【第4回の趣旨】
アグリサポート研究会では、「アグリ業界の持続的成長と課題解決へ向けた生きた事例を学ぶ」をコンセプトとして掲げている。第4回は、静岡県でアグリ業界の先進事例を視察。1社目は、印刷会社から農業分野へ新規参入した小林クリエイト様より農業への新規参入時の事業計画と展開手法を、2社目は、稼げる農業のビジネスモデルを確立したHappy Quality様より、データドリブン農業で買ってくれる商品をつくる(マーケットイン発想)ポイントについてお話しいただいた。
開催日時:2023年3月23日、24日(静岡開催)
代表取締役 宮地 誠 氏
はじめに
2015年創業のHappy Qualityは、「生産から流通までの世界のスタンダードを創る」をビジョンに掲げ、農業・流通業界の変革と意識改革に挑んでいる。
同社は「Happy式マーケットイン農業モデル」という独自のビジネスモデルのもと、誰でも農業経営ができる未来の実現に向けて、栽培マニュアルと栽培指導によるデータドリブン農業に独自の買取システムを導入してサプライチェーンを再構築。
また、静岡大学と共同で研究開発を行う同社関連会社のアグリエアでは、農作物の高付加価値化や栽培技術の高度化、品質検査、技術開発を推進。アグリテックの高度化とデータドリブン農業で収集したデータを活用して、実現性の高いサービス提供を目指している。
※Happy Quality講演資料より抜粋
まなびのポイント 1:創業のきっかけ
同社の代表取締役である宮地誠氏は、大学中退後に卸売市場業界の道に進み全国の生産者との直取引など幅広い経験を積む。一方で、生産農家数は減少し、売り上げも毎年右肩に下がり続けるなど農業の将来を不安視していた。
そこで宮地氏は、「生産農家の減少に歯止めをかけなければ卸売業者として成り立たない。生産農家や新しい仲間が増えていけば、仕入れ側は生産に還元できる」という思いと、農家の若返りと農家数の増加のためには、農業所得の確保と栽培の未熟さを補うことが課題解決の糸口になると確信し、同社を創業した。
市場相場に捉われない農業経営を実現
※Happy Quality講演資料より抜粋
まなびのポイント 2:Happy式マーケットイン農業モデル
同社が提供するHappy式マーケットイン農業モデルは、栽培技術・指導をセットで提供するため、パートナー契約農家であれば誰でも高機能・高品質・高単価の生産が可能である。ポイントは、次の4つだ。
(1)完売品をコンセプトに、品質基準(サイズ、糖度、栄養価、外観など)と販売価格(数量、単価)を決めて“買ってくれる商品”の品質と価値を設計
(2)データドリブンによる栽培技術の開発で、ベテラン農家と同じ高品質作物の栽培ノウハウをマニュアル化。経験値に依存しない栽培手法を修得
(3)パートナー契約により、栽培研修・指導で品質を担保しつつ安定生産が可能
(4)農作物の全量買取による所得の確保で経営を安定化
“買ってくれる商品”とは、市場が求める品質と価値を反映した商品である。ニーズと生産物がマッチした完売品をコンセプトとして、開発を進めることが重要だ。
Happy式マーケットイン農業モデルの1つである「Hapitoma」(ハピトマ)で栽培されたトマト