グループ各社が支え合い、競い、刺激し合いながら成長を続ける東京システム運輸ホールディングス。「自分たちで決めたことは必ず達成する」というモチベーションが、8期連続増収(連結)という成果を生んでいる。
東京システム運輸がホールディングス化に踏み切ったのは2010年。創業45年の節目に、創業オーナーの引き継ぎ事業承継と、次世代経営陣の育成が目下の課題として浮上している時期だった。
連結売上高が100億円を超え、2002年に子会社化した東京ユニオン物流と事業内容が重複する部分もあり、両社の役割をあらためて整理する必要性にも迫られていた。
「当社は純粋持ち株会社ではなく、事業持ち株会社としてホールディングス化を進めることになっていたので、実務責任者としてホールディング会社とグループ会社との間で事業をどう割り振るか、そのグランドデザインから着手しました」と、代表取締役社長の細川武紀氏は語る。
東京ユニオン物流は首都圏特化の運送クオリティーを追求する「運輸事業」、2010年10月に新設する東京ロジファクトリーは、戦略的な物流ソリューションを提案する「倉庫事業」と定義。
ホールディング会社となる東京システム運輸ホールディングス(以降、東京システム運輸HD)の役割は、①グループ会社の経営指導、②フランチャイズマネジメント、③物流センターをはじめとする不動産の管理、④物流関連情報システムの開発および販売、⑤物流ノウハウを生かして応用展開する太陽光発電事業や介護事業、の5つである。
東京ユニオン物流への吸収分割と東京ロジファクトリーの新設分割に向けて与えられた準備期間は、臨時株主総会開催までの実質6カ月しかなかった。当時、経理部の課長として実務に当たっていた細川氏は、こう振り返る。
「新設する子会社は、1期目の会社です。いざ立ち上げてみると、金融機関から担保率の低さを指摘されることもあれば、取引先から『設立して間もない企業との取引は控えたい』と懸念されるケースもありました。もちろん、配属する社員への同一労働条件の説明と理解も重要です。
そのほか、登記・税務・金融システムの設定など全てゼロからのスタートだったので、いわばスタートアップの草創期と同様に、分社直後のバックオフィス業務は膨大でした。創立日から、初めての連結決算の算出に向けた経理・財務業務が否応なくスタートするのです。ホールディングス化する際には、その点を十分に心得た上で臨むべきだと強く感じました」(細川氏)
新体制を構築する中、あらためて浮き彫りになった縁の下で事業を支えるバックオフィス部門の重要性。東京システム運輸HDの社員が新設子会社の業務も兼任するという異例の事態が続く中で迎えた2011年3月期、連結決算は創立来初の赤字という痛恨の結果になった。
当時、成長市場であったドラッグストア業界を対象とした、新規物流業務の立ち上げが控えていた2期目を前に、社内には暗雲が立ち込めた。しかし、その渦中で行く先を照らしたのが、細川氏を含む次世代の選抜メンバー10名が2008年に策定していた中期経営計画だったという。