帝国データバンク「全国社長年齢分析」※1によれば、2020年の社長の平均年齢は60.1歳。1990年の調査開始以来、初めて60歳を超え、過去最高を更新した。
上場企業社長の平均年齢は58.7歳で、「60代」が43.3%を占める。上場・非上場企業を合わせると、「70代以上」が24.7%で、全体の約4分の1になる。とりわけ、非上場企業において社長の高齢化が顕著であり、事業承継問題は深刻な状況にある。
経営者の引退年齢は、60歳代後半から70歳であり、多くの経営者が引退年齢に差し掛かっている。中小企業庁※2によると、2025年までに6割以上(約245万人)の中小企業・小規模事業者の経営者が70歳を超え、そのうち127万人(日本企業全体の3分の1)の後継者が未定である。
また、帝国データバンクの調査から、現経営者の先代経営者との関係性(就任経緯別)をみると、2020年の事業承継は「同族承継」が34.2%。2018年から8.5ポイント低下しており、急減傾向にある。一方、血縁関係のない役員や従業員などを登用した「内部昇格」は34.1%となり、同族承継のわずか0.1ポイント差に迫った。社外の第三者が就任した「外部招聘」は8.3%で、同じく割合が高まっている。ここから、事業承継の傾向として「親族内承継」から「親族外・第三者承継」へシフトしてきていることが分かる※3。
さらに、昨今は事業承継M&Aの相談も増えている。難しい経営環境の中、後継者不在によるM&A(譲渡)が増加していると考えられる。大企業(安定企業)の傘下に入り、経営と雇用を安定させることは、事業継続に有効な選択肢の1つである。
事業承継と言えば、経営権を創業家が代々継承するスタイルが多かった。ところが近年は、前述したように、社内から内部昇格という形で役員や従業員を社長に登用したり、外部から第三者を招聘したりする「所有と経営の分離」スタイルが増加している。
多様化する事業承継スタイルの中で、自社に最適なスタイルを選択するポイントの1つは、「所有と経営」の関係をどうするかである。所有も経営も、①親族、②役員(従業員)、③第三者の順で納得度が高まるが、さまざまな理由で所有と経営を分離するスタイルが増えている。
※1…帝国データバンク「全国社長年齢分析」(2021年2月5日)
※2…中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」
※3…帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2020年)」(2020年11月)
企業や事業の成長ステージは、①創業期、②成長期(躍進期)、③成熟期(安定期)、④衰退期(事業承継期)、という段階を経て進んでいく。その各過程の中で「転換期・危機時期」がやってくる。そのため、企業や事業のライフサイクルの中で、常にどのような「出口戦略(EXIT)」を講じるかを考える必要がある。企業(事業)のライフサイクルで考える際には、企業の成長ステージに合わせて取るべき選択肢(出口戦略)を変えていく必要がある。(【図表1】)
【図表1】企業(事業)のライフサイクルに合わせた出口戦略