イトイグループホールディングス提供資料より抜粋
まなびのポイント1:社長自身が経営者として頑張るための“企業理念”
菅原社長は大学卒業後に祖業であるイトイ産業に入社した。その後、公共工事の大幅減少、地元の朝日町が隣町に吸収合併され、本業の売り上げが最盛期の3分の1になり、グループ企業が倒産するなど、非常に苦しいスタートを切った。まずは事業収益性を上げるためにプレーヤーとして業務に当たり、東日本大震災の復興工事への参入をきっかけに上昇基調に入っていった。しかし、事業の「成功」を感じられる状態になった後、菅原氏は目的を見失う感覚に陥ったという。そこで、“経営者として自分と会社が頑張るための決意表明”として企業理念を設定し、今では「社長が目指し続ける指針」としての役割を果たしている。
イトイグループホールディングスコーポレートサイト
まなびのポイント2:近年の取り組み
菅原氏の斬新な取り組みは快挙にいとまがない。イトイの日(11月1日)を制定したり、WeX(週休2.5日にして、社員は0.5日にプロトレーナーや鍼灸師によるケアを受ける)を導入したり、自社YouTubeチャンネル「イトイヲシッテ」をスタートしたりするなど、取り組みは多岐にわたる。
他にも、部署を横断したチームを作り「いいねpt(ポイント)」で「最も良いチーム」を決める社内活性化の取り組みや、社内でほしい社員をリーダーが指名する「社内ドラフト」も盛り上がっているようだ。
このような取り組みは社員の接点が増え、相互理解が深まる事で社員の心理的安全性を向上させられる。また、内発的動機付けを仕事とひも付けることで社員満足度向上や、会社・個人双方に適役な人材育成、事業全体の生産性向上につながっているという。
YouTubeチャンネル「イトイヲシッテ」
まなびのポイント3:コングロマリットとグループシナジー
SDGsが目指す「誰も取り残さない社会」の構築を、同社も目標にして「地方創生企業」として事業を行う。「社員」「発注者や取引先」「地域住民」の全てから「良い会社」だと思ってもらうことを共通の理念としている。
現在11社あるグループ企業では、土木・住宅・介護・飲食・再生エネルギー・クラフトビール醸造など、祖業である建設業やその周辺領域だけでなく、地方都市ならではのコングロマリット戦略で幅広く事業を展開している。「事業責任者ミーティング」を定期的に開催することで、多岐にわたるそれぞれの事業を束ね、グループシナジーを生むための双方向アイデアや、単体事業での目指す方向性をB/Sをベースに構築するなど、経営者を育てるための取り組みにも余念がない。
イトイグループのコングロマリットとグループシナジー
(出所:菅原社長の講演レジュメより)