“リアル”と“デジタル”が融合し、その境目がなくなる中、商品やサービス、人材・採用、さらには会社そのものの価値の再定義すら必要な時代が到来している。
物理的価値や金銭的価値だけではステークホルダーから選ばれにくくなるにつれ、本質的欲求をもとにした「体験価値」のデザインが、ブランディングの一環として欠かせなくなっているのだ。
ナンバーワンブランド研究会では、ポストコロナ社会の価値観を踏まえた上で、自社の価値を再定義していく。
第1回では、コロナ後の新しい時代に合わせた最新のブランディングを研究。また、特別ゲスト2社を招き、インナーブランディングに関する取り組みと未来の戦略について講演いただいた。
開催日時:2022年9月27日、28日(静岡開催)
コーポレート・コミュニケーション部 社内広報グループリーダー
石部 卓 氏
はじめに
創業135年の老舗企業で、グローバル楽器シェアNo.1を誇るヤマハ。「感動を・ともに・創る」という企業理念の下、音楽事業、音響機器事業、部品・装置事業の3つの領域でグローバルに事業を展開している。
‟顧客体験”などを掲げるヤマハフィロソフィーや社長表彰制度「Yamaha Awards」、社内イベント「Yamaha Day」を通じ、世界中のグループ従業員を巻き込みながら一体感を醸成し、ブランディング推進につなげる取り組みについてご講話いただいた。
まなびのポイント 1:ヤマハフィロソフィーで全社員の価値観統一へ
ヤマハフィロソフィーとは、ヤマハグループの企業経営の「軸」となる考え方を体系化し表したもの。常にこのフィロソフィーを心のよりどころにしながら、お客様の視点に立ち、期待を超える製品とサービスを生み出すことで、未来に向かって新たな感動と豊かな文化を創りつづけることを掲げている。
内容は「企業理念」「顧客体験」「ヤマハクオリティー(品質指針)」「ヤマハウェイ(行動指針)」の4つで構成。「企業理念」「顧客体験」は、グループの存在意義を表す普遍的な内容であり、ヤマハフィロソフィーの『基軸』になっている。
「ヤマハクオリティー」「ヤマハウェイ」は、企業理念を具現化するために、グループで働く全ての従業員が日々の業務の中でよりどころとすべきものであり、ヤマハフィロソフィーの『両輪』を示す。同社では価値観統一に向け、フィロソフィーの解説ビデオの放映などの工夫も行っている。
ヤマハフィロソフィー体系図。働く全社員の日常業務のよりどころとなっている
まなびのポイント 2:グローバルブランド推進体制の確立
ヤマハでは、各社・各組織にブランド管理責任者とブランド推進者を置くことで、ブランド推進活動を自主的に促進する体制を整えている。中期経営計画でも「『なくてはならない、個性輝く企業』になる」という文言で、ブランド力を高めていく方針を明言。社内ブランディング推進活動として、グループ報やイントラサイトなどを活用し、情報発信を行っている。
また、同社にはヤマハブランドの高揚に寄与した活動を表彰する制度として「Yamaha Awards」がある。ヤマハフィロソフィーを体現する活動のグローバルな共有と、さらなる高みを目指してチャレンジする風土の醸成が目的となる。選考基準に満たない場合も、有意義な活動には本部内の独自表彰を行うなど、称揚の場を設けている。
まなびのポイント 3:Yamaha Dayで一体感を高め、つながり・認め合い・未来を描く
ヤマハでは、毎年10月をブランド月間と定め、ヤマハブランドに対するパッションを高め、グループの一体感醸成や絆づくりを目的とするイベントとして「Yamaha Day」を開催。
グループ各社・各部門から選出されたメンバーによる実行委員会形式でボトムアップの企画・運営を行っている。
トップダウン(Yamaha Awards)×ボトムアップ(Yamaha Day)の2軸のイベントを通じ、ブランドへの想いを馳せる機会を創出し、社員のロイヤリティ向上に寄与している。
また、2021年には30以上の国と地域から3249人のグループ従業員が参加し、ミュージックビデオを作成。コロナ禍でも世界中の従業員と演奏動画でつながり、1つの音楽を完成させたこの取り組みは、地元メディアで取り上げられ話題となった。
ヤマハブランドに対するパッションを高め、グループの一体感や絆づくりを目指す「Yamaha Day」。世界中のグループ従業員が参加し、ミュージックビデオをつくる取り組みは地元メディアで取り上げられるなど話題になった