
国内外でリース・レンタル事業を展開する東証プライム上場企業のニシオホールディングスは、売上高1706億円、従業員数4551名(連結、2022年9月期)の日本における建設機械のリース・レンタル事業の草分け的存在だ。シェアリングエコノミーが広がる中、リース・レンタルの開発力で社会課題の解決を目指す同社の代表取締役社長である西尾公志氏に、未来を切り開くビジョンについて伺った。
建設機械のリース・レンタル事業で成長
若松 ニシオホールディングスは、建設機械におけるリース・レンタル事業のパイオニアであり、国内だけではなく、海外でもレンタル事業を展開されています。創業の経緯をお聞かせいただけますか。
西尾 当グループは、大手メーカーの下請けとして1959年に宝電機(現西尾レントオール)を設立したのが始まりです。
レンタル事業を本格的にスタートしたのは1965年。公認会計士でもあった父の西尾晃が労働集約型の下請けビジネスから脱却し、資本集約型のビジネスを模索する中で道路機械のレンタル事業を始めました。高速道路や日本万国博覧会(1970年)など大型の工事が多く、建機が足りない時代でした。
若松 リース・レンタルという着眼が素晴らしいです。時代の変化を読む力とファイナンスの技術の両方に長けておられたのですね。売上高1706億3400万円(2022年9月期)のうち、レンタル関連事業が1641億8000万円に上るほか、海外事業も着実に成長しています。
西尾 詳細を言うと、レンタル関連事業のうち90%が建設系、10%がイベント関連です。建設分野は60年近い実績がありますし、市場規模が約1兆3000億円と大きいですから。また、海外比率は10%を超えたところです。
若松 私は自身のコンサルティング臨床データから、売上高の海外比率が20%を超える企業をグローバル企業と呼んでいます。海外事業はどのような形で拡大されているのでしょうか。
西尾 M&A戦略が中心です。東南アジアはODA(政府開発援助)や日本企業の海外進出に伴って建設会社が海外展開を進めた1990年代以降に拠点を開設しました。2016年以降は市場規模が3000億円以上に上るマーケットであるオーストラリアに進出しています。現地の会社をグループインする形で市場参入しており、運営はオーナーをはじめ現地スタッフに任せています。
若松 日本人をトップに置いていないのですね。私は「現地の人材がトップを担い、現地の企業を支援できる体制こそが真のグローバル戦略」と言っています。
西尾 日本人は1人も派遣していません。売上高30~50億円くらいの会社であれば、オーナーとしっかりと信頼関係をつくって任せる方が経営は安定するように思います。
若松 西尾社長の考えるクロスボーダーM&A戦略についてお聞かせください。
西尾 M&Aを行ったのは5社ですが、統合して現在は2社体制になっています。「マーケットの違いをどう生かすか」が重要だと考えています。オーストラリアは物価が高くてレンタル料も高額。加えて安全基準が厳しく、10年経過すると気軽にレンタルできない機械もあります。一方、日本は品質がしっかりしていれば20年ぐらいはレンタルが可能ですが、過当競争でレンタル料は下がっています。
ですから、まずオーストラリアでレンタルして投資額を回収した後、品質を保持した上で日本でレンタルしたり、東南アジアに持っていったりすることで価格競争にも強くなる。各社を取り巻く環境を鑑みて、マーケットの特性を組み合わせることで、効率的な資産運用が可能になります。
若松 建設機械レンタルのバリューチェーン特性を、海外事情や法規を理解した上で組み替えていくわけですね。グローバル戦略で成功している会社の特徴の1つに地域密着スタイルが挙げられます。まさにパイオニア的な価値創造であり、オリジナリティーのあるビジネスモデルですね。
「ロジスティックス・イノベーション」で新たな価値を提供
若松 中期経営計画「Vision2023」では、新たな物流網の構築を目指して「ロジスティックス・イノベーション」を推進されています。先ほどのグローバル展開も同様の戦略コンセプトにあると理解します。
西尾 建設機械のレンタルをもう少し大きなくくりで捉え直す試みが「建設ロジスティックス」の考え方です。加えて「働き方改革」により、2024年4月からドライバーの時間外労働は上限規制されますが、それによって建設機械の運搬を手掛ける事業者が減少するのではという危機感がありました。
そもそも建設機械の運搬には特殊な免許が必要な上、建設工事が始まる前、朝一番に現場に到着しておかなければならないなど、通常運搬よりも条件が多いのが特徴です。ですから、信頼できる運送事業者と強いパートナーシップを築き、一部は自社で運搬できるようにしなければ商売が成り立たなくなるという強い危機感が前提としてありました。
