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研究リポート
PR/広報研究会
クロスメディア時代を生き抜くために欠かせない「PR/広報」の本質的価値と、顧客体験価値向上に成功している企業の事例を通して、最適なコミュニケーション手法を研究します。
研究リポート 2024.09.12

全社員が共通の志を持つためのインターナルコミュニケーションとは 加和太建設

【第4回の趣旨】
当研究会では、クロスメディア時代の経営モデルに不可欠な本質的価値と最先端事例を学び、メディア・ステークホルダーを戦略的に動かして物やサービスを売る方法や、自社の魅力を最大限に発信する広報・PRのメソッドを提供する。
第4回のテーマは、「社内報をはじめとしたインターナルコミュニケーション」。ゲスト2社(加和太建設様・日本全薬工業様)からPR・広報について講演。社内向けPRの重要性について深く考察した。

開催日時:2024年8月23日(東京開催)

加和太建設株式会社
代表取締役 河田 亮一 氏
経営推進部 広報課 村上 萌 氏

 

 

はじめに

 

創業78年の歴史を持つ、静岡県三島市に本社を構える加和太建設。2009年の売上高約50億円から、2024年には約170億円と急成長を遂げている。

 

同社は、「世界が注目する元気なまちをつくる」をビジョンに掲げ、ものづくり(土木・建築)、コトづくり(施設運営)、まちづくり(不動産)、建設業の変革づくり(ConTech)の4事業を基底に活動をしている。

 

歴史が長い企業はしがらみや慣習に引っ張られてしまいがちだが、同社は自社だけでなく社会全体を発展させる必要があると早い段階でかじを切ったことから、仲間・お金・アイデアを手に入れるために社員のリソースを最大化させる必要が生まれ、「インターナルコミュニケーション」を重要した取り組みを始めた。

 


「インターナルコミュニケーション」を重視した取り組みを推進
※加和太建設提供資料より

 


 

まなびのポイント1:経営視点から見るインターナルコミュニケーションの必要性と継続の効果

 

インターナルコミュニケーションとは、社内における広報活動を指す。同社は、ビジョンの実現と、社員一人一人の取り組み・思いがどのようにつながっているのかを理解し、定着させるためにも、「思想のデザイン」に注力してきた。

 

CI(コーポレート・アイデンティティ)・VI(ビジュアル・アイデンティティ)の策定や、経営方針発表会の開催、社内報の発刊、社内論文コンテストの実施、社内掲示板の積極的な活用、社内YouTube、社内教育システム「加和太アカデミー」の構築と運用、定期的なエンゲージメントサーベイによる浸透度調査などを実施している。

 

このような取り組みが社員の共感を呼び、社内掲示板の投稿は1~2年で急速に増えた。自主的に社内コラムを発信する人材が増えたほか、若手社員が会社や自身の存在意義を自分の言葉で話す、地域との関わりの深化、社員による自発的なイベント企画など、自発的な取り組みが増えている。

 

 

まなびのポイント2:加和太建設独自の取り組み

 

同社のインターナルコミュニケーションに関する取り組みで、特徴的なのは次の3つである。

 

⑴社内論文コンテスト「KWTコンテスト」

全社員を対象に、毎年1回応募できる論文作品の中で、優秀作品を冊子にまとめている。中には、国土交通省の作文コンテストで最優秀賞を受賞する社員も出てくるなど、帰属意識の向上や社員同士の横軸の業務理解だけでなく、採用ブランディングとしても利用できるツールに成長した。

 

⑵社内報

社内報には社員がより会社を好きになる、仕事に生かせる情報が掲載されている。愛着・親近感を持てるような内容となるよう広報課が編集部として発刊しており、インターナルコミュニケーションを感情の側面から支えている。

 

⑶動画コンテンツ制作(Youtube)

前述の2つだけでなく、さまざまなインターナルコミュニケーションが奏功し、社員からの発信が増えた一方で、社長のメッセージが見逃されてしまう課題も生まれた。そのため、社員との定期的な接点を確保するために動画コンテンツを作成している。

 


加和太建設が発刊する社内報「KAWAZINE」

 

 

まなびのポイント3:PDCAを回して継続的に運用するための社内体制と効果測定方法

 

同社のインターナルコミュニケーションは広報課が管理しているが、実は社員が自分事化できるよう設計されている。全社員の「やってみたい」「賞をとりたい」というワクワク感を上手く刺激する設計である。これに起因して、社員が自発的に発信をすることで善循環が生まれ、継続した運用を可能にしている。

 

また、これらの施策が目的と嚙み合っているかを確認するために、1年に一度全社員にエンゲージメントサーベイを実施して、効果を定点観測し、理念浸透度を確認している。

 

理念浸透についても、人事課が担当する教育の取り組みにおいて、加和太アカデミーという自社で構築する教育体系の中で、会社の実現したいことについて社長からのレクチャー動画の展開、等級別に自身の仕事と結び付けるための講座を定期開催している。このようにインターナルコミュニケーションにおいては全方位にわたって社員と密に接触をしている。


KWTコンテストの優秀作品を読み社員同士の意識を向上させている