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コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2024.09.02

戦略ブランディングPRによる「報道価値」の創造 佐藤 敦

 

戦略ブランディングPRの支援事例

 

カーツメディアワークスでは、BtoCからBtoBまで幅広い業種・業態の戦略ブランディングPRコンサルティングを行っている。本稿では、当社の取り組み事例として、飲食ブランドA社の戦略ブランディングPRについて解説する。

 

支援当時、A社では次の課題を抱えていた。

 

❶ 大盛り系飲食ブランド業態としての確固たるブランディング

 

❷ 閑散期である2月の来店数と売上高の増加

 

❸ 影響力の高いメディア(テレビや有名ウェブメディアなど)での露出

 

特に、❶大盛り系飲食ブランド業態としての確固たるブランディングについては、A社がこの業態の元祖であるにもかかわらず、類似業種の台頭により一般消費者から混同され、差別化が困難になり、さらには後発業態の模倣という、誤った認識を持たれてしまっていた。

 

実行施策として、ブランドの独自性とターゲットを明確にした上で、効果的なメディア戦略を展開することにより、報道が報道を呼ぶ「報道連鎖」を生み、短期間で高い認知度向上を実現した。

 

情報番組やバラエティ番組、BUZZ(バズ)系のウェブニュースメディア、ビジネスメディアなど、多方面での露出獲得を実現し、SNSでも話題になった。クライアントからも、「❶〜❸の課題解消に一定の効果を上げることができた」との評価をいただいた。

 

 

報道連鎖の獲得に成功した3つの施策

 

A社の戦略ブランディングPR支援について、具体的に成果を上げた施策は次の3つである。

 

❶ ブランドイメージの具現化
企業のブランドイメージを再認識させるため、ブランドコンセプトを分かりやすくビジュアル化した期間限定のメニューをプロデュースし、既存ファンを中心に話題化させ、新規顧客層への拡散を目指した。

 

ビジュアルのみならず、値段設定やコンセプト含め、ブランドの独自性を強調したストーリーテリング(物語を使って人に物事を伝える手法)を行い、メディア・消費者に発信した。

 

❷ メディア向け試食会を起点とした報道連鎖を生む仕掛けづくり
新メニュー発表の際に、メディア向け試食会を開催し、リアルに商品の魅力を伝えた。これにより、プレスリリースのみでは伝わらない記事の獲得に成功。また、それらの記事を起点にそのほかのメディアの関心を引き、さらなる記事化やテレビ露出を獲得した。1つの報道が次の報道を呼ぶ報道連鎖につながっている。

 

❸ トレンドキーワードと製品の組み合わせによる報道価値の創出
❷の取り組みにも寄与するよう、季節商戦に合わせたネタづくりを実施した。当時、一部のメディアやSNSで話題になっていたキーワードに着目。これらのキーワードをコンセプトにPR企画を立案、実行した。

 

これらの施策を通じて、多数のメディア露出とSNS拡散を実現し、報道連鎖の獲得に成功した。

 

 

「今報じるべき理由」をメディアに伝える

 

BtoB、BtoC、国内外を問わず、ニュースとしてメディアに取り上げられるポイントは、「いかに報道価値(ニュースバリュー)を付加し、『今報じるべき理由』をメディアに伝えられるか」である。報道をきっかけに、情報の受け手側の認知を高めて、ポジティブな意識変容、さらには行動変容まで促していくことが、戦略ブランディングPRにおける大きな成果となる。

 

A社の事例では、課題となっていた2月の同業態における史上最高売上を記録し、来店数と売上高増加に寄与することができた。「現地に行って食べてみよう」という消費者の行動変容を起こし、既存ファンへのアピールと新規顧客への興味喚起に成功した事例である。

 

前述の施策を提案した際、クライアントからは「コスト面の問題や現場でのオペレーションに対する課題がある」という理由から、施策に対して経営陣をはじめ、懐疑的な声が多く上がっていた。そもそも、本施策を行う意味がないのではないかという声も上がっていた。

 

しかし、戦略ブランディングPRの重要性やメディアが興味を持つメリット、その具体的な実施策を繰り返し提案し、実行することとなった。今では、当社の支援期間が終了した後も、季節の風物詩的なメニューとして販売し、毎年メディアで話題化されるまでの企画となっている。

 

この施策以外にも、一貫したコンセプトのもと、定期的なPR企画を実施。1年間の総計で、テレビ5番組OA、ウェブ媒体1034媒体、雑誌・新聞8媒体という大規模なメディア露出を達成した。広告換算値は約4億円に上り、戦略ブランディングPRの効果が数値的にも裏付けられた。

 

戦略ブランディングPRコンサルティングとして、クライアントの意向をくみ取り、戦略や戦術を実行していくことが前提である。また、外部の視点だからこそ見える会社の課題や、実施すべきと感じる施策は多くある。「自社にPRできるようなネタがない」と感じている企業であっても、ヒアリングを進めることでPRのネタは見つけることができる。

 

既存情報の切り口を少し変えて発信することで、これまで注目されていなかった取り組みが一気に報道価値を生み出す可能性は高いのだ。

 

繰り返すが、報道価値の創出は、「今報じるべき理由を、あらゆる切り口でつくっていくこと」である。そのためには、とにかくアイデアと実行力、そして手数を打つことが重要だ。

 

カーツメディアワークスでは、単なるプレスリリースのみのPR活動ではなく、これまでの支援実績からなるノウハウ・スキルを活用した積極的な企画提案で、ヒト・モノ・コトを最大限に生かした多彩なPR活動を実施している。能動的な戦略ブランディングPRを検討される際は、ぜひご相談いただきたい。

 

 

PROFILE
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佐藤 敦
Atsushi Sato
カーツメディアワークス(タナベコンサルティンググループ)
PR本部 戦略PR局 執行役員 PRSJ認定PRプランナー

大学卒業後、広告代理店に勤務。国内で唯一の命名権(ネーミングライツ)ビジネス専業会社として、自治体や民間施設の媒体化から販売などに携わる。その後、官公庁の広告媒体販売などを経てPR会社に入社。2016年にカーツメディアワークス入社後、IT、マーケティング、飲食、電子製品などスタートアップから上場企業まで、幅広い業種のPR活動を支援。現在は、PR事業部の統括を担当。