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研究リポート
企業価値を高める戦略CFO研究会
経営者・経営幹部は、事業価値・企業価値を見極め、事業ポートフォリオを最適化する必要があります。会計ファイナンス思考による戦略的意思決定を学びます。
研究リポート 2023.09.11

企業価値向上のための経営指標 オオツ・インターナショナル

【第3回の趣旨】
CFOは「企業参謀として経営者の戦略意思決定を支援する人」という意味を持ち、ビジネスリテラシーを持った経営者のビジネス・パートナーとして、企業価値を高める役割を担っている。
第3回テーマは「ESG経営と財務・非財務KPI設計」。これまで、自己資本が厚くキャッシュリッチな「潰れない経営」をする会社が日本では良い会社とされてきたが、現在投資家が求めている良い会社とは資本効率を高めて成長投資を積極的に行う持続可能な会社である。
ESG経営(環境や社会に配慮しながら企業統治に取り組み、健全で持続可能な発展を目指す経営手法)の、昨今の潮流や企業価値(経済的価値×社会的価値)を向上させるための考え方や経営指標を学んだ。
開催日時:2023年6月23日

 

 

株式会社オオツ・インターナショナル
代表 大津 広一 氏

 

 

はじめに

 

オオツ・インターナショナルは2004年の創業以来、一貫して「会計」×「戦略」×「財務」×「英語」の4つを基軸としたコンサルティング、企業内研修講師、財務メンター、書籍出版などの事業を展開している。代表の大津広一氏は、年間約30社の企業を訪問して、会計・財務分野の企業内研修で講師を担当するなど、企業活動と教育の最先端で活躍している。

 

講義では、財務指標を公表する潮流の背景や、ROE・ROICなど企業経営の目的である企業価値向上に向けた指標を解説した上で、指標を用いた経営手法や現場で発生する課題を具体的な企業事例を交えながら解説。特に経済価値(財務指標面)を通じた企業価値向上に向け、価値に基づく数字をつくっていく必要性・手法について解説していく。

 


企業価値を向上させる「経済価値」と「社会価値」


 

まなびのポイント 1:企業価値を創造する、「EV-KPI ペンタゴンモデル」

 

企業価値を創造する「EV-KPI ペンタゴンモデル」(Enterprise Value Key Performance Indicator)を活用し、【成長】・【収益力】・【キャッシュフロー】・【投資収益率】・【資本政策】の5つの視点で目標(指標)を打ち出していくことで、網羅性と納得感が得られる。その上で経営状況に応じた優先順位の設定を行っていくことが重要となる。

 

コーポレートガバナンス・コード内でも、資本コスト(資金の調達コスト)を的確に把握した上で、収益計画・資本政策の方針や収益力・資本効率の目標を提示し、実現に向けた事業ポートフォリオの見直し・経営資源の配分に対する具体策を明確に説明することが求められており、財務指標達成の目的と達成に応じた戦略の設計が重要となる。


ROE重視の経営を後押しした4つのファクター

まなびのポイント 2:資本コスト重視の経営から、急増するROIC採用企業

 

近年、複数事業を展開する企業が増加しており、上場企業を中心に各事業ごとの資本収益性を図る指標としてROIC(投下資本利益率)を評価指標とする傾向がある。

 

事業ごとに営業利益の額や率などを評価指標にすると、事業特性や事業規模の大小に左右されてしまい公平な評価ができない。投下資本に対する利益(ROIC)と成長性指標の2軸で事業を4象限に区分し、最適な経営資源配分を行うことが重要だ。

 

結果として、各事業の課題に対し「自社内で解決できる」「連携(他部門・他企業)することで解決できる」「譲渡すべき」など、冷静に事業の状態を理解する事が可能となる。


ROICは企業価値算定式の全要素を網羅する

まなびのポイント 3:KPI指標の設定以上に難しい社内への「浸透」と「定着」

 

目標達成に向けての仕組みづくりは、KPI指標の設定以上に重要な取り組みである。KPI設定からはじまり、定着、成果のステップが発生する中で、 ROICを向上させる結果は社員一人一人の行動の積み重ねであることを理解し、組織内に「浸透」させるための取り組みが求められる。

 

前提として戦略あっての経営指標であり、その指標に対し経営者はコミットメントする必要がある。その上で最終的に行動するのは現場であることを理解し、推進するためには実施内容に応じ評価と連動させることや、目標とのずれに対して対策を議論する場を設けたい。経営指標を現場のKPIと結び付け、社内に根付かせることが重要である。