企業経営においては、「先行指標」を重視し、先行管理を行う必要があります。
なぜなら、経営は生き物であり、今日の繁栄が明日を保証しないからです。業績の中身を慎重に分析して、先手を打たなければ、経営は危機にさらされることになります。
例えば、売上高、製品単価は「先行指標」、利益は「同時指標」、資金繰りは「遅行指標」です。売上高が伸びていれば、利益が出て、資金繰りも楽になります。
逆に製品の力が落ちてくると、販売数量が落ち、価格(製品単価)も下がり、利益が落ちます。その結果、資金繰りが苦しくなります。資金繰り(遅行指標)が悪くなって慌てても遅いのです。
タナベ経営が提唱・実践してきた目標必達の先行管理のポイントは、次の3点です。
1. 当期目標を、先行累計目標から確定分を引いた「先行累計目標差額」で捉える。
2. 目標差額を埋めるための当期差額対策を明確にする。
3. 3カ月ごとに先行で手を打つ。
10・20・40・80の倍数モデル戦略とは、次の通りです。
10……1社取引ウエート10%以下のリスク分散
20……ターゲット市場においてシェア20%以上のニッチトップ
40……粗利益率40%以上のブランド力
80……リピート率80%以上のベース業績力
建築物がそうであるように、構造計算を誤れば、弱い揺れの地震であっても建物は崩壊します。耐震性の高い安全な建物を設計するように、「強い事業構造の設計」を行うことが、会社という建物を長く存続させる条件となります。それを「事業構造の倍数戦略」と呼びます。
倍数とは「10」から始まり、「20」「40」「80」と、これらの数値キーワードを事業の構造設計に織り込むことを意味します。4つの倍数を満たす事業モデルで既存事業を再構築することもできるし、倍数の逆算から新しい事業を生み出すこともできるのです。
儲かっているからといって1つの事業だけをやっていると、いずれ経営のバランスを崩すことになります。これを予防し、正しく変化(シフト)する事業戦略が「1T3D(ワンティースリーディー)戦略」です。
「1T」の「T」とは、「テクノロジー(固有技術)」のこと。「3D」の「D」は、「ドメイン(事業領域)」の意味であり、ターゲットとなる事業領域を3つ以上、創造することを意味します。
ある事業でナンバーワンになっても、トップであり続けることは難しいもの。その地位に甘んじることなく「1つの固有技術を駆使して、3つ以上の事業領域を攻略し、リスクを分散しながら、それぞれでの“ナンバーワンブランド”の創造に挑戦すること」が1T3D戦略の本質です。
まず、ターゲットとなるドメインでニッチトップ(隙間でナンバーワン)になります。しかし、主役は必ず交代します。「卵を一つの籠に盛ってはならない」。その現実を直視することから「1T3D戦略」が始まります。結果、新規事業開発へ取り組むコンセプトが生まれるのです。