戦略人事機能の強化による人材力強化
講師:タナベ経営 執行役員
HR コンサルティング東京本部長
川島 克也(かわしま かつや)
「デジタル化・コモディティー化」「労働⼈⼝の減少」「顧客・社員・社会の多様化」などを背景に、ヒューマンリソース(HR)領域のDXに注目が集まっています。HRDXの定義は、「データとデジタル技術を活用して組織・人材、風土・文化の変革を行い、企業競争力の強化につなげていくこと」です。
具体的に何を変革するのか。それは「人事領域の意思決定」です。人事領域では「採用」した人材を「配置・異動」し、配置先で活躍できように「能力開発」をし、個人のパフォーマンスに対して「人事評価」を行うなど、さまざまな業務で意思決定をしています。HRDXを実現すれば、その際にミスマッチが起こらないように適切な判断を下しやすくなります。
ポイントとなるのは、自社に蓄積された膨大なデータの有効活用です。本誌で紹介したアッテルやプラスアルファ・コンサルティングのサービスのように、人事情報を活用すれば社員の適性やスキルを「見える化」でき、能力開発、教育研修へとつなげられます。
HRDXが果たす役割として、「適正な意思決定」以外にも「人事業務の効率化」と「エンゲージメント※1の向上」が挙げられます。人事部門の業務の8割はオペレーション業務であり、マンパワーに依存している企業も少なくありません。RPA※2によって自動化すれば省人化によるコストメリットが生まれ、戦略や企画を考える付加価値の高い業務へ集中できる環境も整います。
また、従業員のエンゲージメントが高い組織は、低い組織に比べて「顧客評価」「生産性」「売上高」「収益性」が高いという統計があります。「企業競争力の強化」を実現する施策としてHRDXに取り組むことで、多くの経営課題を明確にする効果が期待できます。
HRDXを推進する上で顕在化される組織・⼈事・⼈材の課題を解決しながら、判断基準を整え、競争力強化のための経営改革を、一緒に進めてまいりましょう。
※1…従業員一人一人が企業・組織に対してロイヤルティーを持ち、ビジョン・方向性や目標に共感して「愛着」を感じている状態
※2…一定のルールに基づいて行われるオペレーション業務について、ソフトウエア型ロボットに手順をプログラミングさせ、人の業務を代替させる技術。