ただ、この高いハードルが逆にビジネスチャンスを生みます。しっかりと体制を構築できれば、建設現場向けのさまざまな運送ビジネスを手掛けられるのではないか。これがロジスティックス・イノベーションの発想です。
若松 建設機械のレンタルという自社の強みと、物流業界の社会課題を結び付けて根底から解決するバリューチェーンを開発し、事業価値を高めるビジョンです。
西尾 ロジスティックス・イノベーションについては、次の中期経営計画でも引き続き取り組んでいきます。現在、熊本県でTSMC(台湾積体電路製造)社の大規模な半導体工場の建設が進んでいます。当社にとって九州はこれまで弱いエリアでしたが、物流の考え方を導入することで成果が上がっています。
これまでは技術的な視点から、高品質のレンタル資産や、その長寿命化を図る管理に重点を置いてきましたが、今は注文に即応できるデリバリーセンターのような機能へと概念が変わっています。
若松 必要なときに必要なものを提供できる仕組みが必要になります。業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略も鍵になりますね。
西尾 その通りです。無人化施工通信システムとして展開しています。大手メーカーの建機は最初からICT(情報通信技術)化されていますが、実際の現場では中小メーカーの機械や古い機械も多く使われています。当社には、そういった機械に通信機能を後付けする技術があります。
例えば、1991年に長崎県・雲仙岳が噴火した際は、機械に通信機能を付け、中継車を使って何キロメートルも先から操作する実験を行いました。それ以降も継続的に機械に通信機能を後付けする技術開発に取り組んでおり、得意分野といえます。
仮設のチカラを社会課題解決につなげる
若松 通信機能の取り付けだけでなく、実際には現場のディレクションや全体の最適化も必要です。ある種のコンサルティングのようなサービスであり、付加価値が高いですね。
西尾 特に建設現場は過酷な環境ですから、高い技術や対応力が必要です。そうした技術や経験を街づくりにも提案できるのではないかと考えたのが2020年。大阪市北区の梅田スカイビルの前にある「うめきた外庭SQUARE」で、BCP(事業継続計画)対策とにぎわいの創出を両立させる「MIDORIオフィス」の実証実験を行いました。西尾レントオールの本社を屋外に置く実験です。地震などでオフィスが使えなくなった際、公園などの屋外で通常業務が行えるかを確かめました。
若松 面白い試みです。ただ、会社の業務を行うとなると、インターネットの通信速度や情報のセキュリティー面が心配です。
西尾 そこが課題といえますが、建設現場で鍛えた技術を使って通信環境を整備しました。約1カ月間、UR都市機構やスタートアップ企業数社なども参加して、働く人への影響などを調査しました。
また、同様の技術を使って新型コロナウイルスのワクチン集団接種会場のデモンストレーションを実施したこともあります。森ノ宮医療大学(大阪府大阪市)に監修をお願いし、大型テントを会場にする試みを提案させていただきました。
若松 東日本大震災の折、被災地のクライアントを訪問しました。社屋が全壊したある企業は、屋外にテントを建てて業務を続けていたことが思い出されます。不確実性が高まる時代において、迅速に設営できる仮設が必要とされる場面は増えていくのではないでしょうか。
西尾 おっしゃる通りです。これまでは建設機械のレンタルが中心でしたが、今後はノウハウを組み合わせることで、街づくりや社会課題解決に取り組んでいきたいと考えています。また、こうした実験や試みを通して、当社に関心を持ってくださる層も確実に広がっています。
若松 仮設に関する高い開発力を持っておられます。高い技術力や対応力があるので、リース・レンタル事業を中心としたトータルサービスの展開も期待されます。
西尾 リース・レンタル事業という切り口から、産業特有の課題を解決できます。例えば、秋田県は木材産業が盛んですが、特に二次加工業者は中小企業が多く設備投資が遅れがちです。当社はCLT材(直交集成板)の加工工場に対し、サブスクリプションサービスとリースを使って新しい設備を提供しています。
また、高知県・仁淀川町と連携する「協働の森づくり事業」では、植林や林道の敷設、製材所の運営を支援するなど、これまでの事業にとどまらない新たな取り組みが増えています。木材産業だけでなく、設備投資で遅れている部分はリースやレンタルが貢献できる部分だと考えています。
若松 このような活動をもっとみなさんに知っていただきたいです。とにかく実装力が素晴らしい。実装させるソリューションの価値、ニシオホールディングスだからこそできる社会課題解決の可能性は大いにありますし、事業のセグメンテーションも変わっていくと思います。
