滋賀県大津市にあるオプテックスグループ本社のエントランス前にて。
タナベ経営 代表取締役社長 若松 孝彦(左)と、オプテックスグループ 代表取締役会長兼CEO 小林 徹氏(右)
卓越したセンシング技術(必要なものだけを検知する技術)をコアコンピタンスとするオプテックスグループは、防犯・自動ドアセンサーで世界をリードする開発型企業だ。同社は世界15カ国に拠点を構え、グループ会社29社を展開。約80カ国に製品・サービスを供給している。ROE(自己資本当期純利益率)8.7%、自己資本比率78%(いずれも2015年12月期連結決算)という健全経営を実現する同社の経営方針について、代表取締役会長兼CEOの小林徹氏に伺った。
鳥の目と蟻(あり)の目でニッチトップ企業へ
若松 現在は、センシング技術を生かしてセキュリティー、自動ドア、FA(ファクトリーオートメーション)という3本柱を中心に事業を展開されています。タナベ経営では「1T3D戦略」と呼び、1つの技術で3つのドメイン(事業領域)を攻略するナンバーワン戦略として提言しています。
小林 ある大学の先生が冗談で「センサーは千差万別」とおっしゃっていた通り、使う人や用途によってセンサーを変えることが重要です。どのセンサーにも一長一短がありますから。
若松 センサーの特性と目的を掛け算することでバリエーションが広がっていきます。マーケットを細分化して専門性を高めることで商品のラインアップは広がり、総合力が高まります。私たちも「高度の専門化と高度の総合化」を経営理念に掲げています。本来、専門化と総合化の並列は矛盾するもの。しかし、実際の経営においては、この両方が競争力を高める源泉となります。大変共感します。
小林 当社ではこれを「鳥の目と蟻の目」と表現しています。開発においては全体と細部、この2つの視点を持つことが大事です。私は資金も経営資源もない、“無い無い尽くし”から起業しました。トップシェアを取らない限り事業の継続は難しいので、開発する「もの選び」は特に重要でした。商品の種類やお客さまをセグメントした上で、体力に合ったところを狙う方法は今も同じです。
若松 シェアの観点は重要です。売上高の大きさは市場規模に比例するため、企業本来の競争力は測れません。経験科学上、中堅企業がシェア20%を超えるとトップ企業に近づくと提唱していますが、オプテックスはシェア30%を目標に置かれています。30%までいくとプライスリーダーになれます。シェアが粗利益を決め、その粗利益を確保する上でも値決めは非常に重要です。実際、オプテックスの粗利益率は50%を超えています。
小林 新しいことに挑戦する体力を維持するため、損益分岐点比率70%を基準の1つに置いています。これを意識して、製品の値決めやビジネスモデルの考案を行っています。またトップシェアを取ると、知名度が上がって営業が楽になる。小さくてもいいから、まずはトップシェアを意識したセグメントをつくることが大事だと思います。“千切り経営”と言いますか、物事の原因を細かく突き止めていけば、課題を必ず解決できます。ここは蟻の目でしっかりと見ていくことです。
海外売上高比率70%地域特有のニーズに合わせる
若松 海外においてもトップシェアを獲得されています。売上高に占める海外比率が約7割に上るなど、名実ともにグローバル企業です。
小林 現在は15カ国に営業拠点があり、販売先は約80の国・地域に広がりました。社員の半数は海外の人材です。
若松 事業分野も広がり、かつ海外拠点が増えてくると、海外マーケットでの地域密着戦略とグループ全体としての組織戦略のバランスが大きなポイントになりますね。
小林 現状は自動ドア、セキュリティー、FAというモノづくりの3本柱と、営業面ではEMEA(欧州、中東、アフリカ)と米国、アジア、日本という地域に分けて統括するマトリクス組織です。2017年1月にホールディングス化しましたので、今後は地域や市場を細分化して専門化する一方、持ち株会社であるオプテックスグループを中心に全体最適を目指していきます。
若松 今後は、どのような組織を目指してデザインされていくのですか。
小林 4つの事業会社をさらに分社化していきます。例えば、自動ドアとシャッターなど商品をより細かく分けたり、セキュリティーでは原子力発電所のような高性能を求めるハイエンド用と、家庭用に分けたりするなどです。商品によってニーズや販路が全く異なりますから、事業会社として独立させることで特有のニーズに応えられる体制に変えていきます。また、分社化することで事業会社間の融合もしやすくなると期待しています。昨今、あらゆる技術が出てきています。その流れに対応できる組織に変えていかなければいけません。一方、情報システムや資材の共有化、生産体制の一本化など効率化にもグループ全体で取り組んでいきます。
若松 マーケットに近い部分は子会社化する一方、バックヤードやインフラ的な部分は持ち株会社がコントロールすることで、より開発に集中していくということですね。
その一方で、2015年は英国のガーダソフトビジョンや京都のシーシーエスを子会社化するなど、M&Aにも積極的に取り組んでいらっしゃいます。ただ、これらはもともと別の企業ですから、社風やカルチャーを共有することがなかなか難しい。裏返せば、「そこを押さえると成功する」という意見もあります。
グループ全体の規模が大きくなる中、小林イズムといいますか、オプテックスの考え方をどのように共有されているのですか。
小林 2016年の夏に一時期中断していたIGBC(インターナショナル・グループ・ビジネス・カンファレンス)を復活させました。国内外のグループ会社の社長や幹部が70人くらい集まって4日間にわたり相互理解を深めるもので、各社が置かれている市場環境や新しい事業開拓について知る良い機会となりました。
若松 IGBCは組織横断的な取り組みであり、次世代の経営者育成といった面でも効果が期待できますね。そこでオプテックススピリットの「夢を持て」「創造せよ」「成長せよ」「自己を確立せよ」「外部を活かせ」「ゆとりを持て」の精神を浸透していくのですね。
- オプテックスグループ 代表取締役会長兼CEO
- 小林徹(こばやし とおる)氏
- 家電メーカー・防犯機器メーカー勤務を経て1979年にオプテックスを設立、代表取締役社長に就任。2017年1月より持ち株会社体制へ移行し、オプテックスグループ代表取締役会長兼CEOに就任。1980年に遠赤外線を用いた自動ドア用センサーを世界で初めて開発し、『世の中のお困りごとを解決し、安全・安心・快適な社会づくりを創造』をキーワードに「社会にないものをつくる」「人のやっていないことをやる」ことを実践している。2004年には藍綬褒章を受賞。
- タナベ経営 代表取締役社長
- 若松孝彦(わかまつ たかひこ)
- タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。
PROFILE
- オプテックスグループ㈱
- 所在地:〒520-0101 滋賀県大津市雄琴5-8-12
- TEL:077-579-8000(代)
- 設立:2017年(旧オプテックス:1979年)
- 資本金:27億9827万円
- 売上高:277億9300万円(連結、2015年12月期)
- 従業員数:1287名(連結、2015年12月末現在)
- 事業内容:各種センサーの製造・販売 http://www.optex.co.jp/group/