100年の歴史を経て相鉄線が都心と直通することを記念して制作されたムービー『100YEARS TRAIN』(2019年)。大正(上の写真左)・昭和(下の写真左)・平成(下の写真右)・令和(上の写真右)の時代を表現するため、車両や衣装、美術品などで当時の様子をリアルに再現し、それぞれの時代を舞台に100年の時を超えて紡がれる男女の恋のストーリーを描いている
目指すは「選ばれる沿線の創造」
「相模鉄道(相鉄)」は、横浜駅から海老名駅まで神奈川県中央部を東西に結ぶ相鉄本線を中心に、相鉄いずみ野線・相鉄新横浜線と併せて全29駅をつなぐ鉄道である。戦後、当時わずか24.3kmの地方私鉄だった相鉄は、長年にわたり荒廃したまま放置されていた横浜駅西口エリアの開発を決断。約2万4000㎡の広大な土地を取得して、「まち」のにぎわいを取り戻す一大繁華街の土台を整備し、復興に尽くしてきた。
沿線周辺はベッドタウンであることから、鉄道・バスの運輸業を起点に、スーパーマーケット・コンビニエンスストアなどの流通業、住宅・商業ビル・駐車場などの不動産業、ホテル業など生活に密着した事業を展開。現在は連結営業収益2700億円超、グループ会社35社(相鉄ホールディングス含む)で構成される企業グループに成長している。
「選ばれる沿線の創造」を推進するとともに、グループの事業基盤を盤石にすべく力を入れてきたのが、2013年に始動した「相鉄デザインブランドアッププロジェクト」だ。
このプロジェクトは、2017年に創業100周年、2019年に東京都心への相互直通運転を開始するという大きな節目を迎えるに当たり、相鉄グループのブランドイメージと認知度向上を図るために発足した。スローガンは「Thinking of the next century.―これまでの100年を礎に、これからの100年を創る―」。「安全×安心×エレガント」というデザインコンセプトの下、駅・車両・制服など、顧客とのタッチポイントが近いものを中心にデザインのリニューアルが進められた。
グループブランドメッセージは、「ときめきとやすらぎをつなぐ」(2005年策定)。相鉄ホールディングス経営戦略室第三統括担当課長の塩﨑匠氏は、これこそが相鉄グループとして磨いていきたい強みだと言う。
「グループブランドメッセージは、『都会の上質なときめきと沿線に住まうやすらぎが調和する、喜びに満ちた快適な暮らしを届ける』という私たちの約束を表現したものです。これまでの相鉄線は、通勤・通学に利用する生活路線として、沿線地域の方々に何世代にもわたって利用いただいていましたが、観光地からは離れた静かなベッドタウンですので、沿線外での知名度は都内で4割程度と関東の大手私鉄の中でも低いものでした。
そこで、相鉄線とJR線の相互直通運転がスタートするタイミングで、沿線外の方々とも広くつながれるように、誰もやったことのない思い切った仕掛けを散りばめた記念ムービーを制作しようという計画が持ち上がりました」(塩﨑氏)