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100年経営対談
100年経営対談
成長戦略を実践している経営者、経営理論を展開している有識者など、各界注目の方々とTCG社長・若松が、「100年経営」をテーマに語りつくす対談シリーズです。
100年経営対談 2026.10.30

建設業界を支える信頼と革新のパートナー コンドーテック 代表取締役社長 濵野 昇氏

若松 孝彦 氏(右)濵野 昇 氏(左)

ITと「人のちから」を融合したDXを進め、
「VISION 2040」でグループ売上高3000億円へ

船舶用金物の製造・販売業から始まり、時代に合わせて事業領域を広げてきたコンドーテックは、売上高約839億円、従業員数1500名超の東証プライム上場企業である。5万アイテムに上る多彩な商品ラインアップと積極的なエリア戦略によって持続的成長を続けている。長期ビジョンの達成に向けてギアを上げる同社の戦略を代表取締役社長の濵野昇氏に伺った。


海から陸へ時代の変化を読み取り事業を広げる

若松 コンドーテックとタナベコンサルティンググループ(以降、TCG)は長いお付き合いになりますね。今日の対談を大変楽しみにしていました。私がご支援したのが2002年でしたから、約24年が経ちます。当時は売上高250億円ぐらいだったと記憶しています。人事考課制度の改善や考課者教育、幹部育成研修など、人材・組織面でもご一緒してきました。日頃のご縁に心から感謝します。ありがとうございます。


コンドーテックは2027年に創業80周年を迎えられますね。船舶から始まった事業領域は建設・土木業界へ広がっており、グループ売上高は839億4900万円(2026年3月期)へと成長されました。


濵野 こちらこそ、長いご縁に感謝します。私が入社したのは1993年で、積極的に販路を広げており、売上高は約275億円(1993年3月期)でしたが、赤字拠点も多くありました。最初の配属先である北関東営業所もその一つでしたが、工場が併設された重要拠点でもありました。縁を感じるのは、最初の上司が今の近藤勝彦会長だったことです。年が離れていることもあって、兄のように頼り、慕ってきました。すでに30年以上のお付き合いになりますから、さまざまな相談をし、意思疎通を図っています。


若松 現在は「産業資材」「鉄構資材・アンカー施工」「鉄道関連」「ホームセンター関連」など複数の事業分野がありますね。濵野社長は、どちらの事業部に配属されて仕事をスタートしたのでしょうか。


濵野 現在の鉄構営業部、当時は新規事業部という名称でした。そこから鉄構一筋で北関東営業所(茨城県)、神奈川営業所、京滋営業所(京都府)、山陽営業所(広島県)、関西支店(大阪府)の5拠点で拠点長を歴任し、鉄構営業部長を務めた後に営業本部長に就任しました。



赤字拠点再建で手腕を発揮ピンチをチャンスに変える

濵野 これまでの経験でターニングポイントとなったのは、山陽営業所での経験です。実は、経営層や役員、次世代リーダーを対象とするエグゼクティブ研修を受けていた時期に大赤字を出していた山陽営業所への異動の打診があり複雑な心境ではありましたが、その場で受諾。私が担当しても再建できなければ営業所を閉めると聞き、自分のやり方を貫こうと腹を決めました。赤字にもかかわらず総務・経理を担当するパート社員と倉庫を管理する社員を採用。営業用のライトバンも購入するなど投資もしたのです。


若松 経営者として、赤字拠点の立て直しからキャリアをスタートさせることは、大きな転機となります。経営能力を発揮する上で、これほど貴重な経験はないと思います。事業を赤字から黒字へと転換し、安定成長の軌道に乗せる過程で、経営者に求められるリーダーシップを学び、その要件を身につけていくからです。私自身のコンサルティング経験や今回の対談を通じても、非同族企業の社長の中には、同様の経験を経て社長に就任された方が多くいらっしゃいました。こうした経験は、社長就任に当たっての一つの不文律ともいえるでしょう。そして、「会社は人でできている」という経営の本質を理解する機会にもなります。


