その他 2023.10.02

福利厚生・社内コミュニケーション強化による人材の確保・活用:ベネフィット・ワン

 

欧米より遅れながらもHRDXのニーズは急上昇

 

タナベコンサルティング・三瓶(以降、三瓶) ベネフィット・ワンは、福利厚生の分野で唯一無二の価値を提供されています。まず、企業概要をお聞かせください。

 

白石 1996年に起業して企業の福利厚生のアウトソーシングを展開する中、総務人事に絡む多様なアウトソーシングを総合的に展開する企業グループになりました。

 

三瓶 HRに関する多様な事業を展開されていますが、日本企業におけるHR分野のDXに対してどのような認識をお持ちですか。

 

白石 欧米諸国に比べて3、4年遅れていると感じますが、福利厚生やヘルスケアに関するさまざまなデータを一元管理するHRDXへのニーズは高まっています。例えば、人事データをデジタル化して管理し、人員の配置や生産性の向上に役立てるなどの取り組みが行われるようになりました。

 

 

革新的な取り組みで福利厚生の充実を加速

 

三瓶 福利厚生をいかに充実させるかは、企業の大きな課題の1つです。ベネフィット・ワンにおける福利厚生の取り組みをお聞かせください。

 

白石 最初に労働市場を取り巻く環境をご説明します。まず、コロナ禍で止まっていた「働き方改革」の動きが活発化し、同一労働・同一賃金・ニューノーマルへの対応が急務です。また、社員への健康サポートによって生産性を向上させる「健康経営」は、もはや全企業が取り組むべきテーマです。そして生産性向上に向けた「デジタル化」は不可欠。

 

このような従来の課題に加えて、「人手不足の加速」「人材投資の加速」という新たな社会課題も出現しました。福利厚生の充実とHRDXの推進による人材の確保と活用は、企業の持続的な成長に必須の要素です。

 

当社も人材の確保に尽力しており、過去3年以内に導入した福利厚生制度は、①就業時間の変更(9〜18時から9〜17時30分へ短縮)、②柔軟な働き方(フレックス・在宅・サテライトオフィス勤務も可能)、③服装の自由化、④朝食・夕食サービス(早朝出勤・残業時の食事の無償提供)、⑤シエスタ(昼寝)です。人材をつなぎ止めるためのありとあらゆる制度の策定と変更を検討・実施してきました。結果として、コロナ禍で高まった離職率は従来のレベルに落ち着き、新卒採用や経験者採用への応募も非常に増えました。

 

三瓶 ベネフィット・ワンの特徴である「インセンティブポイント」の説明もお願いします。

 

白石 インセンティブポイントは当社の商品でもあります。福利厚生は「全員へ平等に提供する」という大原則がありますが、インセンティブは「頑張っている人により手当を与える」という考え方です。例えば、営業報奨金や社長賞として金一封や旅行券などを提供する制度は昔から多くの日本企業に存在しています。

 

当社は社内仮想通貨のようなポイントを付与することで、社員の努力・功績に報いる仕組みを創出しました。営業報奨金や社長賞だけでなく、気の利いたアイデアを出した人に対して上司が褒め言葉と一緒にポイントを提供したり、同僚が仕事のサポートしてくれたときに感謝の気持ちを込めてポイントを提供したりできます。換金すると大したことなくても、ポイントをもらうとうれしくなりますよね。そして貯まったポイントは、当社が仕入れた2万アイテムの商品と交換が可能です。

 

このインセンティブポイントは576社へ導入され、400万人以上に利用されています。

 

 

次代の経営陣と新規事業を育む人材育成システム

 

三瓶 さまざまな新しい取り組みを生み出すのは人材です。同社における人材育成についてお聞かせください。

 

白石 まず、「ジュニアボード制度」という若手役員育成に取り組んでいます。1年を任期として、部署横断で選抜された社員が社長直轄でさまざまな経営課題に取り組み、トップとの意見交換や情報共有を行うと同時に、具体的なプロジェクトの推進を担っていく制度です。社員の発想力・判断力・経営感覚の養成を目指しています。

 

実際にこの制度から人事制度や福利厚生制度、業務改善プランなどが生まれました。最初は東京だけで実施していましたが、今では愛媛県松山市のオペレーションセンターにも「松山ジュニアボード制度」を設けています。

 

もう1つが「社内ベンチャー制度」です。新規事業の創出やチャレンジする企業風土の醸成を意図した制度で、全社員が新規ビジネスや業務改善に関するアイデアを経営陣へ直接プレゼンテーションできる機会を設け、優れたアイデアに対しては事業化に向けたバックアップを行っています。

 

私がもともとパソナグループの社内ベンチャーで当社の事業を立ち上げたこともあって力を入れています。先ほど話したインセンティブポイントも、15年ほど前の社内ベンチャーコンテストで1位を取って事業化しました。

 

三瓶 この対談を通して学ぶべきポイントは、「福利厚生やHRDXは人手不足という社会課題の解決になり得る」「経営者人材の育成は、少人数に絞り込んで徹底的に社長の考えを伝えていく」、この2点です。

 

福利厚生そのものが、ステークホルダーに対する社長の思いがこもったメッセージになります。「福利厚生の費用対効果は高い」という認識を持っていただきたいと思います。

 

 

PROFILE

  • ㈱ベネフィット・ワン 代表取締役社長
    白石 徳生(しらいし のりお)氏
    1989年拓殖大学政経学部を卒業後、1996年パソナグループの社内ベンチャー第1号としてビジネス・コープ(現ベネフィット・ワン)を設立、取締役に就任。2000年同社代表取締役社長に就任。JASDAQ、東証2部を経て2018年に東証1部上場、2022年に東証プライム市場へ移行。「サービスの流通創造」を経営ビジョンに、ユーザー課金型の定額制割引・予約サイト「ベネフィット・ステーション」を運営。また、福利厚生・健康支援・教育研修を軸としたBPOサービスのワンストップソリューションを提供し、「ベネワン・プラットフォーム」を通じて企業のHRDX推進を支援している。

 

Interviewer

三瓶 怜(さんべ れい)
タナベコンサルティング HRゼネラルマネジャー

 

ベネフィット・ワンが運営する人事・総務担当者・経営者向けの福利厚生や人事課題について解説するポータルサイト「ボーグル」はこちらよりご覧ください