ポイント
お話を伺った人
株式会社土屋ホーム 代表取締役社長 山川浩司氏
ビジネスモデル刷新が喫緊の課題
—— 土屋ホールディングスの業績立て直しに向け、タナベ経営へコンサルティングのご依頼を頂いたのが2018年。そこから、子会社である土屋ホームの収益改善に向け、「デジタルを活用した顧客創造モデル構築」への改革を進めてきました。
山川社長:当時の土屋ホームは、いわば“工務店集合型”の企業。全国に50ある支店・営業所のトップが支店経営を任されている状態で、統率の難しい組織体制、アナログな仕事の進め方、職人不足など諸々の課題がある中、「デジタルを活用しながら、ビジネスモデル一新・組織改革を進めなければ、今後の持続的な成長は難しい」という危機感がありました。
—— 特に「営業のデジタル化」を意識されたきっかけはあったのでしょうか。
山川社長:タナベ経営の方との面談で、「アメリカではスマホで買いたい車を決める時代。実際、アメリカの大手自動車販売会社は、今やデジタルで顧客情報を集め、ホームページで差別化を図り、顧客は意思決定のために店舗に行く。日本の住宅業界も必ずそうなる」と言われたときは衝撃的でしたね。一刻も早く、集客のデジタル化を確立させなければ、と思いました。
2020年6月にオープンした「札幌北24条モデルハウス」。50年の経験で培ったノウハウをベースに、「世界で一つ、あなただけの家」を実現
デジタル集客を加速させた3つの取り組み
—— デジタルを使った集客に向けて、どのようなことに取り組んだのでしょうか。
山川社長:具体的には3つの取り組みの成果が大きいと言えます。
1つ目は、自社サイトやSNS広告などを使いウェブでの集客に取り組んだこと。自社サイト内にリード顧客獲得のためのランディングページを作成したり、 FacebookやLINEへ広告を掲載したりして、年4回のデジタル集客の山場を設計・実施しました。
2つ目は、自社ポータルサイトを充実させたこと。全物件を対象に、それぞれの土地の情報を周辺情報、 その土地に合うプランの提案と合わせて掲載。家の間取り、住宅の性能や、他社と差別化になる情報も紐づけて紹介していきました。 写真にもこだわり、情報量を充実させたことで、リード数は目に見えて増加しました。
3つ目は、全社のブランディングに取り組んだこと。 デジタルで刺さる見せ方になるよう、ビジュアルやネーミングにもこだわりを持つように変革した全社のブランディングが、 デジタル集客にもプラスになったと思います。
また、それまで営業担当者によって営業ツールやアプローチ方法は異なっていたのですが、全社員へiPadを支給し、営業ツールの統一・デジタル化に着手しました。
—— 営業ツールのデジタル化で、どんな効果がありましたか?
山川社長:まず、新人教育で効果がありました。 アナログな個別ツールだと、先輩社員によってそれぞれ違う提案手法になります。 一方、統一されたデジタルツールだと“トップセールスマン”の提案手法を誰でも取り入れやすく、営業スキル向上のスピードや効率が上がります。 トップセールスマンの商談動画を見て学んだ新入社員が、「早くお客様のもとで実践したい」と意欲を高めてくれているのも嬉しい成果です。 デジタルツールを使った提案は顧客にも好評ですし、分厚い資料を持ち歩く必要がなくなり、営業担当者にも喜ばれています。
—— デジタルツールだと、情報のアップデートも随時可能ですよね。 デジタルツールの活用は、社員の方々にスムーズに浸透したのでしょうか。
山川社長:最初に営業DX化を行った札幌地区は20、30代の若手社員が中心であり、抵抗なく受け入れてくれました。年配社員も、デジタル化が数字につながると分かれば受け入れるようになり、今ではデジタル化の取り組みが当たり前になっています。
—— 特に札幌地区を見ると、営業DX前は年間190棟台だった受注棟数が、 DX後は2019年で230棟、2020年はコロナ下にもかかわらず255棟と右肩上がりです。
山川社長:札幌の数字の伸びを見て、他のエリアもこぞって営業DXに取り組んでいます。デジタルを活用した顧客創造モデルの定着に向けて、タナベ経営には札幌地区で1年間しっかりサポートしてもらいました。「マンパワーと根性」に頼りがちだった当社も、 タナベ経営との取り組みで「仕組み化し、計画を立てて進めていく」手法を勉強しながら、仕事の進め方や社員の意識を変革していきました。
デジタルプロモーションが奏功しコロナ禍でも受注増
—— 一連の営業DXの成果はどうだったのでしょうか。
山川社長:印象的だった出来事としては、2020年ゴールデンウィーク(GW)期間中、 札幌エリアの受注状況が前期比20%増へ増加したことです。コロナの影響で、 展示場来場者数は大幅に減少したのですが、そうした状況にもかかわらず実績を残せたのは、 効果的なデジタルプロモーションを打てる状態になっていたから。 特に、デジタル集客を先行して進めている札幌、東北エリアがけん引し、売上に貢献しました。
—— 営業ツールのデジタル化も進めていきました。
山川社長:GWに限らず、それまで年間20~30件だったリード情報が今では月500件程度に増加していますから、 営業DXの取り組みは目に見えて大きな成果を上げています。
営業ツールのデジタル化にも着手。新人教育で効果が出ているほか、顧客や社員からも好評を得ている
DXを加速させ、新たな顧客創造モデル構築へ
—— 土屋ホーム流の営業DX、いわば“札幌モデル”を、2019年は東北エリア、2020年には関東エリアへ水平展開しています。
山川社長:どんなプロモーションが、どんな成果につながった、という情報共有の場として、 2020年から「デジタル集客ミーティング」を隔週で実施しています。デジタルへの投資が遅れ、 プロモーションの意識すら定着していなかったDX前と比べ、 今では現場がデジタル集客への投資を意欲的に行い、顧客からの見え方の重要性を理解している、そんな変化に手ごたえを感じています。
—— 今後の展望や戦略についてお聞かせください。
山川社長:営業のDXに関しては、高速でPDCAを回してブラッシュアップしていきます。一方、今後必要なのが現場や施工のDX。 設計、現場、管理に至るまで、今の仕事を総点検し、社員の仕事を「人間力」や「スキル」が必要な業務へ凝縮する1年にしていきます。
—— 今後も引き続き、土屋ホームの持続的な成長に向けてお手伝いをさせていただければと思います。本日はどうもありがとうございました。
PROFILE
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- 会社名:株式会社土屋ホーム
- URL:https://www.tsuchiyahome.jp/
- 所在地:北海道札幌市北区北9条西3丁目7番地
- 設立:1976年(土屋ホールディングス)
- 従業員数:767名(土屋ホールディングス グループ連結、2020年10月現在)
※ 掲載している内容は2020年12月当時のものです。