濵野 当時、さまざまな投資には反対されましたが、赤字解消には業績や商品をきちんと管理する必要がありますし、トラックで新規開拓するわけにはいきません。営業についても、社員が手を焼いている先は全て私が引き受けて自ら営業に回り、ある程度ルーティン化したところで社員に引き継ぎ、取引先を増やすうちに業績が回復していきました。社員も頑張ってくれましたし、運が良いことにリーマン・ショックで低迷した景気が上向き始める好材料も重なりました。


若松 業績が悪化するとつい目先の止血作業に追われがちですが、成長に必要な投資を後回しにすると、いつまでたっても負のスパイラルから抜け出せません。数字の把握は経営の基本、商品は会社の基盤、販売は成長の鍵になります。赤字を縮小するためにコスト削減に徹する人がほとんどですから、勇気のある判断だったと思います。良い経験を積まれましたね。



社名変更でイメージを一新M&A戦略で一段上の成長軌道へ

若松 次に、コンドーテックのグループ成長戦略の推進過程、ターニングポイントについてお聞かせください。


濵野 1つ目は、1989年に近藤鉄工からコンドーテックに社名を変更したことです。鉄工という堅いイメージから脱却したことは社会に広く認知されるきっかけになったと思います。また、1995年に大阪証券取引所市場第二部に上場したことで認知度が上がりました。当社は40年以上にわたり『コンドーニュース』という社外報を配布していますが、こうした挑戦を続けた結果、会社のイメージが変わっていったと思います。


2つ目は、M&A戦略投資です。最初に実施した2010年以降、より高い成長軌道を描けるようになりました。将来的に建設業界だけでは大きな成長曲線を描くのは難しいことから、近隣業界の三和電材のグループインに踏み切りました。当時は太陽光発電ブームで需要が拡大しており、M&Aによって三和電材が発電パネルを、当社が架台を供給するという協業が実現しました。


また、当社の約2万社に上る取引先に太陽光発電やLED照明、空調機器を提案し、据え付けまでのトータルサービスを提供。販路が広がったことで買収時約60億円だった三和電材の売上高は100億円を突破しました。


若松 M&A戦略においてシナジーが生まれたのですね。事業領域の拡大はもちろん、販売面でもシナジーが発揮されます。ただし、事業領域に対して飛び石のようなM&A戦略ではなく、領域拡大という点がポイントです。コンドーテックは全国に約50の営業所を持つなど販売網を構築されており、大きな強みと言えますね。


濵野 特に建設業界はスピード感が大事です。必要な部材をすぐに届けられないと太いパイプはつくれません。今でもエリア戦略にブレーキは掛けていません。直近では北陸と北海道に出店したほか、沖縄の会社をM&Aしましたが、空白地帯はまだ残っていると考えています。


若松 ターゲットエリアや商圏に対する判断の基準はお持ちですか。中小企業の経営は「単価」×「数量」で成長を測りますが、中堅企業の成長は「シェア」×「シリーズ」×「システム」からなる3S経営の視点が必要です。


濵野 各地域の関連企業数を調べてマーケットサイズを算出し、目標とするシェアを掛け合わせて売上高や利益を推定した上で判断しています。そして、当社の強みはお客さまの生の声。直接お客さまのもとに出向いて生の声を拾い、開発とも共有することで競争力の高い製品開発につなげています。



M&Aで足場事業に参入近隣業界に進出しバリューチェーンをつなぐ

若松 現在、コンドーテックのほか、国内10社、海外1社の子会社からなる計12社でグループを構成されています。メーカー機能の強化を営業力が支え、独自の販売チャネルを築いていることは、M&Aにおいても強みとなっています。今後もさらに磨いていくべき戦略です。


TCGでは、事業セグメントを超えて製品やサービスを顧客に提供することを「クロスソリューション」と呼んでいますが、そこにも大きな伸びしろがありますね。長期ビジョン「VISION 2040」に掲げるグループ売上高3000億円を実現するには、グループ内の連携による強力なシナジーが必要です(【図表】)。M&Aによって、足場工事関連事業にも参入されましたね。


