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研究リポート
『成長M&A』実践研究会
「戦略」と「実行のスピード」をポイントに、アフターコロナ時代に求められる戦略の方向性と、それを実現するためのM&A・アライアンスの手法を学びます
研究リポート 2024.07.18

クロスティホールディングスのM&Aの軌跡 クロスティホールディングス

【第3回の趣旨】
『成長M&A』実践研究会では、M&Aのモデルを確立している企業から独自のM&Aノウハウと業種の特徴を取り入れた事例を学ぶ場を提供。M&Aを活用した成長戦略を実現し、自社の企業価値を向上させるための道しるべを提示する。
第3回のテーマは「財務戦略」。ゲスト2社(株式会社エミヤホールディングス様、株式会社クロスティホールディングス様)による「M&A戦略」についての講演を配信。M&Aを積極的に推進する企業の戦略構築について深く考察した。

開催日時:2024年6月20日~21日(北海道開催)

 

https://www.tanabeconsulting.co.jp/lab/manda/

株式会社クロスティホールディングス
代表取締役 林 秀樹 氏

 

はじめに

 

株式会社クロスティホールディングスは、1979年に暖房及び電気工事を目的とした東弘産業株式会社(現 株式会社エコテック)として北海道で創業。その後、北海道電力登録業者指定、札幌電気工事業協同組合並びに北海道電気工事業工業組合に加入し、業容の幅を広げていった。

 

同時に、給排水設備工事を行う株式会社水研工業、内外装工事を行う株式会社アスペックコーポレーションの計2社をM&Aでグループに迎え、現在はグループ全9社で“電気・給排水・空調工事事業”、“住宅流通・設備調達事業”、“住宅・特建建築事業”、“アフターメンテナンス・改修工事事業”を展開し、各事業の強みを掛け合わせる総合建設企業へと成長している。

 

グループ年商約70億円・グループ従業員数約260名となり、2023~2027年の中期経営計画とグループの理念・ビジョンの実現のためグループ一丸となり邁進している。

 

クロスティホールディングスはグループ全9社で“電気・給排水・空調工事事業”、“住宅流通・設備調達事業”、“住宅・特建建築事業”、“アフターメンテナンス・改修工事事業”を展開


 

まなびのポイント1:M&Aで目指したシナジー戦略について

 

暖房および電気工事を祖業とする同社だが、さらなる発展と顧客への価値提供の向上を図る際に、まずは元請企業から求められているものが何なのかを把握するため、元請企業へ直接インタビューを行うことから始めた。

 

インタビューの中で①採用力が高く、豊富な人材を抱える企業は安心である、②社員教育体制が整っている会社は施工が円滑に進む、③高品質で安価であること、工事に使用しない特別な技術は不要、という3つのニーズが見えてきた。

 

元請企業のニーズに対応するため①社員・職人教育体制の確立、②人材確保と施工力の向上、③高品質かつ適正価格の実現 に取り組むことが同社の価値を高めることにつながると考え、実現の手段としてM&Aを検討・実行した。顧客ニーズを解決することが目的であるため、M&Aだけでなく、職人育成を目的とした株式会社カイセイを設立したり、ソフトテニスの実業団を発足させ、知名度向上による人材の確保などにも努めている。

 

スーパー下請け戦略とは

 

 

まなびのポイント2:M&Aのメリットと課題・グループビジョンの浸透について

 

同社は現在までに2社のM&Aを実行しており、事業範囲拡大・人材確保による施工力の向上、新たな販売先の取得(BtoCの部門をM&Aにより取得した)等のメリットを享受してきた。

 

一方で、M&Aの実行前後には以下4点をはじめとして多くの課題が発生する可能性があることを念頭に置くべきであると説明いただいた。

 

①社内規則や企業風土に格差がある場合があり、M&A実行後に即座に是正を行わなければ、後々に格差を埋めることは非常に難しい。

②譲渡企業に所属する社員教育について、ハードルが高い場合がある。(場合によっては挨拶や身だしなみ等の基本動作から指導が必要になることもある)

③譲渡企業オーナーと譲渡後のビジョンを共有することが重要である。オーナーによって譲渡後も継続勤務したいのか、即時引退したいのか等の希望が大きく異なっているため、明確なビジョンを共有しておく必要がある。

④買収調査について、短期間での対応は避けるべきである。法務・労務・株主等の観点で大きなリスクが隠れている場合があるため。

 

また、現在全9社に広がった同社グループでは、業態・規模が大きくなったからこそ、グループビジョン・長期経営目標・中期経営計画の浸透がより重要になってきている。

 

以下4つの施策を打つことで、達成を目指し日々尽力されている。

 

①グループ全体の共通目標を設定し、グループ全社員へ周知させる。

②共通目標を達成した際の明確なメリットを全社員へ伝える。

③各社にグループビジョンを推進するための責任者を配置する。

④PDCAを回すことを止めず、グループビジョンが風化しないよう尽力する。

 

グループビジョンの浸透方法
講演の様子