食品業界への総合的なソリューションで成長を続けるファーストコールカンパニー:丸信 代表取締役社長 平木 洋二×タナベコンサルティング 若松 孝彦
顧客の声に誠実に耳を傾けて事業を拡大
若松 丸信グループとタナベコンサルティングは長いお付き合いで、25年ほどになります。私自身もお父さまの平木信義会長(ファウンダー)時代からのご縁ですからね。平木社長も勉強熱心で当社のセミナーや研究会へのご参加、コンサルティングなどで今もご支援させていただいていることに感謝します。そして、タナベコンサルティンググループのグループ企業であるリーディング・ソリューションの中田義将社長や月田幸穂取締役とも、デジタルコンサルティングでご一緒していることに運命すら感じています。
丸信グループは、5つの事業会社と丸信ホールディングスからなる企業グループです。創業は1968年。祖業は乾燥しいたけの進物用木箱の製造ですが、現在は食品包装資材の販売からシール・ラベル印刷、パッケージ印刷・加工に加え、デジタルサイトの制作・運営まで幅広い事業を手掛けておられます。
あらためてお伺いしますが、祖業に加え、新しい事業に取り組む転機となった時期はいつごろでしょうか。
平木 創業当初、会長は木箱の製造技術の水平展開を模索していたようです。幼い頃、家には父が作った積み木や将棋盤など木のおもちゃの試作品がいくつもありました。
ただ、その分野は参入が困難と判断。次に着目したのが「包む」という機能です。1972年に包装資材の販売を始めると、最初こそ苦労したもののお客さまのニーズにうまく乗って成長しました。
若松 現在も主力事業である包装資材事業ですね。シール・ラベル印刷に進出されたのも、包装資材からのつながりでしょうか。
平木 包装資材事業は競合とまったく同じ物を販売するため差別化が難しく、価格勝負になってしまいます。そこで会長は、新事業のヒントを求めて顧客に話を聞いて回りました。そうした中、あるお客さま(スーパーマーケット)からいただいたアドバイスが、「ラベル印刷かお客さまの店舗のカゴを洗う仕事、どちらかが良いのではないか」というもの。そこでラベル印刷を始めましたが、ものづくりは会長の性に合っていたようです。シール事業が軌道に乗ると新工場を建設。1990年にはオフセット印刷を導入してパッケージ印刷加工を開始しました。
若松 包装資材事業からメーカー事業、ものづくり事業への転換ですね。企業の成長過程における大きな戦略転換です。現在のセグメントとして、シール・ラベル印刷やパッケージ印刷加工といったものづくりと、包装資材などの各事業の比率はどの程度ですか。
平木 今でも売上高の軸は包装資材の卸売事業です。2023年2月期の売上高は113億円。そのうち卸売事業が59億円と52.2%を占めています。シール・ラベル印刷が31.7億円(28.1%)、紙器が19.9億円(17.6%)、その他事業が2.4億円(2.1%)です。
製造、卸売り、デジタルの一貫したバリューチェーンで37期連続増収を達成
若松 先代が製造ビジネスに参入し、それを平木社長の代でさらに磨きながら多様なデジタル事業を立ち上げ、食品業界に対する製造、卸売り、デジタルの一貫したバリューチェーンを構築しているところに、第2創業と呼ぶにふさわしい独創性を感じます。
平木 顧客層が同じですから、包装資材とシール印刷の組み合わせは相性が良いと思います。訪問営業をする際もシール印刷だけでなく、包装資材とも一緒に営業が可能であることも、成功の一因だと思います。
現在は包装資材事業、シールやパッケージ印刷事業に加え、デジタルソリューション事業に積極的に取り組んでいます。食品業界に対して幅広いソリューションを提供しており、「ラベル印刷・シール印刷.com」「食品衛生.com」「食品開発OEM.jp」「丸信×indeed」「九州お取り寄せ本舗」といったウェブサイト運営も含め、食品業界に対するソリューション事業を育てています。ウェブサイトを見た全国の方々からお問い合わせをいただいており、貴重な顧客リード(情報)獲得の場となっています。
もともと当社のデザイン力には定評があったため、いつのころからか「ECサイトをつくってほしい」といった要望が寄せられるようになりました。そうした声に応えるべくウェブ人材を採用して試行錯誤し、対応できる体制になったことは、その後の展開にとって非常に大きかったですね。自前のウェブサイトを立ち上げてあらゆる販促活動を試しながら蓄積してきたノウハウが今、顧客のECサイト制作や運営などの支援につながっています。
若松 大切なことは、「顧客の困り事」や「直面している課題」の解決です。いつの時代も顧客の声に耳を傾け、その解決をビジネスにすることです。その中でも「食品開発OEM.jp」は、デジタルソリューションの中核を担っていると感じます。
平木 おっしゃる通りです。「食品開発OEM.jp」はリーディング・ソリューション協力のもと丸信が運営する、食品に関する総合情報の提供と、食品開発に取り組む企業のマッチング機能を併せ持つ食品総合ソリューションサイトです。
食品に関するトレンド・技術情報をはじめ、商品・サービス情報などを発信するだけでなく、食品製造を受託できるメーカーを探す商品開発企業と、食品工場の稼働率向上や新規製造案件の増加などを目的とする食品受託製造企業をマッチングするプラットフォームでもあります。
もともとは私が社長ブログとしてウェブサイトを運用しており、ウェブ広告も勉強する中で、少数ではありますが問い合わせをいただいていました。デジタルソリューションに可能性を見いだす中、タナベコンサルティングが開催する「FCC(ファーストコールカンパニー)フォーラム」で中田社長の講演を聞き、相談の機会をいただいたことが、「食品開発OEM.jp」の実現につながりました。
新規・既存顧客のマッチングをサポートする中で、新商品のシール・ラベル印刷やウェブサイト制作のご相談があれば当社の売り上げにつながります。現在は月のサイトアクセスが3万を超え、約200件のリード情報を獲得するなど、デジタルソリューション事業の中核を担うウェブサイトに成長しています。
リーディング・ソリューションには、デジタルマーケティングの企画立案や毎月の安定的な運用をお願いしており、検索エンジンで1位に表示されるなどの成果も生まれています。
若松 新たに食品衛生管理や商品開発、マーケティングなどのデジタルソリューション事業を相次いで立ち上げていらっしゃいます。人材採用メディアも運営されていますね。
平木 はい。きっかけは当社の成功体験です。ウェブ上で求人広告を掲載するIndeed(インディード)を通して良い人材を採用できたので、食品業界の採用にも役立つだろうと代理店を志願しました。
今はいくつかの媒体と組んで採用ソリューションを提供しています。HR(人的資源)領域は将来、事業の柱になるのではないかと期待しています。
若松 人材の流動化が進んでいますし、食品業界も人手不足も深刻化しているため、HR領域は今後も伸びていく分野だと思います。丸信グループが成長した背景として、顧客が抱える課題を見つける力があるだけでなく、そうした課題を固定観念で捉えずに独自のソリューションを提供している点が挙げられます。その結果、多様な事業が生まれて相互に補完し合っていることが、唯一無二のビジネスモデルを形成しています。
丸信ホールディングスの「食品企業の成長のためにトータルソリューションの提供を通じて貢献したい」という「志」と、平木社長の「意志」がビジネスモデルやバリューチェーンに表れています。