【図表】長期ビジョン「VISION 2040」で掲げる目指す姿

【図表】長期ビジョン「VISION 2040」で掲げる目指す姿 出所 : コンドーテック「VISION 2040」を基にタナベコンサルティング戦略総合研究所作成

出所 : コンドーテック「VISION 2040」を基にタナベコンサルティング戦略総合研究所作成


濵野 おっしゃる通りです。事業の足し算だけでは面白くありません。M&Aで事業領域やエリアを広げる以上、かけ算をすることで面白い展開が生まれると考えています。足場工事関連は重点領域の1つです。2019年にテックビルドのグループインで事業領域に加わりました。参入について同業他社から文化の異なる難しい領域だと言われましたが、今後、建物の維持・修繕工事が増えてくると踏んでおり、成長を見込んでいます。これまでに足場工事関連4社を子会社化し、その上に中間持ち株会社を設置しています。


若松 M&A戦略を活用しながら事業成長のためのバリューチェーンを構築しているわけですね。


濵野 はい。建物が完成するまでのあらゆるフェーズでコンドーテックグループのセグメントが活躍できる形を目指しています。国内の動向を考えると、新築よりも既存建物の維持・修繕の案件が伸びていくでしょう。足場工事関連はすでに供給が足りていません。機材も人も足りていない状況ですが、グループ4社間で資源を融通し合うことで成長できると考えています。


若松 TCGでは「ニッチトップ戦略」と呼んでいます。そのための事業は脇役が一番良いです。主役の事業は往々にして価格競争に陥りがちです。一方、脇役であってもニッチトップの集合体をつくれば利益は向上します。小さな市場でもトップポジションになれば価格決定権を握ることができるのです。足場事業もそうした事業になり得るでしょう。さらに、そのビジネスをブランド化し、その価値を可視化すれば利益は上がっていきます。ブランド力が高まれば、全国の販売網を通じて、さらなる利益向上を目指せるはずです。


濵野 今期はグループ売上高900億円を目指しており、3年後までに売上高1000億円突破を掲げています。さらに2040年に売上高3000億円を実現できるよう取り組んでいます。



「個のちから×デジタル」を推進

若松 長期ビジョンに掲げる売上高3000億円に向けて注力している分野と、それを実現するためにクリアすべき課題はありますか。


濵野 将来の社員に「14年前の経営陣は何をしていたのか」と言われないように、長期を見据えて人的資本やデジタル革新への投資を行っていかないといけません。まずは、「現在の拠点数で達成できるのか」「成長の阻害要因は何か」など、目標と現状の間のギャップを明らかにする必要があります。


当社の経営理念は、「私達は未来を築く人材を育て、創意工夫と開拓の精神をもって企業活動を行うことにより、豊かな社会づくりに貢献します。」です。人に対して熱い思いを持っていますし、人を大切にしてきました。


販売で言えば、人が要となる課題解決型の提案営業は大きな強みだと自負しています。諸先輩が強靱きょうじんな基盤を築いたように、人が成長の要。今でも営業担当者が在庫確認や発注、納品の段取りなどを電話で行っていますが、ありがたいことに電話は常に鳴りっぱなしです。


ただ、その一方で2040年を見据えたとき、この先もマンパワーに頼った属人的な営業活動のままで良いのかはいささか疑問です。「個のちから」で成長してきたことを誇りに思う半面、これからの時代はそれだけで勝ち抜く難しさも痛感しています。やはりデジタル化は急務と考えています。


若松 コンドーテックの強みである営業力と事業展開力を生かしたチャネル開発を、さらに次のステージへと引き上げるには、DXやAIが欠かせません。もちろん、DXはあくまで手段ですが、それを武器として活用すれば新たなバリューチェーンを生み出せると思います。


濵野 同感です。早急にDXを進めなければなりません。私は、「個のちから×デジタル」が実現すればコンドーテックの成長は無限大だと思います。その意味で、タナベコンサルティンググループをはじめ、社外の協力を仰いで個のちからを伸ばしつつ、同時にDXも推進していきたい。私が在任中にDXの土台をつくりたいと考えています。


