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コンサルティングケース
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コンサルティングケース 2020.06.30

日世:“笑顔の絆”を増やし続けるソフトクリーム業界のリーディングカンパニー

ソフトクリーム市場に特化し、特色あるナンバーワンとして業界をリードする日世。国内唯一の総合メーカーの強みを生かしたワンストップサービスは、顧客から高い支持を集めている。

 

 

日本市場を切り開いたパイオニア

 

日本で初めてソフトクリームが販売されたのは1951年。以降、日本のソフトクリーム市場を切り開いた日世は、約70年にわたりパイオニアとして市場をけん引してきた。

 

現在、同社はソフトクリーム用のコーンカップ、ミックス(原料)、フリーザー(機械)のいずれも国内シェアナンバーワン。それぞれでシェア5割を超える圧倒的な支持を集める背景には、品質への強いこだわりとチャレンジ精神がある。

 

戦後に進駐軍向けの商社として創業した同社は、1951年に米国からコーンカップ、ミックス、フリーザーを輸入販売する事業をスタート。その後、品質向上や低価格化を目指して国内生産に切り替えながら市場拡大に貢献する一方、海外企業との技術提携や独自の研究開発を重ねることでソフトクリームの味と安全性を追求してきた。

 

「ソフトクリームに必要なコーンカップ、ミックス、フリーザーを含め全ての関連商品を提供できることが当社の強み」とマーケティング部企画グループ大阪の課長・池谷勝彦氏が語る通り、国内においてソフトクリームの総合メーカーは同社のみである。原料から機械まで、ソフトクリームを知り尽くすオンリーワンの存在であり、社内に蓄積された知見や技術によって常に業界の先駆けとなる新商品を作り出してきた。

 

 

新たなジャンルを確立したプレミアムソフトクリーム

 

その好例が、2013年に発売された「CREMIA」(クレミア)である。これまでと一線を画すプレミアムな商品を目指して開発されたクレミアは、円錐形のラングドシャの上に生クリームを連想させる濃厚なクリームを搾り出した、美しいフォルムのソフトクリーム。SNSで人気に火が付き、特に20歳代、30歳代の女性を中心に大ヒットにつながった。

 

開発期間は3年間。試作はミックスやコーンカップ、フリーザーを含めて400回以上も繰り返されたという。そのこだわりが実を結び、世界のトップクラスのシェフやパティシエが審査員を務める国際味覚審査機構(iTQi)において、2014年から2019年まで6年連続で優秀味覚賞・最高ランクの三ツ星を獲得。発売から7年たった現在も全国1700店舗以上で販売されるなど人気が続いている。

 

世界が認めるおいしさと美しいフォルム。これだけでヒットの理由としては十分だが、一過性のブームを超えて人気が持続する理由として、マーケティング部企画グループ大阪係長の岩﨑拓人氏が指摘するのは「消費シーンの変化」だ。

 

「ソフトクリームには庶民的なイメージが強くありましたが、その状況は一変したように思います。ソフトクリームもスイーツの一つとして、デパートの催事関係でも扱われるようになりました」(岩﨑氏)。高級ソフトクリームの一つとしてではなく、それを超える特別なスイーツとして新たなジャンルを開拓したことが、根強い人気につながっていると言えよう。

 

 

※ミックスのみの数字

 

 

日世キャラクターのニックン&セイチャン

 

 

 

 

 

 

 

 

ソフトクリーム販売をトータルサポート

 

総合メーカーという強みは開発力に表れるほか、店舗を支援するサポート体制にも発揮されている。

 

日世では、ニーズと販売スタイルに合ったコーンカップやミックス、フリーザーを提案するコンサルティング、それら商品の提供、衛生管理、アフターメンテナンスまでを一貫してサポートしている。ワンストップで提供できるのは総合メーカーだからこそだ。

 

加えて、店舗向けのオリジナルのメニュー開発やプロモーション用の販促ツールの製作など、店舗をより魅力的にするサポートにも積極的に取り組んでいる。

 

「小規模な店舗では、なかなかプロモーションまで手が回りません。そうしたユーザーをサポートするため、社内に販促ツールの製作部門を置き、店名や商品名、ロゴなどを入れたポスターやPOPを1枚から作成しています。さらに、店舗の販売支援を目的とするキャンペーンも定期的に実施しています」(池谷氏)

 

例えば、毎年夏に開催する「ソフトクリームまつり」もキャンペーンの一つ。約10年前から展開する「スマイル・ソフト・プロジェクト」の一環として実施されており、公式キャラクターである「ニックン&セイチャン」を入れたノベルティーを同社が製作し、全国のソフトクリーム販売店を通してソフトクリームの購入客に配布している。

