日本の冷凍食品事業のパイオニアであるニチレイグループの加工食品部門として設立したニチレイフーズ。フロンティアカンパニーの誇りとこだわりを継承し、独自技術と丁寧なものづくりで、中食・外食など食の外部化や個食化、健康・環境意識の高まりなどの社会課題の解決に貢献し、食と健康を支える企業として新たな顧客価値を創造し続けている。
「簡単で便利、おいしさと栄養バランスを両立し、長期保存が可能で必要な分だけ使えて食品ロスも削減する冷凍食品は、次の100年を担う未来の食品になる」という考えのもと、2011年、自社の使命と存在意義を明確にし、社員が同じ方向へ歩みを進めるために、風土・経営・収益構造の改革に着手し、新たにミッション・ビジョン(MV)を制定した。(【図表】)
【図表】ニチレイフーズの企業コンセプト・ミッション・ビジョン
出所 : ニチレイフーズホームページよりタナベコンサルティング戦略総合研究所作成
環境改善や社員のモチベーションを高めて、明るく元気な風通しの良い会社にすること。ものづくりの思いや冷凍食品の良さを、広く世の中や生活者に伝えること。さまざまな思いを言語化したMVと、実現への行動指針「ハミダス(とらわれず、明るく)」を掲げて、同社は「ハミダス活動」を始動した。
「思いやり・チャレンジ・楽しく」の3つをキーワードに、小学生対象の出前授業「出張工場見学」や、フードロス削減に貢献するブロークン商品(品質に問題はないが外箱破損などで廃棄される商品)のフードバンクへの寄付、社員試食会の開催、体験型の食育プラグラム、被災地支援、新入社員交流、社員の家族参加型のイベント開催まで、幅広い取り組みを実施している。
「社員のハミダス気持ちをカタチにする」ハミダス活動は、プロセスがそのままMVの浸透・定着につながっている。ポイントは、各部署から選出した「ハミダスフレンズ」を中心に社員が主体的に活動内容を考えることと、強制や押し付けは一切ないボトムアップ型の仕組みであることだ。
活動全体を統括するハミダス推進グループは、旗振役とサポート役に徹し、全国の工場・事業所で自ら手を挙げたハミダスフレンズが推進力となって独自に活動。上司・部下というタテ組織の関係性や、担当業務の枠組みを超えて、互いに否定しないことを前提に自由かつ気軽に参加でき、おそろいの「ハミダスTシャツ」を着て一体感も醸成している。また、社長が「ハミダスフレンズ応援団長」となって任命書を渡すなど、全社を挙げた支援体制も確立している。
ハミダス活動の研修会「ハミフレワークショップ」は年2回実施。ハミダスフレンズも年々増加し、ニチレイグループの社員にも広がっている。
全てのハミダス活動は社内イントラに掲載して共有し、毎年「ハミダス大賞」の社員投票を開催。3つのキーワードにふさわしい活動を表彰している。さらに、ハミダスマークは躍動感のあるシンボルマークとして全社員の名刺に記載し、顧客や取引先にも発信することで、MVに対する社員の理解・行動意識を高めている。
2018年、ハミダス活動は消費者庁「平成30年度消費者志向経営優良事例表彰」で「消費者庁官表彰」を受賞。その後も、環境活動や食品ロス削減、子ども食堂への寄付など、その名の通り「はみ出す」活動が拡大することで、MVの実現や持続可能性を高める源泉となっている。