若松 個のちからとデジタルが融合した「コンドーテックDXモデル」が実現すれば、売上高3000億円も視野に入ってきます。ポイントは、拠点戦略と物流とDXを一緒に考えること。それには、「2040年にどのような会社、グループでありたいのか」を可視化して示す必要があるでしょう。経営者に求められるリーダーシップの一つに、「センスメイキング理論」があります。どのような未来をつくり、どのような会社を目指すのかを明確にし、社員が納得して行動できる状態をつくることです。目指す未来を具体的にイメージできれば、必要なDXの形も見えてくるはずです。



「コンドーテックがあるから安心」と社会から思われる企業を目指す

若松 最後に今後のビジョンについてお聞かせください。


濵野 当社の主戦場である建設業界は慢性的な人手不足や時間外労働の制限など課題が山積しています。それらを少しでも解決できる製品を開発し、提案し、タイムリーに届けるための仕組みづくりや投資を怠ることなく、これからも建設業界の省人化や省力化、軽量化に貢献していきたいと考えています。


若松 「社会貢献」というサステナブルな活動として、コンドーテックは全国の拠点に災害時など非常時に対応する緊急物資を常備されているそうですね。


濵野 当社は全国50拠点に自社倉庫を持ち、ブルーシートをはじめ緊急物資を常に倉庫に置いています。災害時には物流網が寸断され、すぐに必要とされる緊急物資を届けるのに時間を要するケースも少なくありません。


当然ながら倉庫内のスペースは限られていますが、必要なときに、必要なものを、必要な人に届けるには、各地の拠点に緊急物資を常備しておくことが大事。これはビジネスとは一線を引いてでも取り組むべき当社の重要な役割だと捉えていますし、地域の方々に「コンドーテックがあるから万が一のときも安心だ」と思っていただける企業でありたいと思っています。


若松 特に、南海トラフ地震や首都直下地震の発生リスクが高まる中、日本ではいつ、どこで大規模な自然災害が発生してもおかしくありません。コンドーテックの事業領域やエリア戦略を踏まえると、緊急時にラストワンマイルを担う機能を備えているといえます。これは地域社会にとって価値ある取り組みであり、社会や投資家の皆さまにも知っていただきたいと思います。


本日は貴重なお話をありがとうございました。私自身、あらためてコンドーテックの強さの秘密と未来を感じることができた対談となりました。長期ビジョンの達成に向けて、タナベコンサルティンググループもサポートしてまいります。



濵野 昇 はまの のぼる 氏

濵野 昇 はまの のぼる 氏

コンドーテック 代表取締役社長

1970年大阪府生まれ。1993年コンドーテック入社後、2017年に関西支店長、2018年に執行役員鉄構営業部長兼関西支店長、2020年に取締役鉄構営業部長、2021年に常務取締役営業本部長兼鉄構営業部長を歴任。2024年より現職。


コンドーテック (株)

  • 所在地:大阪府大阪市西区境川2-2-1
  • 創業:1947年
  • 代表者:代表取締役社長 濵野 昇
  • 売上高:839億4900万円(連結、2026年3月期)
  • 従業員数:1531名(連結、2026年3月現在)


若松 孝彦 わかまつ たかひこ

タナベコンサルティンググループ タナベコンサルティング 代表取締役社長

タナベコンサルティンググループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず大企業から中堅企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーから多くの支持を得ている。
1989年にタナベ経営(現タナベコンサルティンググループ)に入社。2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て2014年より現職。2016年9月に東証1部(現プライム)上場を実現。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『チームコンサルティング理論』『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。


タナベコンサルティンググループ(TCG)

日本における経営コンサルティングのパイオニアと呼ばれ、東証プライム市場上場の経営コンサルティンググループ。1957年の創業から現在に至るまで約2万2100社の経営コンサルティング実績を有する。全国900名のプロフェッショナル人材が、上場・大企業、中堅企業に対して、ビジョン・戦略策定から現場の経営システム・DX実装まで一気通貫に支援するチームコンサルティングを提供している。