【第3回の趣旨】
当研究会では、独自のM&Aモデルを確立している企業からM&Aノウハウと業種の特徴を取り入れた事例を学ぶ場を提供する。第3回は「クロスボーダーM&A」をテーマに、ゲスト2社(Sanzo management、グローバル・パートナーズ・コンサルティング)を迎え、クロスボーダーM&Aを積極的に推進する企業の戦略・推進体制について講演いただいた。
開催日時:2023年6月21日(東京開催)
執行役員 板倉 祐希 氏
はじめに
グローバル・パートナーズ・コンサルティンググループは、経営課題解決に特化した各分野のプロフェッショナルで構成される完全独立系コンサルティングファームである。
アジア圏を中心にクロスボーダーM&Aを支援しており、海外の市場調査や海外市場に進出するための市場戦略など、M&A以外の分野でも支援を行っている。また戦略のみに留まらず、販売代理店やパートナー交渉・契約締結支援なども支援している。現地法人設立、現地法人運営支援業務などの会計事務所機能も持ち合わせており、海外に関する多種多様なサービスを展開している。
まなびのポイント 1:海外のM&Aの実態
一般的なディールプロセスは日本におけるM&Aと相違ないが、海外におけるM&Aはターゲット企業の選定や手段の検討、売り手の期待値に合わせた調整に時間を要することが多いため、成約までの期間が長くなることが少なくない。また国によって平均成約スピードも異なるため、猶予期間を持つことが重要である。
クロスボーダーM&Aをスムーズに進めるためには、自社内リソースの整理、海外M&A実施のコンセンサスの取得、経験豊富な専門家の検討が必要となる。海外案件においては、仲介者は利益相反の観点から用いられることが少ない。FA(ファイナンシャル・アドバイザー)が中心となるため、情報伝達には仲介者以上に時間を要することも忘れないでいただきたい。
まなびのポイント 2:海外のM&Aにおける注意点
海外案件は交渉が難航するイメージがあるが、その理由は大きく次の4つに分けられる。
⑴立場の違い
売り手は高く売り早く引退したい 、買い手は安く買って長期間続投してほしいなど、双方の思いに折り合いを付けなければならない。
⑵文化や価値観の違い
国により文化や価値観が異なるため、買い手は現地の価値観・文化を知る必要がある。
⑶言葉の壁
双方のコミュニケーションや行間の読み取りが難しい。
⑷法制度の違い
国内でも最終契約書ではリーガルが複数回に及ぶが、海外は法制度の内容を汲み取り契約書などへの落とし込みが必要。
東南アジア諸国のM&Aの特徴
まなびのポイント 3:価格交渉における4つのポイント
⑴定義の確認
株式価値ベース、EV to 株式価値ベース、EVベースなどの選定である。国内では純資産法が多いが、海外マーケットのバリュエーション方法を押さえておくことが重要である。
⑵市場や対象事業の成長性を加味する(国内に捉われずグローバルな視点を持つ)
⑶「なぜ日系企業に売却をしたいか」を理解する
トップ面談や意向表明時に国内の強みなどの定性情報を強調する。
⑷アンロジカルな交渉に備える
売り手は感情的になる場面があるため、ロジカル以外の交渉が発生する心構えを持つ。