100年経営対談
2017.04.27
地域密着の“グローカルモデル戦略”で沖縄の流通ビジネスを牽引 リウボウホールディングス 代表取締役会長 糸数 剛一氏
リウボウ本社にて。代表取締役会長 糸数 剛一氏 (左)と、タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(右)
グループ売上高1000億円、従業員1000名。沖縄という限られた市場で百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアを主軸に事業を展開するリウボウグループ。観光ツーリズムや海外市場を取り込む沖縄経済と共に流通サービスビジネスを拡大してきた。一層の成長と競争激化が予想される中、グループのビジョンを代表取締役会長の糸数剛一氏に伺った。
最高に幸せを感じられる百貨店づくりに挑む
若松 那覇市の一等地に立つ沖縄唯一の百貨店リウボウも、店内を拝見するとだいぶ様変わりしました。
糸数 今まで県内になかった新しいテナントの誘致に力を入れています。沖縄に拠点を持つと多大な物流費がかかりますが、沖縄経済の好調さと今後の伸びしろを話し、実際に市場を視察してもらうと進出を決定してくれるケースが増えました。沖縄への情報発信源は東京なので、沖縄の人が欲するのは、東京の商品。それがリウボウで買えるようになったので「東京に行くことが少なくなった」という声をよく聞きます。
これはゴールではなく、激しい戦いの前の「ステップ1」のようなものです。今後は大型の商業施設が次々にオープンし、顧客の争奪戦は激化の一途をたどります。それを勝ち抜くためには、百貨店業態はコンビニ以上の独自性が必要になります。着目すべきは、年間六百数十万人に達する日本人観光客の多くがリウボウに来店しないこと。彼らは伊勢丹や高島屋、大丸など何でもそろう大型百貨店を知っているから、沖縄の百貨店には興味がないわけです。売り場自体はこれ以上広げられないので、規模の勝負はできませんから、沖縄に行ったら必ず寄りたくなるような「リウボウにしか置いていなくて、国内からの観光客がすごく気に入る商品」をそろえたいと考えています。沖縄産の商品に限る必要は全くありません。2018年、2019年を中心に大改装を行い、それに伴うテナントの入れ替えでどれだけの独自性が出せるかが、ポイントの1つです。
さらに、顧客が百貨店に求めるのは「癒されるような居心地のよさ」と「わくわく感」に満ちた、幸せを感じられる雰囲気です。東京ディズニーランドもユニバーサル・スタジオ・ジャパンも同様の雰囲気を醸し出すことで、売上高の半分を占めるほどの物販と飲食の収入へつなげています。このような魅力的な空間づくりの提案をさまざまな業界の企業に呼び掛けており、優れたアイデアはリウボウが投資して実現させる計画です。
若松 業態という言葉は後付けの言葉であり、「何をどのような場で提供するか」ということに小売業の使命があります。旧態依然とした観のある百貨店業界も、果敢にチャレンジしなければならない節目に来ています。リウボウも速やかに次のステージに進まねばならない。着目すべきは、「モノ余りのコト不足」の現代は、コトを充足させることがモノの売り上げにつながるということです。
糸数 沖縄の強みは“チャンプルー”(ごちゃ混ぜ)。ウチナームン(沖縄のモノ)を育てながら、本土のモノや世界のモノと一緒にしてごちゃ混ぜにするのが沖縄流ともいえます。したたかに世界中を駆け巡り、素晴らしいものを仕入れてくる。東京にもないユニークなものはWeb 上で紹介して、「沖縄に来たらリウボウに必ず寄る」というムーブメントを作る。そのような方向に持っていきたいと思います。
ハイブリッドなチーム力で組織を変革
若松 革新的な百貨店づくりを推し進めるための組織はどのような状況ですか。
糸数 組織の変革に着手したところです。何十年も百貨店に勤めてきたベテラン社員は、「そんなに変えては百貨店ではなくなってしまう」と躊躇していたと思います。そこで既存の業務を3年かけて転換する手法を取りました。業務を「磨く仕事」と「変える仕事」に分け、ベテラン社員には「磨く仕事」をお願いし、若手、中堅社員には「変える仕事」をお願いしました。
ただ、私はリウボウグループ全体をマネジメントしなくてはならないため、百貨店業務だけに専念することはできません。組織変革のスピードアップを図るために、多様な経歴を持った中堅社員の中途採用を始めました。沖縄在住にこだわらず、米国で暮らす人とも雇用契約を結んでいます。今後は雇用形態を「ミッションを掲げて達成できれば、他に仕事をしても構わない」という方向にしたいと考えています。
若松 チームの作り方も雇用スタイルも従来とは違う体制にして、戦略変化のスピードを上げる。まさにハイブリッドな組織ですね。
また、会社のグローバル化とは必ずしも海外への進出や出店だけではなく、国内、組織内にグローバルな要素を取り込むことでもあります。観光が活況な沖縄だからこそできる戦略です。その意味でリウボウグループは、グローバルとローカルをうまく融合させた「グローカルモデル戦略」を取っていると言えますね。
最後にリウボウグループの今後のビジョンをお聞かせください。
糸数 既存のビジネスに縛られず、柔軟な発想、多様な能力や考え方を持った社員がぶつかり合いながらも、「働いていて楽しい」という気分で専門性を深め、発揮できる環境を醸成したいと思います。その中で、従来の物販からの脱却を引率するような人材やチームに育ってもらいたいですね。結果、沖縄をもっともっと元気にしたいと考えています。
若松 流通ビジネスは「人」で経営している代表的なビジネスですから、人材の採用、育成、活躍戦略が基本戦略です。リウボウグループのさらなる発展を祈念いたします。本日はありがとうございました。
リウボウホールディングス 代表取締役会長 糸数 剛一(いとかず・ごういち)氏(右)
1959年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、沖縄銀行、自身での起業を経て1988年に沖縄ファミリーマート入社。1998年に取締役営業部長などを歴任する中、さまざまなヒット企画を放ち同社を県内シェアナンバーワンに導く。2007年から2009年にかけてファミリーマートに出向し、同社米国法人の社長兼CEOに就任。2010年に沖縄へ戻り沖縄ファミリーマートの代表取締役社長に就任。2013年にリウボウホールディングスの代表取締役社長、2016年から会長を務める。
タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(わかまつ・たかひこ)(左)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000 社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院 (経営学修士)修了。1989 年タナベ経営入社、2009 年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100 年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。
PROFILE
- ㈱リウボウホールディングス
- 所在地 : 〒900-8503 沖縄県那覇市久茂地1-1-1
- TEL : 098-867-1171(デパートリウボウ)
- 設立 : 1990年
- 資本金 : 34億5000万円
- 従業員数 : 約1000名(2017年3月現在)
- 事業内容 : 百貨店・スーパーマーケット・コンビニエンスストアの運営、不動産賃貸業、一般旅行業、化粧品卸売、総菜商品の企画・開発・販売など