【図表】テレビメディア広告費とインターネット広告費の比較
自社に適したプロモーションは必ずある
プロモーション活動に対し、初めの一歩を踏み出せていない企業は多い。「やらなければいけない」と認識しながらも、「何をすればいいか分からない」「何から始めればいいか分からない」「同業他社もやっていない」「プロモーションをしなくても売れる業界だった」などの理由から、取り組みあぐねている様子をよく目にする。
例えば、以前は営業パーソンが泥臭く行動して受注を取っていたが、今はうまくいっていないA社。既存顧客へのルート営業に時間が割かれ、営業メンバーの人数も少ない中、新規の顧客開拓を実施できないB社。大手に優秀な人材を取られ、採用活動がうまくいっていないC社などなど——。
いずれも「BtoB業界ではウェブを使ったプロモーションはうまくいかない」「採用プロモーションは本当に効果があるのか」といった固定観念にとらわれて一歩を踏み出す決断ができずにいるようだ。だが、そのままでは“手遅れ”になる可能性がある。
他業界からの新規参入や消費者の生活環境の変化によって市場は著しいスピードで変化しており、それに合わせてプロモーション手法も変わり続けている。電通の調査結果(【図表】)によると、2019年の「テレビメディア広告費」は1兆8612億円(前年比2.7%減)と3年連続で減少しているのに対し、「インターネット広告費」は2兆1048億円(同19.7%増)。6年連続の2桁成長である。多くの人がスマートフォンで情報を検索する時代、広告主にとって閲覧頻度やユーザー数が多いインターネット広告は利点が大きいと言える。
前述の通り、プロモーション手法はターゲット顧客に応じて進化している。だからこそ、流行(トレンド)にアンテナを張りつつ、目的とターゲットに合うプロモーション手法を見つけていく必要がある。
では、どうすれば一歩を踏み出せるのか。難しいことではない。「プロモーションは必要ない」という考えを改め、次の3ステップで準備を進めていくだけだ。
まずはプロモーションの目的を明確にする。そして、目的に合うターゲットを設定。最後はそのターゲットに向けたプロモーション手法を選び、実施していくという流れである。
(1)プロモーションの目的の明確化
「新商品の認知を広げたい」「企業ブランディングのためのPRをしたい」「採用を強化したい」など、各企業の抱えている課題が目的になる。あれも、これもとやりたくなるが、優先順位を付け、目的を絞る方がプロモーションの効果は高まる。
(2)ターゲットの設定
明確化した目的に合わせてターゲットを設定していく。性別・年齢・エリアなどでターゲットを絞ることにより、費用対効果の高いプロモーションを実行できる。
(3)プロモーション手法の決定
目的とターゲットが固まれば、そこに向けて最善の手法を選定する。選択肢を増やすためにも常に最先端のプロモーション手法に目を向け、情報収集のアンテナを張っておく。
プロモーションは未来への投資
冒頭に述べたような現状の企業が多い半面、近年は企業ブランディングや採用活動強化のためにテレビCMなどのプロモーション活動に予算を割くBtoB企業も少なくない。事例として、地域密着型で成長を続けている総合外装業D社の事例を紹介しよう。
D社は地域ナンバーワン企業になるという目標に向けた取り組みとして、以前からプロモーション活動を実施しており、周年記念のタイミングでさらにその活動を強化し、スピードアップさせている。
社名変更、企業ロゴの刷新に始まり、従業員のユニフォームや各種ツール(名刺、封筒、会社案内など)のリニューアルを実施。顧客だけでなく従業員や取引先に向けても、自社が生まれ変わることをPRしていった。
また、「安心して頼れる地域密着企業」というイメージを伝えていくため、テレビCMの動画をアニメーションで制作し、親しみやすさを表現した。
テレビCMと聞くと、多額の費用がかかると思われるだろう。だが、地方でエリアを限定したテレビCMは、驚くほど低コストで実現が可能だ。ラジオも同様である。地方エリアでは、まだまだ4マス媒体の効果が高いと言われており、プロモーションが必要なエリアを絞れば低コストで実現できる。
ウェブプロモーションの費用においても同じことが言える。検索エンジンのファーストビュー(ウェブページを訪問した際にページをスクロールせずに表示される部分)内の広告掲載枠は、利用する人の目に留まる確率が高いため高額だと思われがちだが、商圏を把握し必要なエリアを限定することで、低コストで効果的なプロモーションを実施できる。
テレビやラジオなどのマス媒体を使ったプロモーションを進める目的は、単に認知拡大や売り上げ拡大といったアウター(社外) ブランディングだけではない。従業員のモチベーション向上や採用活動などに良い影響を与えるインナー(社内)ブランディングにも役立つのである。
加えて、D社は「組織として教育体制を整備し、自社だけでなく業界全体の職人を育成して技術を継承することで、業界全体のイメージを変えていきたい」という強い思いを実現するため、未来への投資として採用ページのリニューアルも行った。このような取り組みは、今後の成長につながっていくに違いない。
「何から始めればいいか分からない」「費用がかかる」といったマイナスイメージだけでプロモーション活動を視野に入れないのではなく、まずは3ステップで準備を進め、自社の認知度向上や売り上げ拡大の手段にしていただきたい。