【第5回の趣旨】
戦略人事研究会では、「事業と連動した戦略人事を実践する」という企業側の視点と、「社員の活躍を最大化させる」という社員側の視点から、現代に不可欠な戦略人事と組織パフォーマンスを追求していく。
第5回は「人財を活かす制度と風土」をテーマに、先進的な取り組みを行う2社に講演いただいた。
開催日時:2023年7月26日(東京開催)
人財戦略第一部長 伊庭 達也 氏
はじめに
1974年に日本初の「がん保険」を発売し、現在では個人保険契約数2,300万件※を超えるアフラック生命保険は、「人財を大切にするコアバリュー」を米国での1955年の創業以来脈々と受け継いでいる。
それは経営戦略にも色濃く反映しており、「人財マネジメント戦略」を中期経営戦略(2022~2024年)の第一の柱に、「戦略を考えるのも実現するのも人」という考えで取り組んできた。そんな同社の人財マネジメント制度改革の内容について、人財戦略第一部長の伊庭達也氏にご講話いただいた。
※アフラック生命保険「アフラック統合報告書2023」(2023年7月)
まなびのポイント 1:人財マネジメント制度改革の推進リーダーは社長
人財マネジメント制度改革は、社長がリーダー、メンバーは各部門を代表する役員で構成されている。議論に費やした時間は2年間で約126時間(全86回)を超える。人事制度改革は、文字通り全社員に影響が及ぶ重要な取り組みであり、トップの強い思いとコミットメントが必要不可欠であるからだ。
また、社員で構成されるフォーカスグループを組成して議論している内容についてインタビューを実施したり、制度導入対象の社員約3,600名に対して2回の対話型説明会を実施したりするなど、多様な手段を用いて社員と丁寧に向き合ってきた。
「良い制度をつくる」だけでなく、社員に正しく理解され、活用されるためのプロセスを重視している。
まなびのポイント 2:職務等級制度を基軸とした人財マネジメント制度への転換
人財マネジメント制度改革では、「“職務”と“成果”に報いる報酬体系」という基本方針に基づき、社歴・年齢・性別に関係なく「職務の大きさ」を基にグレードを定めるという、職務等級制度を基軸とした人財マネジメント制度を策定した。
米国からの要請に従って人財マネジメント制度を改革したわけではなく、「変化の激しい時代に企業として成長していくには、どのような人財マネジメント制度を構築すべきか」を念頭に策定している。
会社と社員の未来を真剣に考え、検討し尽くした上で意思決定を行ったプロセスも重要なポイントである。
まなびのポイント 3:体系的な人財マネジメント戦略
これまで、同社の人財マネジメント制度改革について触れてきたが、同社は体系的な「人財マネジメント戦略」も策定している。戦略を実現するために制度があり、その制度が適正に運用され、諸制度・施策と連動することで効率的・効果的に戦略が推進されるように全体のデザインが設計されている。
そのほかにも、社員の能力開発のための自己啓発支援金の支給や、人的資本データを生かすためのダッシュボードの構築、戦略的なハイブリッドワークを実現するための環境整備など、戦略に基づいたさまざまな取り組みがある。
このような一貫性のある人事施策が連動することで、多様な人財が自律的に働き、最大限に力を発揮することができる人財マネジメント戦略が生まれる。
「人財マネジメント戦略」の全体像