人口減少に伴う日本市場の縮小が明白である以上、日本企業が持続的に成長するためには、海外にビジネスを広げる必要がある。どの企業においても、成長基調である海外事業展開のチャンスは与えられている。海外事業展開は、日本企業におけるさらなる成長を加速させるためのトリガーなのだ。
海外事業の展開状況について、約80%が「展開している・今後取り組みたい」と回答した。海外事業を展開しない理由については、「国内経営のことで精一杯」という回答が26.1%と最も多い一方、「円安の影響」との回答は2.9%と少なかった。
2023年度の海外事業における業績の見通しについて、「増収増益」と回答した企業は35.2%と最多であった。また、今後3年間の海外事業における業績の見通しについても、「増収増益」と回答した企業は49.4%と約半数を占めており、海外事業の業績見通しは良好なトレンドとなっている。このトレンドは、少子高齢化、内需の縮小などによって低迷する日本市場とは対照的であり、日本企業にとって海外事業が成長の柱になりつつあることが分かる。
また、2023年度の業績見通しを年商規模別に分けると、企業の売上規模と海外事業の業績見通しは、ある程度の比例関係にあることが分かった。企業規模が小さくなるにつれて、「増収増益」の割合は減少傾向、「減収減益」の割合は増加傾向にある。
海外進出・拡大を検討、もしくは進めている国・地域について、中国(10.0%)、米国(9.6%)、インド(8.1%)と市場規模を意識した回答が目立った。一方、地域で見るとASEAN(東南アジア諸国連合)が約半数(49.7%)を占める結果となった。選ばれた理由として、「市場成長性、将来性」が41.8%と多く、ASEANを有望なマーケットと捉えていることが伺える。
日本企業が海外事業を展開・拡大していく上では、現地パートナーの開拓が鍵となる。海外事業戦略推進における具体策・取り組みについては、「現地パートナー(販売代理店含む)との業務提携(資本関係なし)」と回答した企業が最も多かった(22.4%)が、海外事業戦略を検討、もしくは進める上での課題として「グローバル人材(事業推進者)の確保」に悩む企業が多いことが分かった(17.8%)。また、実施に向けた推進体制については、「専門部署・チームがあり、専門人材が確保できている」と回答した企業は23.5%と全体の4分の1にとどまる結果となった。
円安が海外事業に与える影響について、40.7%が「マイナスな影響」と回答している。だが、円安のマイナスな影響について、「予定していた海外進出・拡大が難しくなった」が6.6%、「縮小・撤退を視野に入れざるを得ない」が4.1%と、円安というマイナス要因が企業の海外事業展開を妨げる直接的な要因にはなっていないことが分かる。
海外事業に取り組む企業の約半数が、今後の業績見通しを「増収増益」と捉え、新たなマーケットの開拓を重点テーマに据えている。一方、海外事業戦略を検討、もしくは進める上での課題は「グローバル人材の確保」が17.8%でトップなど、業種や企業規模にかかわらず、事業推進の鍵となるグローバル人材・専門人材の確保・育成に大きな課題を抱えている。グローバル人材不足が、日本企業の成長の柱になり得る海外事業の加速にブレーキを掛けていることは明らかだ。
また、人材に続く課題として、「マーケットの理解」「各国の規制や法制度、商習慣への対応」「現地パートナー・アライアンス先の開拓」が、全回答の45%を占める結果となった。優秀なバイリンガル・マルチリンガル人材や海外駐在経験者の採用に成功したとしても、その社員たちで海外事業を推進するには限界がある。
適切な外部リソースへの投資が、限られた内部リソースを最適化させ、自社の海外事業を最大化させる。その上で、海外事業で成功している企業の共通点に目を向けると、経営者・海外事業責任者は口をそろえて「現地へ行き、現地を知ること」と語る。つまり、成功の答えは現地にあるということだ。現場(日本)・現物・現実+現地(海外)の「四現主義」が海外事業を成功へ導く鍵となる。
【調査概要】
アンケート名: | 海外事業に関する企業アンケート |
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調査目的: | 企業における「海外事業の進出・撤退の実態」を把握し、今後の企業の成長発展に向けた取り組みへの参考情報として提供する |
調査方法: | インターネットによる回答 |
調査期間: | 2024年1月15日~2024年2月2日 |
調査エリア: | 全国 ※海外現地拠点を含む |
有効回答数: | 203件 |
「2024年度 海外事業に関する企業アンケート調査REPORT」の全体版(無料)には、業種別の回答などのより詳細な調査結果と、タナベコンサルティングの提言を掲載しています。