その他 2022.03.22

マーケティングイノベーションフォーラム
ゲスト:横浜DeNAベイスターズ、ソニー・ミュージックレーベルズ

 

 

“自社のファン”を創造するためのコミュニケーション設計を学ぶ

 

 

タナベ経営は2022年3月3日、「マーケティングイノベーションフォーラム」を開催。先進的なマーケティング活動で顧客とのコミュニケーションモデルを創造し、ファンを増やし続けている企業と、マーケティング支援の実績を数多く持つタナベ経営のコンサルタントによる講演をリアルタイムで配信した。

※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。

 

 

Session1 ファンを創り続けるコミュニケーションモデル
1.消費者を取り巻く環境
①コロナショックによる人々の価値観の変化、②人口減少と少子高齢化による内需の縮小、③コモディティー化(商品価値の陳腐化)、という3つの課題に直面。生き残るには、既存顧客を長期的に支持してくれるファンにする「ファン化」が重要

 

「ファン化」とは、既存顧客をよりエンゲージメント(企業と顧客の信頼関係)の高い顧客=ファンに育てること。メリットは①リピート購入、②売上単価の向上、③スペック競争・価格競争からの脱却、の3つ。顧客との接点をつくり、複数チャネルでメッセージを届けて「ファン化」する新たな仕組みづくり(コミュニケーション設計)が必要

 

2.なぜ新たなコミュニケーションMIXが求められるのか
コミュニケーションMIXとは、企業(ブランド)メッセージを伝えるため、顧客・目的に合わせてメディアやツールを組み合わせ、費用対効果を最大化する方法。
「価値」を届けるため、自社と顧客をつなぐ活動として、コミュニケーション戦略は欠かせない

 

3.ファンを増やし続ける成功のポイントとは?
自社マーケティングファネルの設計(【図表】)が重要。リアル×デジタル×時間軸を適切に組み合わせ、顧客エンゲージメント(企業と顧客の信頼関係)を高める設計をしていく。 

 

 

【図表】自社マーケティングファネルの設計

 

 

 

株式会社タナベ経営執行役員 マーケティングコンサルティング本部 デザインプロモーション東京本部長

松岡 彩

独自の手法で、デザイン性の高いオリジナルのプレミアムグッズの製作を支援。企画制作・管理運営・物流までをトータルプロデュースする。常に課題と向き合い、ブランドイメージ・認知向上、売上拡大に繋がる提案を得意とする。

 

 

 

Session2 横浜DeNAベイスターズのマーケティング戦略
1.事業概況
・スタジアム観客動員数をいかに増やすかが重要
・横浜DeNAベイスターズ誕生(2012年、以降YDB)以降、観客動員数は右肩上がり(コロナ禍の2020、2021年を除く)
・主な収益源は入場料、飲食・グッズ、広告スポンサー、放映権の4つ
・観客が球場に集まらなくてもビジネスを成立させる取り組みが重要。コロナ禍以降はデジタルコンテンツ事業に力を入れている

 

2.マーケティング戦略
・マーケティングの目的はファンベース形成と価値顕在化であり、そのための活動は「ファンアクイジション(ファンを増やす)」「ファンエンゲージメント(熱量を高める)」「プロモーション」の3つ
・「YDBファンピラミッドモデル」が全社共通のフレームワーク
→ターゲット、取り組み、目的を明確化
・体験、接触、参加・発信、プレー、購入という5つの施策タイプを、場所・ターゲットに応じて使い分けながらファンベース形成に取り組む

 

3.事例紹介
・オウンドメディア(HP、ECサイトなど)、アーンドメディア(新聞、テレビ、SNSでの拡散など)、ペイドメディア(広告など)のトリプルメディアを連携させながら発信
・YDBの選手に興味を持ってもらうためのHPコンテンツ「運命のプリンス診断」、他球場開催時のコミュニケーション、球界初の他球団とのインスタライブなど取り組み多数

 

 

 

