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研究リポート
ビジネスモデルイノベーション研究会
秀逸なビジネスモデルを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供しております。ノーボーダー時代に持続的成長を実現するためのヒントを学びます。
研究リポート 2024.06.12

ダイワハイテックスが描くオンリーワン成長戦略 ダイワハイテックス

【第1回の趣旨】
ビジネスモデルイノベーション研究会では、「両利きの経営」における「知の探索と深化の融合・結合の実践」をテーマに、さまざまな分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問している。
第11期のテーマは、「Business Liberal Arts -事業・戦略・経営にイノベーションをもたらす本質的素養の探求-」。第1回では、ダイワハイテックススマイルズの講話、視察を通じて、業界でパイオニアとして成長している企業の取り組み、成長・高収益ポートフォリオ経営の実践のポイントを学んだ。

開催日時:2024年2月20日(東京開催)

 

 

 

株式会社ダイワハイテックス
代表取締役会長 大石 孝一 氏

 

 

はじめに

 

ダイワハイテックスは、書籍の包装機械である「コミックシュリンカー」で業界シェア90%を誇り、「本は包装したら売れない」という業界の常識を覆し、コミック本のフィルム包装市場を開拓した先駆者である。製品の性能・品質はもちろんのこと、故障時における代替ユニットの即日発送、無償の開店準備支援など、圧倒的なアフターサービスで他社の参入を許さないオンリーワンのビジネスモデルを構築している。

 

今回は、ダイワハイテックス代表取締役会長の大石孝一氏より、創業から一代で業界トップメーカーまで会社を成長させたマインドの核心と、2代目である代表取締役の大石智也氏が描くさらなるオンリーワン成長戦略について学んだ。


書籍の包装機械「コミックシュリンカー」

 


 

まなびのポイント 1:創業の原点~事業に対する3つのミッションと本業界との出合い~

 

同社は1978年、大石会長が包装機をつくりたいという思いを持って6畳一間のアパートの一角から創業した。創業当初に、①メーカーになる、②下請けはしない、③自分たちで売る、という3つのミッションを定め、現在まで守り続けている。メーカーになるという強い志を貫き、ビジネスの主導権を持つために下請けにはならないことに拘った。自分の事業を他人任せにせず、自分たちが責任感を持って売るという意思を社員にも共有し、自分たちの手で事業を拡大させてきた。

 

本業界との出合いは、包装機メーカーが集まる展示会に出展した際に、大手書店幹部と出会ったことがきっかけである。その後、大石会長は書店で顧客を観察し、「お金を出して本を買う人はきれいな本を求めている」ということに気付き、本のビニール包装事業を始める準備を整えた。


ダイワハイテックスのこれまでの社屋

 

 

 

まなびのポイント 2:「ランチェスター戦略(弱者の戦略)」の実践

 

大石会長は、「ランチェスター戦略(弱者の戦略)」を学び、「業界で圧倒的な1位になるために自分たちの戦う市場はどこか」を突き詰めて考え、包装業界の中でも本の包装という1点で事業を展開していくことを決めた。

 

当時、包装業界では包装の間口を広げてさまざまな商材を包装する企業は多くあったが、それぞれで包装の目的・難易度は異なるため、同社は商材を本に絞った。自社のコアコンピタンスである「小さな機械をつくること」は、バックヤードの小さい本屋にもフィットしたため他企業との差別化を図ることができた。また、バリューチェーン上でも他社との差別化を図っている。本屋が一番忙しい時期に包装応援の社員を配置し、本屋の立ち上げ支援も実施することで、リピートの仕組みづくりも行った。


新店舗立ち上げ応援の様子

 

 

 

まなびのポイント 3:新市場に向けた挑戦

 

メディアのデジタル化によって、書籍市場は縮小し続けている。そのような市場環境において、同社は新たにネット通販市場をターゲットに取り組みを進めている。新規に通販事業を始めた会社をメインターゲットにすることで、後発ながらもネット通販市場において新規市場の開拓に成功している。また、梱包する前後の作業フローも請け負うことで顧客の負担を減らすなどの設備を整えている。業界の課題として挙げられる手作業によるミスも、機械化を進めることで対応している。

 

同社はシュリンカーメーカーであるが、機械をつくり、顧客に届けるだけでなく、ライバル企業が簡単に参入できない包装ラインの整備や、手厚いアフターフォローの体制を整えることで、顧客に選ばれ続ける企業として今後も成長し続ける。


テクニカルセンターの設備