メインビジュアルの画像
研究リポート
SDGs・ESG経営研究会
2030年までの成長戦略は、環境・社会・経済のサステナビリティへの挑戦です。SDGs・ESGを通してサステナブルなビジネスモデルの再構築について学びます。
研究リポート 2022.10.31

TOPPA!!!TOPPANのSDGsビジネスのつくり方:凸版印刷株式会社

【第1回の趣旨】
2030年に向けた戦略構築においては「サステナブル」というキーワードが非常に重要になる。当研究会は、「社会と企業のサステナビリティを実現し未来を創造する」というテーマのもと、ビジネスとしてSDGsに取り組んでいる先進的な企業を紹介する。第1回では、株式会社ガンバ大阪と凸版印刷株式会社の2社を訪問・視察し、SDGsへの取り組み方を学んだ。
開催日時:2022年9月28日、29日(大阪開催)

 
 

 

凸版印刷株式会社
マーケティング事業部 SDGsプロジェクト部長
TOPPAN SDGs Unit 共同代表
今津 秀紀 氏

 
 

はじめに

「印刷テクノロジー」をベースに「情報コミュニケーション事業分野」「生活・産業事業分野」「エレクトロニクス事業分野」の3分野にわたり事業活動を展開している凸版印刷株式会社。1900年の創業時より培ってきた多様なリソース、多彩な顧客・行政基盤をベースとし、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「SX(サステナビリティトランスフォーメーション)」をキーワードに、持続的な社会の実現に向けてさまざまな事業を推進している。2019年に「TOPPAN SDGs STATEMENT」を公表以来、同社はSDGsビジネスを加速。2025年までの中期経営計画においては、DXとSXで社会課題を解決することを掲げ、SDGsビジネスの定量目標を設定している。本講演では、中計に定量目標を組み込む効果やSDGsビジネス創出プログラム、社員の挑戦に応えるSDGsアワードの仕組みを紹介する。

 


 

 

講演・視察を実施した凸版印刷株式会社関西事業部ショールーム「PLAZA21 KANSAI」。
オンラインDXゾーン・現場DXゾーン・SXゾーンに各分野のさまざまなソリューションが展示されている

 

 

まなびのポイント 1:中期経営計画にDX・SXを組み込んで推進

 

凸版印刷株式会社は「『DX』と『SX』によってワールドワイドで社会的課題を解決するリーディングカンパニーになる」ことを宣言し、2030年を見据えたSDGsに関する定量目標を中期経営計画に組み込み、公表している。中期経営計画で目標を見える化したことにより、全社が一丸となって達成に向けて行動する仕組みが実現できた。

 

定量目標は、半年に一度、進捗確認と見直しを行っている。事業部ごとにSDGs事業計画を設定しているため、事業部間で達成に向けた競争も生まれ、良い刺激となっている。

 

ホームページでは、SDGs定量目標を設定した際のプロセスを公開しており、目標決定までの悩みなども紹介している。

 

 

トッパンのサステナビリティ方針の紹介コーナー

 

 

まなびのポイント 2:社員一人一人が行動する「仕掛け」

 

SDGsに関する目標を見たとき、「自分には関係ない」と考えてしまう社員は多い。そのため同社では、各社員が自分の仕事をSDGsのストーリーで語り、行動することをゴールとした教育プログラムを設計した。

 

プログラムは「理解」と「行動」の2つを促す内容で、事業部ごとに展開。理解を促すプログラムでは、e-ラーニングによってSDGsの基礎知識や必要性を配信している。行動を促す「実践SDGsビジネス創出プログラム」では、課ごとにテーマを決めて実行し、ベストプラクティスを共有している。同社はこの2つの「仕掛け」によって、社員一人一人の行動まで設計し、SDGsビジネスを新しく生み出せる人材の育成を行っている。

 

 

まなびのポイント 3:アワードを取り入れ、全社で取り組む体制を構築

 

実践SDGsビジネス創出プログラムで実行したテーマの中で、優良な事例を表彰する「SDGsビジネスセールスアワード」を実施し、社内全国の事業部へライブ配信する取り組みを行っている。上位賞の中には、特許出願や商標登録を実現した例もある。2022年からは、アワードの対象を営業部門から企画開発・製造・管理部門にまで広げ、全社でSDGsに取り組む体制を構築した。

 

行動して成果を出せば表彰されるという仕組みによって、SDGsへの取り組みを社内へますます浸透させている。

 

 

「PLAZA21」の視察で「メタバース」を体験する参加者