リーダーシップの根源は、トップ(部門長)の権限に発しています。部門長のリーダーシップ発揮はトップ権限の代行であり、部門長には指揮権の確立と、部門方針の明確化が求められます。言い換えると、トップの基本路線の実践がリーダーシップ発揮の目的となります。
リーダーシップの基盤は、規律ある社風の確立です。つまり、①ルールの明確化、妥協の可・不可の判断基準、②決めたことを守る・守らせる社風づくりであり、これがないと目標を達成する集団になりません。
リーダーシップの要は、的確な価値判断力です。価値判断の際には「時系列、空間系列、人脈系列分析による正確な現状把握」「方向づけ、実践具体策、優先順位の明示」が欠かせません。
また、リーダーシップ発揮のための達意力の磨き上げに向けて、①相手のレベルに合わせた指示・命令とやる気づくり、②情報の共有化と判断基準の明示、は必須です。
リーダーシップの理想像は、「あうんの呼吸」と「信頼関係」です。部下からの信頼感、人間としての信頼感醸成、実績の積み上げと部下への愛情がベースになります。
タナベコンサルティング「幹部候補生スクール」の大きな目的の1つは「人をつくる人をつくること」。受講者が体得すべきポイントは次の3点です。
1.言われなくとも自ら進んでやる自発性の姿勢
2.問題の本質を見抜く真因分析能力、価値判断力
3.規律、礼式など人としての基本と、人を動かすリーダーシップなどの基本素養
自己啓発の基本は「自知」「自尊」「自制」です。
自知とは、「会社の置かれている状況、会社の理念、方針と自らの果たすべき役割の認識」「自らの人生観、仕事観、自らの目指すものの認識」「姿勢、能力、性格面の解決すべき課題の認識」です。一方、自尊とは「プラス発想」「強みを伸ばす」「自信を持つこと」、自制とは「自己コントロール」「克己心」「時間マネジメント」を指します。
部門経営とは、トップの基本路線に沿って、組織力(チーム力)を発揮して部門業績を上げきることです。
部門経営実践のために、①トップの基本路線の理解と推進、②組織(チーム)を動かすリーダーシップと部下育成、③業績をあげる結果責任を果たしきることが必須となります。
部門経営者(幹部候補生)のなすべき管理の基本は、①トップ方針、自分への期待を理解する(トップ、上司への報・連・相・打、補佐責任)、②部門方針を明確にする(部下のやる気を高める)、③計画をたてる、細分化する(タイムリーなチェック、修正。業績責任)、④組織をつくる、役割分担を明確にする(人物の評価と組み合わせ)、⑤意見を調整する、部門の壁を除く(正しい判断、部下育成責任)、⑥業務の統制(業務の改善・標準化、付加価値創造責任)、の6つです。
部門経営者は、トップからは信任され、同僚からは信愛され(良きライバル)、部下からは信頼されることが要件です。トップに謙虚に掌握される姿勢が補佐道の基本であり、報・連・相・打がその要となります。
部下からの信頼は、トップ方針を熟知した揺るぎない指導理念と人間的魅力、実績を上げきる判断力、実行力から生まれます。一方、同僚には、ともに戦う同志として競い合うパートナーシップが必要です。
部門経営を通じ、業績を上げるための基本ノウハウとして、「知・選・行」があります。
第1ステップとして「知る」、つまり、問題の本質をつかむ現状認識が求められます。そもそも、企業には成長段階に応じた“壁”があります。その壁を破らなければ、成長・発展できません。経営体質の総点検を行い、成長・発展を阻害する問題の本質を探ることが「現状認識」です。
現状認識とは「事実をあるがままにつかむ」調査から出発し、徹底的にかみ砕き、分析して、一言で集約することです。
第2ステップとして「選ぶ」、つまり、意思決定のための価値判断基準の体系化が必要です。企業の業績は日常活動の積み重ねであり、日常活動の「判断基準」が曖昧だと成果は出ません。迷いなく行動に移すための「価値判断基準の体系化」が必要です。
すなわち、「考え方・行動」「目標数値」の基準をつくり、さらには目標必達の「経営羅針盤=ディシジョンボード」として型決めすることです。
第3ステップとして「行動する」、つまり、ねらいを絞って一点突破・全面推進する突破口づくりが求められます。
企業体質改善は、「実行継続の仕組みをいかにつくるか」にかかっています。すなわち、実行の壁をどう破るかです。
突破口づくりとは一点突破、つまり、業績決定ポイントに「ねらい」を定め、これに「重点集中すること」。行動計画を立て、要になるプロセスを型決めし「反復徹底」を図るステップです。
「現状認識=知る」「価値判断基準の体系化=選ぶ」「突破口づくり=行動する」のステップこそが、問題の核心をつき、企業変革の流れをつくる経営ノウハウの基本体系です。
現状認識とは、的確な判断に欠かせない重要な分析作業です。現状認識を行うために、次の3ステップが必要になります。
第1ステップとして、事実を三現主義(現実、現場、現品)に則し、あるがまま、多面的に押さえること。偏りがあったり、根拠の曖昧な情報に振り回されてはいけません。
第2ステップとして、集めた事実を分析すること。「なぜ」を5回繰り返す姿勢、「特性→要因→真因」に迫るプロセスが求められます。
第3ステップとして、本質追求、KFS分析を行うこと。事実を重要順位に整理し、機会要因、脅威要因などのポイントを押さえることが必要です。
部門経営者に必要な分析眼と感覚として、①変化に気づく敏感な感覚、②問題発見能力、③時流を見る能力、④市場動向、お客様を見る眼、⑤ライバルと自社のポジションを見てベンチマークを定める、⑥自社を見る眼、⑦バランス感覚(経営要素、機能、項目、時間)、⑧5つの眼(今、先、内、外、バランスさせる眼)の8つが挙げられます。
「知る」とは、事実の中に潜む真実をつかむことをいいます。「自社が何でつまずくか」「何で伸びるか」「最近大きく変化したポイント」など、企業の成長・発展のための決定的・本質的要因をつかみ、自社の置かれている現状を一言で集約することです。
「知る」基本は、事実をあるがままにつかむことであり、そのためには、現実・現場・現品主義が重要です。事実の押さえ方によって「知る」深さが変わることを念頭に、人材育成・自己研鑽に取り組んでいただきたい。
※本文・図はタナベ経営主催「幹部候補生スクール」のテキストを抜粋して制作しています。