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100年経営対談
100年経営対談
成長戦略を実践している経営者、経営理論を展開している有識者など、各界注目の方々とTCG社長・若松が、「100年経営」をテーマに語りつくす対談シリーズです。
100年経営対談 2016.10.31

業界の常識を変革し続ける独創経営 トラスコ中山 中山 哲也氏

 

オープンジャッジで360度評価
アイデア湧かなくなれば社長は交代

 

若松 組織や人に対する制度にもオリジナリティーがありますが、いつごろから積み上げてこられたのですか?

 

中山 古い体質を一朝一夕には変えられない中で、仕組みや設備を先行させつつ、徐々に進めてきました。特に、わだかまりなく働ける職場が大事と考え、2001年にオープンジャッジシステム(OJS)を人事制度へ導入しました。皆の仕事ぶりは皆が見ているのだから、全員に投票させて評価しようと考えたのです。より正確な評価に近づけるには、情報の管理が大事です。誰が誰に対してどう評価したかは、社長でも見ることができません。

 

若松 試行錯誤してこられた故に、さまざまなノウハウをお持ちです。

 

中山 新しい施策を思い付かなくなったら社長交代のときです。もう1つお勧めしたいアイデアが、顔写真入り社員名簿。社員の顔が分からなくては良い会社づくりはできません。社員同士で電話するときに名簿を見る。転勤のときも行く先にどんな社員がいるか分かる。私は出張時に必ず持っていき、それを見て話し掛けます。

 

来年の名簿のコメント欄には、どんなときに人に尊敬の念を抱くか、もしくはガッカリするかという項目を入れたい。名簿といえども、人を動かすきっかけになるものでなければいけません。

 

若松 変化や新しい価値を組織の中に入れるのがトップの役割ということですね。

 

中山 経営者に必要なのは独創力。いかに他人が思い付かないことを考え、やらないことをやるかが成功の鉄則。だから僕は“民主的独裁者”なんです。多数決で出てくる答えはライバルの会社でも同じ。それでは競争に勝てません。

 

若松 タナベ経営ではそれを「衆知独裁」と呼んでいます。衆知を集めて最後は独裁で決める。そうでなければ、社長が経営判断を下すことはできません。

 

ところで、人を評価するときの基準で大事にされていることはありますか。

 

中山 まずはOJSの360度評価で皆に信任されていることが大事です。ある段階では信任されていたけれど、次の段階で不信任ということもあります。そこから先は独創性があるか、人を引っ張っていく力があるかを見ていきます。

 

若松 個性的で多様な能力を持った社員の方が多いのではないでしょうか。

 

中山 いろいろ仕掛けをつくって独創性を発揮できるようにしています。月1回の経営会議では、数字の話はしません。経営の方向性や日頃感じていることなどについて話し、考えるベクトルや発想の基準が多様化するようにしています。

 

数字に厳しい人が名経営者、名管理者ではありません。なぜなら、数字で詰めていくのが一番簡単だから。つまり能力のない証拠なんです。

 

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㈱タナベ経営 代表取締役社長
若松 孝彦(わかまつ たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん金融機関からも多くの支持を得ている。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989年タナベ経営入社、2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。
『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共に ダイヤモンド社)ほか著書多数。

 

買いたくないが買わざるを得ない
究極の卸をこれからも目指す

 

若松 独創性といえば、トラスコ中山はPB(プライベートブランド)商品もたくさん開発されています。

 

中山 工具業界はブランド指定のない商品が結構多い。ならば、ブランド指定のないものは当社のブランドで売っていこうということです。

 

若松 メーカー、仕入れ、卸、流通、自社ブランドと、さまざまな“コンセント”をお持ちで、どこから差し込んでもすぐにつながるのですね。

 

中山 販売企業の究極の在り方は、お客さまから見て「できればあの会社からは買いたくないが、買わざるを得ない」と言われる会社になること。顧客企業の経営者からしたら面白くないが、在庫があって即納だから、顧客企業の社員の支持率は高いような会社です。

 

若松 そう言えるのは、他社によってつくられた業界の商習慣を変えてきたという自負があるからなんでしょうね。トラスコ中山はこれからどこを目指していくのでしょうか。

 

中山 モノづくり現場にとって利便性の高い会社を今後も目指します。企業規模の拡大よりも企業の質を高めていくためにやらなければならないことがたくさんあります。

 

例えば今、配送の自社便化を進めていく中で、派遣社員ではなく正社員を雇用しています。間違いなくコストアップするが、お客さまへのサービス向上を考えたら、それでもやろうと思います。在庫をたくさん持って良い結果になったように、配達先のお客さまとの接し方も正社員だと違ってくるのではないでしょうか。

 

若松 「モノづくり支援業」というコンセプトを貫き、ビジネスモデルも含め自分たちで創ってこられた自前主義を徹底されているのですね。本日はありがとうございました。

 

PROFILE

  • トラスコ中山㈱
  • 所在地:〒105-0004 東京都港区新橋4-28-1 トラスコ フィオリートビル
  • TEL:03-3433-9830(代)
  • 創業:1959年
  • 資本金:50億2237万円
  • 売上高:1665億6500万円(2015年12月期)
  • 従業員数:2154名(パートタイマー含む、2016年3月末現在)
  • 東証1部上場
  • http://www.trusco.co.jp/