 

「キャンペーン中はノベルティーをお客さまに直接手渡しするため、『お客さまとの絆が深まる』『お客さまの笑顔が見られてうれしい』など販売店さまから大変好評です。ただ、景品表示法やノベルティーにかけられる予算の制限もあり、良いグッズを作るのに毎回苦労しています」と岩﨑氏。

 

これまでクリアファイルやプラスチック製のうちわ、ハンドタオルなど、さまざまなグッズを製作してきたが、3年前から、洋食器・金物で有名な新潟・燕三条製のスプーンを連続して採用している。その橋渡しとなったのがタナベ経営だ。

 

「製作したグッズの中で、スプーンには圧倒的に高い評価が寄せられています。これだけ高品質のノベルティーを提供できるのも、タナベ経営の豊富な経験と幅広いパイプのおかげです」と池谷氏。一見、何の変哲もない小さなスプーンだが、子どもの使用を想定してスプーンの角を削ったり、キャラクターの絵柄が鮮明に出るように0.1mm単位の細かい調整をしたりと、職人の情熱と技が詰め込まれている。

 

「ノベルティーをお願いした企業を訪問して職人さんともお話をさせていただきました。その際、ノベルティーであっても使う人のことやシチュエーションを考えていろいろな工夫をされていると知り、燕三条というブランドが広く知れ渡っている理由に触れた気がしました。そのように作られたスプーンを毎日の生活で使っていただく中でニックン&セイチャンのキャラクターが浸透し、ブランディングにつながることを期待しています」(岩﨑氏)

 

 

※「いっしょに食べることで、こころがとけあい絆が深まる」。そんなソフトクリームを通じて、笑顔の絆を全国に広げるための活動

 

 

 

 

日世 マーケティング部 企画グループ大阪
課長 池谷 勝彦氏

 

 

日本、そして世界で笑顔の絆を増やしていく

 

ソフトクリームが日本に紹介されてから約70年。今ではおいしいソフトクリームが多様な場所で手軽に楽しめるようなった。そうしたソフトクリーム文化を先頭に立って広げてきたのが、パイオニアである日世だ。

 

ただ、少子高齢化が急速に進む中、今後の展望については「シェアの拡大を目指すだけでなく、リーディングカンパニーとして市場そのものを広げる努力が欠かせない」と岩﨑氏。

 

「ソフトクリームは広い世代に親しまれていますし、栄養価が非常に高いことが特長。例えば高齢者向けの施設など、これまでとは違う場所・目的で導入される可能性は十分にあると思います。また、国内についてはインバウンドへの対応も重要ですから、海外におけるSNSやウェブ広告の活用、テレビやラジオを通したPRなどにも力を入れていきたいと考えています」と新たな挑戦に意欲を示す。

 

また、国内市場とともに開拓を進めるのが世界市場だ。同社が中国に進出したのは2009年。すでにコーンカップ、ミックス、フリーザーの工場がそれぞれ稼働しており、現地での安定生産・安定販売の段階に入っている。さらに、2018年には日世ベトナムを設立しており、「ベトナムを拠点に東南アジア諸国に向けてソフトクリーム市場を広げていけるよう取り組んでいきます」と池谷氏は語る。

 

同社の企業理念は「ソフトコミュニケーションで世界を結ぶ日世」。その実現に向けて、おいしいソフトクリームを追求し、これからも日本、そして海外で笑顔を増やし続けていく。

 

 

紅白のコーンカップ、北海道あずき味など、日本らしさを表現した「和のソフトクリーム」(左)/販売店・消費者から好評な燕三条製のスプーン(右上)/中央左から池谷氏、岩﨑氏(右下)

 

 

日世 マーケティング部 企画グループ大阪
係長 岩﨑 拓人氏

 

 

PROFILE

  • 日世(株)
  • 所在地:大阪府茨木市宇野辺1-1-47
  • 創立 : 1947年
  • 代表者:代表取締役社長 岡山 宏
  • 売上高:379億7200万円(2018年12月期)
  • 従業員数:814名(2020年1月現在)

 


 

日世が実施する毎夏のキャンペーン「ソフトクリームまつり」は、抽選ではなく、あえて購入者全員へノベルティーを配布する形式にこだわりを持つ。そこには、日頃から日世商品を取り扱う小売店が消費者と接点を持ち、絆を深められるように、という願いが込められている。

 

また、各店舗のPOP製作など、地域に根付いたプロモーション活動にも積極的に取り組んでいる同社。ソフトクリーム業界のトップ企業として、業界全体の活性化を目指して活動する同社の今後の活躍に注目していきたい。

 

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