株式会社横浜DeNAベイスターズ執行役員 ビジネス統括本部長

林 裕幸氏

大学卒業後、外資IT企業にてコンサルティング事業に従事し、2013年に横浜DeNAベイスターズ入社。入社後はマーケティング戦略立案や新規事業開発などを中心に取り組む。経営・IT戦略部部長、ブランド統括本部長等を経て、2020年12月より現職。

 

 

 

Session3 コミュニティマーケティング戦略から見える新たな顧客接点攻略のポイントとは
・音楽業界では「CD(モノ)を買ってもらう」ビジネスから、ストリーミング中心の「聴いてもらう」ビジネスへ大きく変化。「トキビジネス」「トキ消費」をいかに攻略するかが重要

 

・モノ消費は「購入」、コト消費は「体験」に重点を置く一方、トキ消費は「思い出」「盛り上がり」がキーワード

 

・今は「デジタル」だけでヒットする(YouTube、Instagram、TikTokなど)。カバー動画や「歌ってみた」「踊ってみた」動画といったUGC(User Generated Contents)で拡散されていく。また、ファンは“推し”のアーティストに深い愛情を注ぎ、応援し、押し上げるマインドを持つ(「推し活」の時代)

 

・ファンとはコンテンツを愛してくれる人。全体の2割のファンが8割を消費する。ただし2割の‟愛してくれるファン”だけでなく、残り8割の‟好きになってくれるファン”も含めた分母全体を増やす取り組みが重要

 

・販促×売上ではなく、ブランディング×愛情の深さを前提としたKPI(重要業績評価指標)が必須

 

ファンベース(消費してくれる人、愛してくれる層)×コミュニティ(好きになってくれる人、周辺のコミュニティ)マーケティングが重要(例:映画監督×主題歌を歌うアーティストのインスタライブ、映画公開日に合わせた主題歌発売など)

 

 

 

株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ第3レーベルグループ EPICレコードジャパン 第三制作部 部長

梶 望氏

1971年静岡県生まれ。中央大学理工学部卒業。1996年、東芝EMI入社。2017年、宇多田ヒカルのレーベル移籍に伴い、ソニー・ミュージックレーベルズに入社。現在は宇多田ヒカル、いきものがかりを中心としたレーベル業務の他、世界ゆるミュージック協会など新規事業も兼務。

 

 

 

Session4 これからの顧客コミュニケーション戦略とは
1.これからのコミュニケーション戦略
コミュニケーションMIXを自社戦略へ落とし込むための3つのポイントは次の通り。
①リアル×デジタルコミュニケーション戦略の設計
②顧客コミュニケーションプロセスの可視化
③コミュニケーションMIXのマネジメント

 

①リアル×デジタルコミュニケーション戦略の設計については、リアル×デジタル×時間軸を適切に組み合わせ、顧客エンゲージメント(企業と顧客の信頼関係)を高める設計をしていく。

 

②顧客コミュニケーションプロセスの可視化については、さまざまなカスタマージャーニーを体系化・プロセス化し、データで効果を検証しながら改善することで、コミュニケーションをより効率的・効果的に行っていく。

 

 

【図表】商品を購入するまでに生じるタッチポイント(BtoC)

 

 

③コミュニケーションMIXのマネジメントについては、各フェーズ(認知段階、興味段階、ファン化)のKPIを策定し、全社に見える化・共有化することでPDCAを回していくことが重要。

 

デジタルとリアルを融合させたコミュニケーションMIXで「新たな顧客コミュニケーションモデル」をデザインし、仕組みをつくり、提供価値を高めて持続的成長拡大へつなげていきましょう。

 

 

 

株式会社タナベ経営執行役員 マーケティングコンサルティング本部長

庄田 順一

販促戦略パートナーとして、顧客創造に向けた“WEBとリアルを融合した集客プロモーション”コンサルティングにより、売り上げ拡大を支援。マーケティングの戦略策定から実行・運営までトータルサポート。