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コラム
イベント開催リポート
タナベコンサルティンググループ主催のウェビナーやフォーラムの開催リポートです。
コラム 2024.09.02

企業・商品ブランドを次のレベルへ 広報・PRミーティングリポート

 

タナベコンサルティンググループは、2024年7月12日(大阪)と7月17日(東京)、
広報・PR担当者向け交流会「広報・PRミーティング」を開催。
広報・PR業務に携わる計70名に参加いただき、グループワークを行った。

 

冒頭の講義に、報道番組のディレクター出身であるカーツメディアワークス(タナベコンサルティンググループ)代表取締役の村上崇氏が登壇。メディアに報じられるメリットは、次の3つであると述べた。

 

❶ アテンション
テレビ番組、ウェブメディア、インフルエンサー、新聞などが自社を取り上げてくれると、1回の発信で多くの人の注意を引き付けられる。

 

❷ コストが安い
雑誌記事やテレビ番組で取り上げられる場合、基本的にお金はかからない。また、生活者は興味を持って記事や番組を見るので記憶に残る。つまり、継続的な効果があるため、広告・販促費もコストダウンできる。

 

❸ ブランディング
メディアやSNSは、第三者に評価されたからこそ発信される。ゆえに、情報掲載されたこと自体が信頼性とブランド価値を高める。

 

生活者が企業に持つブランドイメージを、企業がコントロールすることは難しい。そこで、広報担当者が目指すべきは、ブランドアイデンティティー(「当社や当社の商品・サービスを、こんなふうに思ってほしい」というゴール)をどう確立するかである。

 

ブランドアイデンティティーは、自社内でも部署や役職などによってバラつくことが多い。まず部署・役職別に「どう思われたいのか」を洗い出し、全社で統一する必要がある。参加者は自社のブランドアイデンティティーについてワークシートに付せんを貼り、洗い出しの方法を体感した。

 

 

 

 

「広報・PR」と「広告・宣伝」の目的は同じである。どちらも理念・ビジョン・ミッションの追求や、企業価値・売り上げ・利益・認知度の向上のために行われる。異なるのは、「第三者評価(報道・評判)」なのか、「自社発信(広告・販促)」なのかだ。生活者の「信頼」を醸成できるのは、第三者評価が入るアーンドメディア、つまり広報・PR起点の情報だけである、と村上氏は解説した。

 

では、どうすれば報道されるのか。広告やコンテンツ発信、イベント販促などに「広報視点」を加えて話題化することで、生活者の信頼や愛着の醸成にレバレッジを効かせる。

 

また、マスメディア(特にテレビ)は、他メディア、特にSNSやウェブメディアの旬なネタを基に企画を考えることが多い。広報型コンテンツを充実させ、SNSやウェブメディアで話題になることが、マスメディアからの取材依頼の獲得につながる。

 

さらに、ヒットの裏には必ず「報道連鎖」がある。テレビや新聞で取り上げられると、他媒体にも取り上げられたり、SNSで拡散されやすくなったりする現象だ。広報・PR情報をいかに報道連鎖につなげるかが、広報戦略において重要な視点である。

 

メイン講義として、村上氏はまず「報道価値」について説明した。報道価値とは、「報じる価値があるかどうか」。メディアが欲しいネタ(視聴率が高まるネタ)から逆算して、「何が新しいのか」「他と何が違うのか」「ポイントは何か」「今報じるべき理由」という視点から、自社の広報・PR企画を考える必要があるということだ。

 

メディアで報じられる3要素「ヒト(インタビュー)」「モノ(商品・サービス)」「コト(ヒトやモノを取り巻くストーリー、体験価値)」に加え、報道価値を生むのに必要な6要素「新規性」「意外性(暗黙知を超える)」「社会性」「信憑しんぴょう性(データのエビデンスがあるか)」「シーズナル(季節)性・トレンド性」「物語性」のどれに当てはめてPRするかを考えると良いという。

 

この講義を踏まえ、参加者はまず、トレンドキーワードと自社事業を掛け合わせるアイデア出しを行った。これは、課題を可視化し、社会的な目を向けてもらうテクニックだ。

 

次に、180度異なるカテゴリー同士をくっつける、意外性(逆張り)のテクニックを学んだ。例えば、「コーヒー=眠れない」の逆張りで、カフェインレスコーヒーの認知度向上策として「睡眠カフェ」というイベントを実施するなどだ。

 

情報の信憑性を高めるデータ・数値化のテクニックも学んだ。報道に必須の「裏取り(情報がエビデンスに基づいているか)」に応えられる調査型のプレスリリースなどは、暗黙の信頼と幅広い報道価値を生む。

 

 

 

 

 

以上を踏まえ、参加者は最後にグループワークを2つ実施した。1つは「toC逆張り企画」。与えられたテーマ商品のキーワードを考え、その逆のキーワードを出して報道価値をつくる。「明治チョコ」がテーマのチームからは、「令和チョコ」「平成チョコ」「昭和チョコ」などを地域限定で発売するといったアイデアが出た。

 

もう1つは「toB調査企画」。調査リリースをニュースにするために、どんな調査テーマを設定するかである。「東レ(新素材の繊維)」がテーマのチームは、「夜間の熱中症が多いというトレンドを踏まえ、どんな環境で、どんな寝具で寝ているか、どれくらいよく眠れているかを調査し、『この新素材の繊維を使った寝具だと最も快眠できる』とう結論に持っていく」というアイデアを発表した。

 

村上氏は、本ミーティングのまとめとして次の3点を挙げた。

 

❶ 自社をどう思ってもらいたいかという共通認識を持つ

 

❷ 報道連鎖:報道が報道を呼ぶことを理解する

 

❸ 報道価値:メディアが欲しくなる情報を理解する

 

参加者は、情報収集と報道連鎖・報道価値の重要性、またマスメディア露出を増やしやすい情報発信のコツを体験。ミーティング終了後には、「報道=ニュースのイメージが強かったが、いろんなシーンで一番使えるツールだと気付いた」「業界の壁を越えて広報担当者と意見交換でき、貴重な経験だった」など好評の声が上がった。

PROFILE
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村上 崇
Takashi Murakami
カーツメディアワークス(タナベコンサルティンググループ) 代表取締役

報道・情報番組のディレクターとして取材経験を積み、その後、PRコンサルティングファームにて上場企業、グローバル企業、官庁など幅広い業種の広報戦略を手掛けた後に独立。戦略PRおよびデジタルマーケティングを中心としたカーツメディアワークスを設立し代表取締役に就任。著書に『あたらしいWebマーケティングハンドブック』『クラウド情報整理術』など5冊。