西尾 建設現場であっても、イベント会場であっても、対応力が不可欠です。そこは当社の強みといえます。その意味では、2023年4月にホールディングスになったので、新たな展開ができると思います。
交流を通して視野を広げ新たな価値を創る
若松 どのような戦略を推進するにしても人材が要になります。「人的資本」が注目を集めていますが、ニシオホールディングスの人材・組織づくりについて、どのような地図を描いていらっしゃいますか。
西尾 レンタル事業において、ご提供に至る各プロセスは、作業する社員個人の対応力に大きく依存しています。その意味で人材は一番の財産であり、課題といえます。
当社は、「プロフィット制」を取り入れています。小さい単位で利益を管理する仕組みで、利益の管理や分配まで任せています。現場が経営感覚を持つことが成長につながるという考えです。
若松 日本企業における組織論は、エンゲージメント以上にエンパワーメント(権限委譲)のデザインが大切です。小さな組織に分けて権限と責任を持たせることで業績意識も高まりますし、経営センスも磨かれます。
西尾 この仕組みは外部環境が変わらない状況で利益を管理することに長けています。ただ、今の時代はもっと大きな視点で業界の変化を捉える力を養う必要があります。
若松 加えて、これからの事業経営においては、経営センス以上に事業センス、新しいアイデアでイノベーションや成長を創出するクリエイティブなリーダーシップも必要になります。
西尾 変化の激しい時代においては、良いところは残しつつも、変化に対応できるビジネスを創造しなければなりません。ですから、幹部クラスには担当するエリアの業績管理に加えて違うテーマや役割を担ってもらっています。例えば、「モビシステム」という無人のモビリティーシステム(はたらく車のカーシェアリング)というテーマに関しては、ある地域の営業部長に全国を統括してもらうなどです。
今後は、全社員が本来の業務に加えて、プラスアルファの何かに挑戦してほしいと思います。他社や地域との交流を通して視野を広げ、5年後、10年後を考えられる人材をつくっていかなければなりません。2025年開催の日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けて大阪市住之江区咲洲で建設中の「R&D国際交流センター」や、同センター内で2022年12月に竣工した移設可能な木造のアリーナ「咲洲モリーナ」を利用し、社外の人々とも交流してもらいたいと考えています。
若松 R&D国際交流センターは、新たなレンタルビジネスの発信基地としてシンボリックであり、新しい価値を創造する大事な位置付けになりますね。
西尾 最初は日本万国博覧会やIR工事の拠点に加えて、社内だけでなく地域や企業、大学なども呼び込んで活発に交流する場所として提案しました。コロナ禍の影響でオフィスの在り方は確実に変わっています。研究開発や商業的な要素を入れながら、今までとは異なる拠点にしたいと考えています。
若松 西尾レントオールの創業時のように、新しいことに挑戦することでパイオニア精神が養われますから、交流を増やして新たな視点やビジネスに結び付けてほしいですね。本対談を実施した咲洲モリーナはデザインが美しく開放感があります。木材がふんだんに使われており、大阪・関西万博のコンセプトにも合っています。
西尾 独自技術の「ATAハイブリッド工法」を使った木造建築で、柱がなく、内部が広々としているのが特長です。長崎県・五島列島の風力発電所の宿舎や事務所にも採用されるなど活用の幅が広がっていますが、この工法はもともと工事現場用テントやテント倉庫、イベント会場のテントを手掛けていた延長線上で開発しました。ずっとそこにある建物ではなく、期限付きの仮設の建物です。人口が減少する現代において、場所や用途を変えて何度も使用できる建物を目指しています。
若松 対談を通してリース・レンタル事業の可能性は無限であると、あらためて感じました。ニシオホールディングスに蓄積された技術と現場対応力、実装に導く強い推進力を武器に、社会課題の解決に向けて新たな価値を創造されることを祈念しております。本日はありがとうございました。


PROFILE
- ニシオホールディングス(株)
- 所在地 : 大阪府大阪市中央区東心斎橋1-11-17
- 設立 : 2023年(西尾レントオール設立:1959年)
- 代表者 : 代表取締役社長 西尾 公志
- 売上高 : 1706億3400万円(西尾レントオール連結、2022年9月期)
- 従業員数 : 4551名(西尾レントオール連結、2022年9月現在)