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100年経営対談
100年経営対談
成長戦略を実践している経営者、経営理論を展開している有識者など、各界注目の方々とTCG社長・若松が、「100年経営」をテーマに語りつくす対談シリーズです。
100年経営対談 2016.01.29

「一寸法師の針」で世界へ挑む超音波ソリューションのグローバル・ニッチトップ 本多電子 本多 洋介氏

100 年企業に向けて超音波を社会のコア技術へ

 

若松 2016 年に60 周年を迎えられます。その先にある100 周年に向けて、本多電子のビジョンや目指すべき未来の姿をお聞かせください。

 

本多 2014 年、第二創業という意味も込めて研究室を開設し、超音波の可能性について自由に研究を行っています。超音波技術の夢を語れる社員に研究室を任せていますが、人材を認めて活躍できる場をつくることを私の仕事としていこうと考えています。

 

先代は、超音波技術の可能性を見極めながら、新しい市場と結び付けることができるトップエンジニアでしたが、私はそうではありません。幸い、当社には優れたエンジニアが要所にいます。そうした人材も含め、人が育つ環境づくりに注力していきます。

 

若松 自由闊達に開発する組織風土づくりが大切です。熱心に取り組む社員をいかに育成していくかは、研究室機能の強化にかかっています。

 

本多 超音波技術を世界のトップレベルに昇華させていきたいですね。事業の柱を増やして収益を新技術の先行投資に充てることで、技術をもう一段、上のレベルにまで磨き、引き上げたい。超音波が光や電磁波に並ぶ社会のコア技術となれば、市場は大きく広がります。これは創業者の使命(ミッション)であり、私も引き継いでいけることです。

 

若松 魚群探知機の『ホンデックス』は、既に世界的なブランドとして確立しています。

 

本多 中国製の魚群探知機が数千円で出回っている時代ですから、お客さまの信頼がないと生き残っていけません。そうした市場環境において、ホンデックスが60 年近くも評価をいただいているのはありがたいですね。今後は、統一ブランドである『ホンダエレクトロニクス』を世界ブランドにすることが大きな目標です。

 

若松 ニッチマーケットにおいて事業を行う企業は、1 つの製品だけの研究を深化させる場合が多いのですが、本多電子は魚群探知機という製品に特化せず、超音波というソリューション技術を研究・展開されたところが個性です。世界で勝負できる超音波技術へと深化させるために、何が必要だとお考えですか。

 

本多 世界で勝っていくには、特に産業機器分野では、他社と互いの長所を生かし、補完し合えるような関係を築くべきではないかと考えています。国内においても企業間の競争はありますが、同業他社を競合相手と捉えるよりも、超音波技術に関してどのように協業できるかに関心を向けています。

 

若松 今後は日本の超音波技術が、いかに世界市場でポジションを築けるかが大切ということですね。「高度の専門化と高度の総合化」。超音波のワンストップソリューション企業へ向けたブランド昇華が必要です。

 

本多 先代は、私が幼い頃から「一寸法師の針を持て」とよく言っていました。小さくとも鋭い針を持てということであり、それさえ持っていれば大企業とも互角に戦えるという気概がありました。世界市場でファーストコールカンパニーとなるためにも、こうした気概を持つことが大切だと思います。

 

若松 規模ではなく、質がますます重要になってきます。顧客や社会に貢献することを創業以来のミッションとして、超音波技術という高度な専門性をあらゆる分野へ総合的に展開しているビジネスモデルに大変感銘を受けました。本日はありがとうございました。

 

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(株)タナベ経営 代表取締役社長
若松 孝彦(わかまつ たかひこ)
タナベ経営のトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとし て指導してきた会社は、業種を問わず上場企業から中小企業まで約1000 社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーはもちろん 金融機関からも多くの支持を得ている。 関西学院大学大学院(経営学修士)修了。1989 年タナベ経営入社、 2009 年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て現職。 『100 年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほ か著書多数。