その他 2022.10.03

よなよなエール流ファンとの絆づくり:ヤッホーブルーイング

製品だけでなく、企業やそこで働く社員も含めて共感・支持されている

 

 

ビールに味を!人生に幸せを!

 

ヤッホーブルーイングは、1997年に星野リゾート代表・星野佳路氏が創業した会社であり、長野県の軽井沢町でクラフトビールの製造・販売を行っています。

 

クラフトビールとは小規模なブルワリー(ビール醸造所)で職人技によって造られた個性的なビールを指しており、看板製品「よなよなエール」は柑橘系を思わせる味わいが特徴です。

 

当社のミッションは「ビールに味を!人生に幸せを!」で、「画一的な味しかなかった日本のビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出する。そしてビールファンにささやかな幸せをお届けする」ことを目標に置いています。

 

日本のビール市場におけるクラフトビールのシェアは1%程度しかありませんが、当社は2002年から19期連続で増収を続けています。

 

それまでの道のりは厳しく、創業から3年間は地ビールブームで業績を伸ばしたものの、ブーム終焉後は主要販路のスーパーマーケットやコンビニエンスストアからクラフトビールが消え、当社の業績も低迷。最後の販路として2004年、EC通販に注力しました。

 

すると、「よなよなエールが買えるようになってうれしい」「おいしいビールをありがとう」「頑張ってね」といった反響が届きました。会社がどん底状態のとき、全国にいらっしゃるお客さまから直接、励ましの言葉をいただいた――。思いもよらなかった出来事に、スタッフのモチベーションが一気に高まり、業績の回復につながりました。

 

 

個性的なブランド開発とウェブを活用した販促活動

 

当社では、お客さまを「トライアル顧客(トライアルで購買し、気に入らなければ次から買わない)」「弱いリピート(価格やキャンペーンに応じてブランドスイッチを繰り返す)」「リピート(強いロイヤルティーはないが、特に不安もないので買い続ける)」「ファン(強いロイヤルティーを持ち、価格に左右されずブランド指名買いをしてくれる)」「伝道師(身近な友人や知人にも推奨してくれる)」という階層に区分します。

 

リピートとファンを分けるのは「ビールに味を!人生に幸せを!」という当社のミッションへの共感だと考えます。つまり、私たちのファンは、製品の世界観(ブランド)やベネフィット(品質・機能)、会社の価値観にも共感・支持してくださる方々なのです。

 

そのようなファンとの絆を強めるポイントは「世界観(デザイン・ネーミング)」「機能価値(味・香り)」「情緒価値(癒やされる・共感・仲間をつくる・理想像の実現)」「つくり手への共感(企業ミッション・スタッフ・顧客対応)」に気付いてもらうこと。それに基づいて狭く具体的にターゲットを設定し、他社が模倣するのをためらうくらいの徹底した差別化を実施して「水曜日のネコ」や「僕ビール君ビール」などの個性的な製品を誕生させました。

 

同時に、ファンの共感・支援の輪を広げていくプロモーションにも注力し、非認知層が「仲間になってみたい」と思えるようなコミュニケーションづくりに取り組んでいます。例えば、「僕ビール君ビール」の発売日に、社員が販売店を巡回して店舗が映り込んだ製品を撮影し、当社の公式Twitterに投稿すると、興味を持ったファンが全国から同じような写真を投稿。夕方に当社がYouTubeで情報が寄せられた都道府県を紹介すると、ファンが一斉に盛り上がり、新製品の情報が波及しました。

 

SNSに関しては、LINEやTwitter、Instagram、Facebookを活用して20万~30万人のお客さまとコミュニケーションを交わし、お客さまが面白いと感動したり、役に立つと思ったりするような情報の提供を心掛けています。

 

また、ECサイトもファンに機能価値と情緒価値を提供する重要な役割を担っています。ECサイト「よなよなの里」では、全国ブランド製品のみならず、エリア限定製品を含めた当社の全ラインアップを販売。普段はリアル店舗で「よなよなエール」を購入しているお客さまが、サイトを見て「面白い商品がたくさんある。ちょっと通販で買ってみよう」と思えるような位置付けにしています。

 

通販で特化を進めているのが、クラフトビールの定期便である「ひらけ!よなよな月の生活」というサブスクリプションサービス。1ケース(24缶)が1~2カ月に1回届き、中身は全ラインアップの中から選ぶことができる仕組みで、1年間の平均支払額は約5万5000円、2022年には契約数が7000人に達しました。