【第1回の趣旨】
ライフスタイルビジネス研究会では「-ライフスタイルカンパニー100社の創造-10年後のビジネスモデルをデザインしよう」を今期テーマに掲げている。第1回では「ライフスタイルビジネスの未来像」を主眼に置き、3社のゲストにご講演いただいた。
人口動態・社会構造の変化をはじめ、産業構造の改革や社会課題・顧客課題の変容というライフスタイルビジネスに大きな影響を及ぼすポイントに対し、3社のゲスト研究を通じて、取り組むべき3点のテーマを掘り下げた。
開催日時:2023年9月28日(北海道開催)
代表取締役 阿部 晋也 氏
はじめに
丸吉日新堂は、札幌市豊平区に本社を構える印刷会社である。代表取締役の阿部晋也氏は、「三方良し(社員・顧客・仕入れ先)」の善循環の考え方を大切にしている。
また、阿部氏は北海道ノマドレンタカーの代表取締役でもあり、ハイクラスキャンピングカーのレンタル事業を立ち上げている。衰退産業と言われる印刷業、成長産業である観光業(キャンピングカーレンタル事業)の両事業において、時代の潮流を読み、ビジネスモデルを革新させるニッチトップのライフスタイルカンパニーだ。今回の研究会では、ビジネスモデルの進化の背景や軌跡について、阿部氏にご講話いただいた。
まなびのポイント 1:経営環境に応じた事業ポートフォリオのリデザイン
丸吉日新堂は伝票印刷をメインとしていたが、産業衰退という時代の変化に対応し、ビジネスモデルを転換。ペットボトル再生材名刺やバナナペーパー名刺など、地球環境に配慮したエコ名刺の通販事業を中心に据えている。
また、「旅・健康・心の豊かさ」に着目し、観光事業への積極投資も行う。キャンピンカーレンタル事業を立ち上げ、インバウンド顧客を中心に北海道の魅力を発信している。
経営環境に応じた事業投資による事業ポートフォリオのリデザインについて、阿部氏は「変化に対応できるものが強い、努力よりも正しい選択が重要である」と語る。
地球環境に配慮したバナナペーパーで作成した名刺
まなびのポイント 2:社会課題解決や顧客体験価値を軸にしたビジネスモデル
丸吉日新堂の事業は、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)・CX(カスタマー・エクスペリエンス)の観点でも秀逸である。エコ名刺、特にバナナペーパー名刺はSXを実現している事業だ。
事業開始の背景として、阿部氏はある環境コンサルタントとの出会いを通じ、アフリカのザンビアでバナナペーパーを作ることになった。この事業を通じ、貧困をはじめさまざまな社会課題が存在するザンビアにおいて、自然(森林栽培の削減)・経済(労働環境づくり)・人間(教育・食糧確保・マラリア対策)の好循環を生み出すことに成功した。
CXにおいては、思いのある人同士の出会いづくりを目的に、エコ名刺ユーザーだけの交流会を開催。エコ名刺というサービスのみではない顧客体験を創出している。
このように同社は、社会課題解決や顧客体験価値を軸にしたビジネスモデルへとアップデートを続けている。
キャンピングカーレンタル事業で展開するキャンピングカー。事業を通じて北海道の魅力も世界に発信している
まなびのポイント 3:同業他社や異業種とのアライアンスによるコアバリューの革新
丸吉日新堂は、他社とのアライアンスも積極的に行っている。全国32の印刷会社と連携し、サステナブルな紙「バナナペーパー(ワンプラネット・ペーパー)」を広めるネットワーク団体「ワンプラネットペーパー協議会」を発足。製品の開発・製造に加え、イベント開催、アフリカ開発会議(TICAD)への参加など、意識啓発や普及の推進を目的とした活動を実施している。
また、キャンピングカーレンタル事業においては、他社(ゴルフ場・航空会社・空港・船舶・台湾インフルエンサー)とのアライアンス事業を行っている。顧客への提供価値を共創し、自社のコアバリューを革新し続けている。
バナナペーパーの制作工程