「SDGs」に言及した株式時価総額上位100社
39社(2016年)→68社(2017年)へ大幅増
企業の間で、「SDGs(エスディージーズ/持続可能な開発目標)」達成に向けた貢献活動をブランディングに取り入れる動きが広がっている。SDGs※1とは、2015年に国連加盟国193カ国が全会一致で採択した、「誰一人取り残さない」世界の実現に向けた国際目標(期限:2030年)。貧困の根絶や環境保護、技術革新、生物多様性、ジェンダーなど17項目の開発目標(【図表1】)と、その具体的目標となる169のターゲットがある。
※1 Sustainable Development Goalsの略称
CSR(企業の社会的責任)報告書の企画・制作や支援サービスを行うクレアン(東京都港区)によると、株式時価総額上位100社のうち、2017年に開示したCSR情報の中でSDGsについて言及した企業が約7割(68%)を占め、2016年(39%)に比べ大幅に増えたという。(【図表2】)
【図表2】SDGsのCSR情報開示(総合報告書含む)状況(2017年)
また、地球環境戦略研究機関(IGES)とグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)が発表した調査によると、国内大手企業163社(団体を含む)の経営陣のSDGsに対する認知度が2017年度で36%となり、前回調査(2016年度)の28%から8ポイント上昇した。(【図表3】)
【図表3】組織におけるSDGs認知度(複数回答)
近年、SDGsへの取り組みを宣言する企業が増えた背景に、「ESG投資」が株式市場で注目されていることが挙げられる。ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字。省エネ対策や温室効果ガス削減の取り組み、ダイバーシティーやワーク・ライフ・バランスへの配慮、ステークホルダー(利害関係者)への情報開示や利益還元充実などに積極的な企業は投資家から高く評価される。ESG投資の全世界の運用額は2500兆円を超え、総投資の4分の1を占める規模に拡大しているとされる※2。
※2 IGES/GCNJ「未来につなげるSDGsとビジネス?~日本における企業の取組み現場から~」
さらに、企業に対して社会的課題の解決を求める世論の高まりがある。損保ジャパン日本興亜が行った調査結果(1106人が回答)によると、社会的課題の解決で期待するセクター(部門)として、「政府・行政」(74.6%)に次いで「企業」(50.1%)を挙げる人が多かった。(【図表4】)
【図表4】SDGs達成や国内外の社会的課題の解決に向けて主に誰が行動すべきと思うか(複数回答)
なお、電通の調査によると、日本人のSDGs認知率は14.8%。世界20カ国・地域の平均値(51.6%)より著しく低い。ただ、日本のSDGs認知者は「SDGsを取り入れている企業には信頼感・好感を持ちやすい」「SDGsに関係あるような企業の商品やサービスを選んでいる」と考えている人が多い(【図表5】)。SDGs認知者は情報感度が高く、新しい商品を積極的に取り入れる傾向が見られるという。
【図表5】 SDGsへの考え方 (複数回答)
SDGsは大きなビジネスチャンスが開拓できると期待されている。2017年の世界経済フォーラム(ダボス会議)では、「国連のSDGsが2030年までに達成されれば、少なくとも12兆ドルの経済価値、最大3億8000万人の雇用が創出される可能性がある」と報告されている。
日本政府も2016年、安倍首相を本部長、全閣僚を構成員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置し、SDGsへの取り組みを企業に促している。同本部は「SDGs実施指針」の中で、企業に対し社会貢献活動の一環として取り組むだけでなく、SDGsを自らの本業に取り込み、ビジネスを通じて社会的課題の解決に貢献する「SDGsの本業化」を推奨している。
中堅・中小企業においても、経営戦略にSDGsを組み入れることで、自社の存在価値向上や新たな事業創造につながるほか、SDGsに積極的な大手企業から受注しやすくなる側面がある。SDGsは大手企業だけの取り組みではないことを留意する必要があるだろう。