ロードマップとなる「中期経営計画」を考える
※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。
2021年度の各社の業績見通しを聞いてみると、「増収増益」が48.0%と最も多く、次いで「増収減益」「前期並み」がともに17.8%と続く。2020年度はコロナ危機により、多くの企業の経営環境が悪化したが、1年以上経過し、回答企業の約半数は収益回復傾向にある※。
コロナショック、オリンピックの開催延長の影響を受け、6割の企業で「中期経営計画の見直しの実施、もしくは検討している」という結果に※。将来の収益計画が立てづらい中、業績の引き下げや投資の縮小など株価に影響を招くリスクに対し、対策が必須となっている。
M&A、ポートフォリオ、クロスボーダー、DX、SDGs、人材活躍の6つの視点が、未来戦略を策定する上で欠かせない。不透明な経営環境下、未来ビジョンと連動させた中長期経営計画を策定し、バックキャスティングアプローチで長期ビジョンを実現させていくことが大切である。
※タナベ経営「アフターコロナに向けた企業経営の取り組み」の実態調査
株式会社タナベ経営執行役員
ドメインコンサルティング東京本部長
村上 幸一
ベンチャーキャピタルにおいて投資先企業の戦略立案、マーケティング、フィージビリティ・スタディなど多角的な業務を経験。ビジネスモデルイノベーション研究会リーダー。豊富な経験をもとに、マーケティングを軸とした経営戦略の立案、ビジネスモデルの再設計、組織風土改革など、攻守のバランスを重視したコンサルティングを実施。高収益を誇る優秀企業の事例をもとにクライアントを指導している。著書に『ザ・ビジネスモデルイノベーション 成功企業にみる事業革新の流儀』(ダイヤモンド社)がある。
1.経営方針・経営戦略
2.ERP導入の意義
3.DXの取り組み
4.今後の課題
※1…財務や人事・顧客情報など企業の業務をサポートするシステム
※2…優秀な人材・ノウハウ・設備などを1カ所に集約し、目的達成のために効率化・スピードアップを図る組織・役割
株式会社荏原製作所執行役 情報通信統括部長
小和瀬 浩之(こわせ ひろゆき)氏
1986年花王株式会社入社、2004年情報システム部門 グローバルビジネスシンクロナイゼーション部長、2012年情報システム部門統括。2014年株式会社LIXIL執行役員CIO兼情報システム本部長。2018年荏原製作所に入社し、2020年より現職。
自社の特徴はビジネスモデルにある。例えば、①ファブレスによる多数の商品数(1万2000点)、②ブランディング、③バリューチェーンでのポジション、④即時配送サービスなどであり、これらは強みでもある半面、当社の課題でもある。
過去2回にわたり、中期経営計画を策定・実行した。2014-2016年中計は、社員が経営を担う事業基盤の整備、事業戦略の再構築、ステークホルダーの評価向上。2017-2019年中計は成長のための事業戦略、人的資本の強化、収益管理強化、ESGなどを基本施策とした。
中計の成果は多数あるが、従来のビジネスモデル・制度の変革にとどまったことや、社員の意識格差、海外事業の収益性といった課題も見え、過去からの改善ではなく、未来の目標を明示する必要性を実感した。
そこで、社内各組織・取締役会で議論し、2030年を見据えた長期ビジョンを策定。サンゲツグループが「スペースクリエーション企業」となることを掲げた。
※「TCG REVIEW」2021年9月号もあわせてご覧ください
株式会社サンゲツ代表取締役 社長執行役員
安田 正介氏
1973年三菱商事株式会社入社、2004年執行役員機能化学品本部長、2008年常務執行役員中部支社長。2012年株式会社サンゲツ取締役に就任し、2014年代表取締役社長、2016年より現職。
世の中の外部環境が激変する中、どのようにビジョンを構築し、中期経営計画と連動させるかが、すべての企業において課題となっている。
その際、長期ビジョン(10年後)を見据えた上で、中長期経営計画(3カ年×3サイクル)を策定するバックキャスティングのアプローチが欠かせない。
経営のバックボーンストラクチャーとして、まず企業の存在意義とも言える「経営理念」がある。その下に、理念を実現していくための「ミッション」「ビジョン」、それらと連動した「中長期経営計画」「ビジネスモデル」「コーポレートモデル」「ファイナンシャルモデル」を策定し、PDCAを回すことが重要である。(講演はタナベ経営・村上)