メインビジュアルの画像
コンサルティングメソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2018.01.31

販売促進の出発点:熊代 一毅

 

まずは強みを洗い出す

販売促進を行う時、自社ではまず何を検討し、どこに着目するだろうか。さまざまな販促手法、ツールや媒体、予算、誰を担当にするか……。考え出すと多くのことを決めなければいけないことに気付き、優先順位を見失うこともあるかもしれない。

ところで、自社は独自の強みや価値を明確にできているだろうか。タナベ経営では販促活動を支援する際、まずクライアントの「強み」を見つけることを必ず行っている。今は同じような製品・商品やサービスがあふれており、かつ各種SNS、まとめサイトや比較サイトなど、さまざまなメディアにおいても情報が充満している。数年前と比べるとずっと簡単にライバル社や競合製品と比較、検討ができるようになった。

そのため、例えばホームページを訪れたユーザーに対して、「自社はライバル社と何が違うのか」「何が売りなのか」「それはどうしてなのか」「どう違うのか」、すなわち、自社の明確な強みをしっかりと打ち出していく必要が出てくる。自社の強みを明確にすること。これが販売促進の出発点となる。

それでは、強みと弱みをどのように明確化させればよいのだろうか。次にそのステップを紹介する。

201802_review2_01
 

Step1 自社分析による強みの発見

まず、「自社の強みは何か?」を、ゼロベースで考えてみる。普段からリーフレットやカタログの制作、ホームページへの商品・サービスの掲載、セールス現場でのプレゼンテーション口述などを通じ、それぞれが何らかの自社の強みを認識していることだろう。しかし、それは「他の会社にも当てはまる」内容ではないだろうか。

また、思い込みのあまり、自社で認識している強みが、本当の強みではないこともある。私がそのような場面に遭遇したときは、「なぜそれが強みなのだと思いますか?」「他にはありませんか?」「その強みによってメリットを享受できているユーザーはどのような方ですか?」など、さらに深くヒアリングを重ね、本当の強みを見つけ出していく。

このようにヒアリングを重ねていくと、顧客自身も認識していなかった強みに気付くという場面が数多くある。

 

 

Step2 ライバルとの比較

自社のどこが強みなのか、弱みなのかを知るには、やはり「何か」と比較する必要が出てくる。つまり、自社と同じ製品商品やサービスを取り扱うライバル社と比較するのである。

ユーザーの立場になって考えてみる。ユーザーは、自社と同じような製品・商品やサービスを扱う他の会社と比較検討した上で、どちらを購入・契約するかを判断する。それならば、自社の強みも競合他社との比較で考えればよい。他社の情報であれば、こちらも客観的な視点で見ることができるため、より正確に自社を把握できるのだ。

「ライバル社と比較することなど当たり前だ」との声も当然ある。では、現在、どのくらいライバル社の製品・商品やサービスを理解しているだろうか。どのくらい情報を入手できているだろうか。ライバル社も経営努力を重ねており、常に状況は変化している。一昔前の情報で自社と比較していたのでは正確な分析はできない。いま把握している情報は、ライバル社の最新状況を正確に捉えたものなのかどうかがポイントとなる。

ライバル社の調査を継続して行っておらず、現在入手している情報は陳腐化しているのではないか、と気付いたならば、すぐにでもライバル分析に取り組んでいただきたい。

 

 

Step3 比較の視点

ライバル社の情報の活用において留意すべき点は、「自社の視点で比較しない」ことである。自社の製品・商品やサービスを使用するのは、あくまでも消費者(顧客)である。自社の視点、売る側の視点で比較すると、どうしてもひいき目に見てしまうのが人間の心理である。どんなに思いが強くとも、それを使用する側である消費者(顧客)が強みと認識していなければ意味がない。

大事なのは客観的視点、第三者の視点である。買う側の視点がなければ、どれだけ時間をかけて分析しても価値はない。また、今後の方向性にズレを生む大きな要因ともなる。

 

 

Step4 ユーザーに聞いてみる

客観的に見ることが難しければ、素直にユーザーに聞いてみるのも1つである。自社の強みを一番よく知るのは誰か。それはズバリ、ユーザーである。ユーザーは常に自社の良い点、悪い点を見ている。いろいろな競合他社がいる中、自社の製品・商品やサービスを選んでいる。他社にはないメリットをそこに感じたから選んだのである。

「営業担当者とウマが合う」「場所が近い」など、ユーザーが感じるメリットはさまざまあるかもしれないが、それが自社を選んだ理由だとすれば、立派な強みとなる。

難しく考えなくてもよい。実は、ユーザーはもっと簡単なことについて自社の強みを感じているのかもしれない。客観的な強みに自分たちが気付いていないとしたら、何とももったいない話である。

販促に課題を感じている人は、もしかすると、自分でも気付いていないうちに的外れな強みを打ち出している可能性がある。「私たち(の商品)を選んでいただいたのはなぜですか?」。一度、既存のユーザーの声に耳を傾けてみてはいかがだろうか。
 

 

Step5 弱みの理解

弱みを正確につかむことは意外と難しい。人間はそもそもマイナス思考が強いといわれる。また、日本人は謙虚な姿勢を好む傾向が強い。弱みを挙げようとすると、どんどん思い浮かんできてしまう。

大切なのは「弱みを生み出すものは何か」を知ることである。強みがあれば弱みもあり、強みを前面に出そうとすればするほど、弱みが鮮明になっていく。すなわち、弱みというのは必ずしも悪いものではないともいえる。弱みを把握すればするほど、「気付いていなかった強みを発見する」機会ともなる。

自社の真の強みに気付かず、表面的な強みだけを打ち出しているならば、比較検討される前に競合他社に負けてしまうだろう。「彼(敵)を知り、己を知れば百戦殆あやうからず」。強みと弱みの把握は、勝つために極めて重要である。

現在の「自社の強み」はなぜ、強みといえるのか。客観的な視点と、「強みの裏側にあるのが弱み」との認識を欠くことなく、いま一度正確な強みの把握を試みていただきたい。

 

PROFILE
著者画像
熊代 一毅
Kazuki Kumashiro
タナベ経営入社後、SPコンサルティング本部にて、主にコンシューマー向け商品の販促プロモーション支援や販促商品の企画など、SP(セールスプロモーション)コンサルタントとして多くの企業をサポート。現在はその経験を生かし、コンサルタントとして販促手法の活用を軸とした営業支援を中心に活躍中。