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研究リポート
ビジネスモデルイノベーション研究会
秀逸なビジネスモデルを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供しております。ノーボーダー時代に持続的成長を実現するためのヒントを学びます。
研究リポート 2017.12.26

米国視察2017リポート 第1回 ビジネスモデルイノベーション研究会

 

タナベ経営「ビジネスモデルイノベーション研究会」では、2017年9月18日~23日にかけ、最先端ビジネスモデルを生み出す街・シリコンバレー&サンフランシスコを視察。現地企業やスタンフォード大の講演などに触れ、イノベーションを持続する大きな仕組みを学んだ。

 

 

ビジネスモデルイノベーション研究会の使命と進化

2014年2月、タナベ経営は「卸流通ビジネスモデル革新研究会」を立ち上げた。高付加価値化で成功を収めている卸流通企業の経営者・経営幹部の方々に講話いただくだけでなく、実際にその企業のオフィスや店舗、物流施設などへ足を運び、臨場感の伴った学びを得ることを目的とした研究会だ。

 

ところが、研究を進めるうちに高収益を上げている卸売企業のほとんどが、卸売業の境界(ボーダー)を超えてビジネスを展開していることが明らかになったのである。例えば、自社ブランドを創り、メーカー機能を持って川上に進出している企業や、逆に小売店舗の展開やWeb通販サイトの開設で直接消費者に販売し、川下へ進出している企業などだ。業種や業界の境界を超えることがイノベーションに結び付くことを、研究会のメンバーはあらためて実感した。

 

その後、研究会のタイトルから「卸流通」を外し、業種や業界にとらわれることなくビジネスモデルを研究することを目的とし、2016年から「ビジネスモデルイノベーション研究会」として再スタートした。その流れの中、さまざまな企業を訪問し、多種多様なビジネスモデルを学ぶ研究会として進化した。

 

そして、この研究会をさらに進化させるためには、業種業界だけでなく国境も越えて海外から学ぶことが必要であった。特に、最先端のテクノロジーを生み出し、多くのビジネスモデルを創出、イノベーションを起こして世界を変えていく米国シリコンバレーの視察訪問は、ビジネスモデルイノベーション研究会にとって、ウォント(Want)というよりマスト(Must)ともいえるミッション(使命)でもあった。

 

 

シリコンバレーの成り立ちと概況
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世界経済のリーダーが米国であることは既知の事実だが、その米国でシリコンバレーを擁するカリフォルニア州は50州中、断トツの経済力を誇り、米国GDPの約14%を占めていることは日本であまり知られていない。同州のGSP(州内総生産)を国別GDPに当てはめると、フランスを抜いて世界第6位に相当する経済力である(2015年)。カリフォルニア州には、ロサンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコという大都市が存在していることもあるが、シリコンバレーがこの経済力に寄与していることは明らかだろう。

 

ちなみに、「シリコンバレー」という正式な行政区分は存在せず、公式な名称でもない。サンフランシスコ・ベイエリアの南部に位置するサンノゼを中心とした広範なエリアの俗称である。グーグルやアップル、ヤフー、アドビシステムズ、イーベイ、フェイスブック、エヌビディア、テスラなど世界を動かすイノベーター企業が創業した地域、まさにイノベーションの聖地ともいうべきエリアなのだ。

 

もともとは農業が主要産業だったこの地域に、シリコンバレーとしての輝かしい歴史をスタートさせた立役者がヒューレット・パッカードだ。スタンフォード大学でウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードが出会い、共同で起業。一大コンピューター企業に育て上げた。創業場所となったガレージはカリフォルニア州の歴史的建造物に指定され、「シリコンバレー発祥の地」という記念碑が立っている。

 

トランジスタの発明者の1人であるウィリアム・ショックレーが半導体研究所を設立したのをきっかけに、半導体産業をけん引するインテルや、テキサス・インスツルメンツなどの源流ともなっていく。こうして半導体の材料となるシリコンがこの地域の名称として使われるようになった。この歴史を物語るようにグーグル本社の近くには、コンピューター歴史博物館も建てられている。

 

その後、日本勢による半導体市場のシェア拡大やハードウエアであるコンピューターのコモディティー化などの流れの中で、グーグルやフェイスブックなどのソフトウエア企業が興隆していき、現在に至っている。シリコンバレーの中心地であるサンノゼ市の人口は約100万人とサンフランシスコを超えて発展している。

 

近年は、あえてサンノゼエリア周辺から離れ、都市で便利なサンフランシスコで起業しているベンチャー企業も多く、ツイッターやセールスフォースドットコム、ドロップボックスなどもサンフランシスコに本社を構えている。このことから、サンフランシスコも含めた広範なエリアをシリコンバレーと認識するケースも増えている。

 

 

シリコンバレー&サンフランシスコ視察ツアー

今回の視察ツアーは、4泊6日の日程で、テクノロジーを生み出す大学からベンチャー企業を支援するインキュベーション組織、スタートアップ企業、経済基盤を整える行政機関、最新の流通施設まで、多岐にわたる場所を訪問し、さまざまな視点から関係者の話を伺った。

 

到着した翌日は、シリコンバレー興隆の源流ともいうべきスタンフォード大学を訪問し、Jaclyn Selby教授から講義を受けた後、スタートアップ企業を支援するプラグ・アンド・プレイ・テクノロジーセンターにて、世界各国の大企業と連携しながら企業をインキュベートする取り組みを紹介してもらった。ここからペイパルやドロップボックスといった有名なユニコーン企業が輩出されている。

 

3日目は、そのプラグ・アンド・プレイ・テクノロジーセンターにて、Instapioというビッグデータをビジネスとするスタートアップ企業のCEO Sena Zorlu氏に講義していただき、シリコンバレーにおけるアントレプレナーシップを感じることができた。午後は、サンノゼ市経済産業局のマネジャーJoe Hedges氏に、飛躍的な発展を続けるサンノゼの行政としての取り組みを聞いた。

 

最終日となる4日目は、サンフランシスコ市内にて、流通施設を中心に視察を行った。ウエストフィールドショッピングセンターから顧客対応でエピソードが数多くある百貨店のノードストローム、アマゾン傘下となって話題を集めたホールフーズ・マーケット、「好きなスーパーマーケット・チェーン」全米2位にランクインしたこともあるトレーダー・ジョーズなど数多くの場所を視察訪問し、流通業界の潮流を学んだ。

 

この他、先述のヒューレット・パッカードガレージやグーグルの本社(Googleplex)、アップルのビジターズセンターや建設中の新社屋、インテルミュージアムなどシリコンバレーらしい多くの場所を訪れた。

 

参加者全員が新たな学びと刺激を受けた非常に内容の濃い素晴らしい視察ツアーとなった。次回より、それぞれの詳しい内容を紹介していきたい。

 

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サンフランシスコ名物の坂(上)
スタンフォード大学(中)
セルビー教授の講義(下)

 

PROFILE
著者画像
村上 幸一
Koichi Murakami
タナベ経営 コンサルティング戦略本部 東京本部 副本部長 ビジネスモデルイノベーション研究会 リーダー。ベンチャーキャピタルにおいて投資先企業の戦略立案・マーケティング・フィージビリティースタディーなど多角的な業務を経験。タナベ経営に入社後も豊富な経験をもとに、マーケティングを軸とした経営戦略の立案、ビジネスモデルの再設計、組織風土改革など、攻守のバランスを重視したコンサルティングを実施。高収益を誇る優秀企業の事例をもとにクライアントを指導している。