第5回テーマは「グループ経営とデシジョンマネジメント」。
攻めと守りの観点で経営戦略を実現していくための有力な組織戦略の1つにホールディングス経営体制への移行がある。ただし、その効果を獲得するためには、現状の経営課題を整理し、ホールディングス化により期待する効果を明確にし、その効果を実現させるための設計を正しくする必要がある。グループ経営の在り方は時代とともに変化していくため、取り組むべきテーマを明確にした上で組織戦略へ落とし込みたい。変化の激しい世の中において、どのようにグループ経営を推進していくのか学んだ。
開催日時:2023年10月20日(東京開催)
コンサルティング第一部 主席コンサルタント 弘中 秀之 氏
はじめに
大和総研は1989年に設立以来、リサーチ、コンサルティング、システム分野のスペシャリストの連携により、顧客のニーズに応じた課題解決や企業価値の向上に取り組んでいる会社である。現在では、高度なデータ分析とAI構築力を強みに、先端テクノロジーの知見に基づく新たな価値創出に取り組んでいる。
講義は、現在業種・規模問わず上場企業の持株会社化が増加している背景から、持株会社の概要や、持株会社化で期待される効果、懸念点を踏まえた検討の進め方について、具体的な企業事例を用いて解説していただいた。近年「サステナビリティ経営」や「ESG経営」の強化を目的に掲げる企業も増えているため、今後も持株会社化は増加トレンドであることが想定される。
まなびのポイント 1:持株会社化による「攻め」と「守り」の実現
業種や規模に関係なく、経営戦略を実現する組織戦略として持株会社化する企業が増加しており、上場企業の17%超が持株会社化体制を選択しているという。持株会社化の目的として、多くの企業が「経営資源の最適化」「コーポレートガバナンスの強化」「M&A」を挙げている。
また、持株会社はM&Aや意思決定の迅速化に活用されているため「攻め」の組織体制と言われているが、経営の監督と執行の分離やコーポレートガバナンス強化を通じた「守り」の組織体制としても活用される。
まなびのポイント 2:単に組織の箱だけを作り、形だけ持株会社体制にしても期待効果を得ることはできない
持続的な成長が求められる中「国内市場が縮小する中で、海外進出など成長戦略を描く必要がある」「経営人材が育っていない為、次世代へ経営をバトンタッチできない」など、各社同様の経営課題に直面している。
このような経営環境において持株会社は経営戦略実現ツールとして、「中核事業にとらわれないグループ最適視点での意思決定」「次世代経営人材の育成」「新規事業の進出」「多様な人事戦略への対応」といった効果が期待できる。それらを発揮するためには、それぞれの効果を見据えた仕組みの設計・構築とその運営が重要となる。
まなびのポイント 3:持株会社化に向けた検討の進め方
持株会社化の検討プロセスは大きく3つのフェーズ、3つのスコープから構成される。
3つのフェーズは基本設計、概要設計、詳細設計である。特に、基本設計フェーズで持株会社体制のコンセプトを明確にし、新体制の設計図を描くことが重要である。また、法務、組織、収支の3スコープについてはステップを踏みながら検討を進めていく。
検討期間は1年程度を要し、持株会社の効力発生時期と許認可等の制約条件に留意したスケジューリングを行う。検討事項は多岐にわたるため、プロジェクト統括事務局の下に、各分科会を構成し、迅速かつ質の高い意思決定をしていくことが持株会社化プロジェクトを円滑に推進していくためのポイントとなる。