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研究リポート
ビジネスモデルイノベーション研究会
秀逸なビジネスモデルを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供しております。ノーボーダー時代に持続的成長を実現するためのヒントを学びます。
研究リポート 2024.02.28

変わらなければ生き残れない~MICのビジネスモデルイノベーションとチャレンジ精神~ MIC

【第1回の趣旨】
ビジネスモデルイノベーション研究会では、両利きの経営における知の探索をテーマに様々な分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問する。
そのビジネスモデルを構築している経営者・経営幹部の方から直接講義いただくとともに、現地でビジネスの現場に触れることによって、イノベーションを「体感」する機会を提供している。
今回は、既存の事業の枠を突破することで衰退業界と言われる印刷業界において持続的成長を実現しているMIC様と、CMSで日本No.1のシェアを誇り、米NASDAQに上場しているハートコア様の2社から講義をいただいた。そして、両社が実現してきた成功と成長の軌跡からビジネスモデルイノベーションとチャレンジ精神の神髄を学んだ。
開催日:2023年2月27日~28日(東京開催)

 

MIC株式会社 代表取締役会長 水上 光啓氏

 

MIC株式会社
代表取締役会長 水上 光啓氏
早稲田大学政治経済学部を卒業後、大阪の印刷会社で印刷オペレーターとしての経験を積み、1976年水上印刷株式会社(現MIC株式会社)入社。1988年代表取締役社長就任、2014年より現職。2008年5月~2012年5月まで全日本印刷工業組合連合会会長、併せて東京都印刷工業組合理事長を務める。

 

はじめに

 

MIC株式会社(旧:水上印刷(株))は、販促物などの印刷からIT/デジタル施策まで一括サポートを行っている総合サービス企業。2022年に「デジタル×フィジカルで、未来をもっと素晴らしく」という新しいビジョンを掲げ、印刷業にとどまらず、より一層顧客のニーズに合わせた幅広いサービス展開を目指して、「水上印刷」から「MIC(未来イノベーションカンパニー)」へと社名を変更。既存の業界慣習にとらわれず、常に新たなチャレンジで成長を続ける業界のリーディングカンパニーとして昨今、注目を集めている。

 

今回は「変わらなければ生き残れない」をテーマに、印刷業からフルサービス業へ業態変革を遂げる過程で、大切にされた「こだわり」や、変革したビジネスの事例などについてご紹介いただいた。

 

MIC本社外観

 


 

まなびのポイント 1:ものづくりとサービスづくりの融合 ~フルサービス・カンパニーへの進化~

 

同社は「360°フルサービスカンパニー」を標榜しながら、既存の「印刷分野」から「非印刷分野」への業態変革を推進し、独自のビジネスモデル「SPS(Sサービス-Pプロダクト-Sサービス)モデル」を確立。プロダクト(主に印刷加工)を中心に置き、フロントエンドとバックエンドのすべての業務・サービスを提供していくことで顧客体験価値を最大化している。

 

現在では、売上構成の90%近くが「非印刷分野」であり、コンサルティング、クリエイティブデザイン、印刷製造、ICT、ロジスティクス、カスタマーサービスなど、企業のマーケティングにおける全ての工程に一貫して対応。サービスの繋がりと専門性の高さにおいて、他社にはない唯一無二の価値提供を実現している。

 

分断のないビジネスPDCAの実装

 

 

まなびのポイント 2:「めんどくさい世紀」だからこそ実現したMICの業態変革

 

印刷業界の経営環境が厳しさを増す中、同社は「どうしたら選ばれる企業になるか」を徹底的に追求。幾度にわたる海外視察を行う中で、英国への海外視察時に見たフルサービスモデルに着想を得て業界変革が加速したという。

 

「1ドルの印刷の周りには6ドル~8ドルの付帯サービスがある」という言葉に表される通り、印刷業が縮小してもその周辺には膨大なニーズ(面倒)が存在。印刷の前後に存在するお客様の面倒をすべて請け負うことで選ばれ続ける会社になるという考えのもとに、現在の「フルサービス(SPS)モデル」が誕生したのである。

 

この顧客中心の業態変革は他社との圧倒的な差別化を実現し、98%のリピート率と10期連続成長を支えている。また、現場での徹底的なKPI管理や、1年に数回組織が変わるという柔軟な組織体制も、同社の競争力の源泉となっている。

 

印刷業界の経営環境が厳しさを増す中、同社は「どうしたら選ばれる企業になるか」を徹底的に追求。幾度にわたる海外視察を行う中で、英国への海外視察時に見たフルサービスモデルに着想を得て業界変革が加速したという。

 

 

まなびのポイント 3:「日本一勉強する会社」
終業時間の10%、一人当たり200時間/年を勉強の時間へ

 

同社は「日本一勉強する会社」を目指し、就業時間の10%(年200時間)を未来のために使う活動を推進。企業成長に最も大事なのは「社員の成長(無形資産)」と定義し、社員一人ひとりが主体的かつ充実した学びを得られるような環境を整備している。

 

MIC(株)の強みの一つである専門性の高さも、この充実した教育による影響が大きく、コア技術である印刷をはじめ、デジタル技術、IT、ロジスティクスやモノづくりの改善などさまざまなテーマを社員同士で教え・学び合うことで専門性の深化を促進しているという。

 

また、2019年にはGreat Place To Workが選出する「働きがいのある会社」ランキングでベストカンパニーに選ばれるなど、その取り組みは高い評価を得ている。

 

「日本一勉強する会社」 終業時間の10%、一人当たり200時間/年を勉強の時間へ
※画像はMICホームページより引用