建設業においては、「2024年問題」における働き方改革をはじめ、さまざまな課題を抱えており、業界全体で改革に取り組む必要がある。建設業の2024年問題とは、建設業においても時間外労働の上限規制が適用されることを受け、労働環境の変革が求められている状況のことである。具体的には、次の5つの課題が挙げられる。
❶ 生産性の向上
建設プロジェクトでは、日々多くの作業が必要であるが、従来の方法では効率的な作業が難しい場合がある。生産性の向上を図るために、効率化や自動化の取り組みが必要である。
❷ 人材不足
建設業は人手不足が深刻であり、技術者や熟練労働者の確保が難しい状況である。人材確保のために、新たな人材育成や労働力の省力化が求められる。
❸ 品質と安全性の向上
建設プロジェクトは、品質と安全性の維持・向上が重要である。しかし、現場の監視や管理が追い付かないケースがあり、品質や安全性の問題が発生することがある。品質管理や安全管理のためのデジタル技術の導入が求められる。
❹ コスト削減
建設業は競争が激しいため、シビアなコスト削減が求められる。省力化や材料の最適化、予算管理の改善などを行うことで、コストを削減することができる。
❺ 情報の共有とコミュニケーションの改善
建設プロジェクトでは、多くの関係者との情報共有やコミュニケーションが必要であるが、情報の不足や遅延、ミスコミュニケーションが発生することがある。情報共有とコミュニケーションの改善が求められる。
これらの課題を解決するために、建設業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められている。
そもそも「働き方改革」の一環として始まった時間外労働の上限規制は、2019年4月を皮切りに多くの業界で適用されている。慢性的な人材不足や高齢化、長時間労働が常態化していた建設業においては、いきなり労働環境を変えることが難しいと判断されたため、猶予期間が設けられていた。その猶予が期限を迎え、いよいよ2024年4月1日より適用がスタートしたのである。2024年問題に対応するため、建設業では早急な取り組みが必要である。
働き方改革関連法が適用されることで、時間外労働の上限は「月45時間・年360時間」が原則となり、これに違反すると罰則が課せられる。
建設業におけるDX推進と成功ポイント
建設業におけるDXの推進は、デジタル技術を活用して業務プロセスやサービスを変革することを指す。次に、建設業におけるDX推進の具体的な技術をいくつか紹介する。
❶BIM(Building Information Modeling)の活用
❷ IoT(Internet of Things)の導入
❸ モバイルアプリケーションの活用
❹ ビッグデータ分析の活用
❺ VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)の活用
❻ ドローンの活用
デジタルプラットフォームを構築しDXを推進することにより、効率化やコスト削減、品質向上、作業環境の改善など、建設現場の生産性を向上させることが期待される。また、顧客とのコミュニケーション強化や新たなビジネスモデルの創出など、新たな価値の創造も期待できる。
建設業におけるDXの成功のためには、次のポイントを考慮する必要がある。
❶ ビジョンとリーダーシップの確立
DXの成功には、経営層のビジョンとリーダーシップが不可欠である。経営トップがプロジェクトマネジャーとしてプロジェクト体制を組むとともに、同業他社の導入で培われたテンプレートを活用し、システムを最大限に活用する。経営層がDXの重要性を理解し、組織全体をけん引することが大切である。
❷ デジタルプラットフォームの構築
建設業においても、デジタルプラットフォームの構築が重要である。その際、建設プロセスやデータの統合、情報共有などを可能にするプラットフォームの構築が必須となる。データを収集し分析することにより、建設プロセスの改善や効率化、問題の早期発見などが可能となる。
❸ コラボレーションとコミュニケーションの改善
デジタルプラットフォームと得られたデータの活用により、関係者間でのコラボレーションやコミュニケーションを改善し、建設プロジェクトの管理や意思決定の効率化を行う必要がある。
❹ 人材の育成と組織文化の変革
DXの実現には、従業員のデジタルスキルの向上や新しい働き方の導入が必要である。組織文化の変革も重要であり、変化に対する柔軟性やイノベーションへの意識を高める必要がある。
以上のポイントを考慮しながら、建設業におけるDX推進の成功に向けて取り組むことが重要である。
建設業DX Cloud経営プラットフォームによる解決
前述の課題を解決するソリューションとして、タナベコンサルティンググループの「建設業DX Cloud 経営プラットフォーム」を紹介する。
本サービスは、建設業のDX実現に向けたファーストステップとして、バックオフィス業務の標準化、ERP システムの導入、導入後の DX 推進体制の構築までをトータルで支援するコンサルティングサービスである。
PC用ビジネスパッケージソフト「奉行シリーズ」開発・販売のオービックビジネスコンサルタント、建設業向け原価管理システム「どっと原価 NEO」シリーズ開発・販売の建設ドットウェブと連携し、最適なシステムの提案はもちろん、業務状況の可視化と業務改善をワンストップで支援できることが特徴となる。
建設業において避けられないDXに向け、現状の課題を正しく可視化・整理した上で、在るべき姿を策定することにより、業務の標準化とシステム化の両軸で働き方改革と収益改革を実現する。(【図表】)
【図表】システム基盤構築支援の流れ
※ 「スタンダードプラン」を前提として記載 出所 : グローウィン・パートナーズおよびタナベコンサルティングにて作成
大学卒業後、約30年メーカーおよびシステム開発ベンダーにて、システムエンジニアとしてさまざまな業種・業態の顧客のシステム構築に従事。2021年12月にグローウィン・パートナーズにITコンサルタントとして入社。現在まで、大手企業のペーパーレス化、インボイス対応、決算早期化、中小企業のシステム基盤構築支援などに、プロジェクトマネージャーおよびコンサルタントとして参画。