失われた30年を打破する「攻めの経営管理」。生成AIとデータの力で経営企画を「変革の司令塔」に ログラス 代表取締役 執行役員CEO 布川 友也氏

2019年の創業以来、システム化が遅れていた経営管理の領域にテクノロジーのメスを入れ、企業価値向上に貢献し続けるログラス。経営管理領域のクラウドサービスとして、累計導入社数No.1を誇る。
米『Forbes』誌の「Forbes 30 Under 30 Asia」にも選出された創業者の布川友也氏に、企業価値を高める考え方や仕組みについて伺った。
「失われた30年」から脱却し、テクノロジーで未来を切り開く
若松 ログラスは、クラウド経営管理システム「Loglass(ログラス)」(【図表】)を柱に、精度の高い経営判断をサポートするプロダクトを展開しています。経営管理領域のクラウドサービスとして、累計導入社数はNo.1。タナベコンサルティンググループ(以降、TCG)も導入していますが、操作性や機能性が高く、既存システムとの相性も良いので非常に助かっています。
【図表】クラウド経営管理システム「Loglass」
出所:ログラスホームページよりタナベコンサルティング戦略総合研究所作成
ログラスはスタートアップとして布川社長が創業した会社です。布川社長は金融機関出身とお聞きしましたが、もともと起業を志していたのですか。
布川 Loglassをご活用いただき、ありがとうございます。私自身は高校生のころから起業に関心がありましたが、実際に視野に入ったのは大学入学後です。大学時代に人材系のスタートアップの立ち上げに参画したことで、より強く起業を意識するようになりました。周囲に起業した知人が何人かいたことも影響していると思います。
若松 私はコンサルティングの経験科学から、「経営者は35歳までに出会った人物や立てた志で決まる」と言っています。布川社長もその通りなのですが、ご実家も事業をされているのでしょうか。
布川 いいえ。私の父は銀行員で、サラリーマン家庭に育ちました。ただ、父の仕事の関係で小学生の一時期をシンガポールで過ごした経験に大きな影響を受けました。シンガポールには成長を遂げている国特有の熱気があり、子どもの教育に非常に熱心で、スポーツと勉強の両方を頑張る子どもが多い環境でした。
その後、日本に戻りましたが、正直なところシンガポールとの違いに戸惑いました。特に、地方に行くと活気が少なくて寂しい気持ちになりました。「失われた30年」と言われますが、日本はずっとその状態だと感じていました。
若松 私は仕事柄、多いときで日本全国を1年に20周ほどしていましたし、海外にも多く訪問します。そのたびに、日本の地域の景気減速に強い危機感を感じていました。だから、「経済復活の主役は経営者。ファーストコールカンパニー(100年先も一番に選ばれる会社)をつくろう」と提言しながら経営コンサルティング活動をしてきました。同様に、ログラスが掲げる「良い景気を作ろう。」というミッションの背景には、長らく続く日本の停滞感があるのではないでしょうか。
布川 その通りです。明るい未来があると信じて生きている人や組織と、停滞している国や会社の雰囲気は全然違います。日本とシンガポールと比較してもそう感じていました。
若松 バブル経済崩壊後の「失われた30年」の原因について、国の経済政策の失敗も否めませんが、私は多くの経営者が採用したコストカット中心の経営スタイルにも一因があると感じています。私は30年以上、経営コンサルティングをしていますが、1990年代前半から2000年にかけては創業者の時代でした。それが2000年以降になると、後継者に代替わりしました。
「事業経営」という言葉があるように、経営者には「事業センス」と「経営センス」の2つが必要です。創業者は事業センスを持っている。1000社以上のコンサルティングをした経験から言えば、会社は事業センスで成長もするし、つぶれもします。多くの創業者は失敗を重ねながら事業センスを磨き、成功する道を見つけて会社を成長させています。
一方、非創業者はコストカットやルール化といった、持続的な成長基盤を固めるための経営センスを磨いている。ただ、30年もたてば事業を変えるべき時期がやってきますが、新たな事業をつくれる人がいない。事業センスに長けた創業者が減っていることも景気が良くならない要因であり、「失われた30年」の背景にあると思います。
布川 私も仕事柄多くの経営者にお会いしますが、創業者には別格のエネルギーを感じます。例えば、Visional(ビジョナル、旧ビズリーチ)代表取締役社長の南壮一郎さんや、楽天グループ代表取締役会長兼社長・最高執行役員の三木谷浩史さんからは次元が違うエネルギーが伝わってきます。一方、後継者はスマートに経営をされる方が多いように思います。
若松 同感です。残念ながら、事業センスは遺伝しません。だからこそ、企業の中に起業家精神を培う場やアントプレナーを育成する体制が必要です。得てして2代目は、創業期のような失敗を経験する機会が少なく、独力での事業センスを磨きにくい環境にあります。そうなると一層卓越した経営センスが必要になるわけですが、その際に大事なのが会社の“内閣”の要となる組織機能「経営企画」です。役割は企業によって違いますが、布川社長は経営企画の役割をどのように捉えていますか。
布川 経営企画が実質的なストラテジストの役割を果たしている会社もありますが、経営企画が社長の特命部隊のように動く会社もあります。どちらかと言えば、後者が多いです。特にオーナー系の会社に多いですね。もう1つ、ファイナンシャル・プランニングをメーンとする会社もあります。この3つが主流だと思います。
若松 非常に分かりやすい3つの分類ですね。経営企画部がどのような組み合わせになるかは、トップマネジメントの特性によって決まります。
布川 経営のあるべき姿を体現している企業では、特命部隊化していきます。指示されたことを各部署に回していく役割になる。COS※1やCOE※2を置く会社が増えていますが、経営陣が方向性を決めて経営企画がファクトを集めて人を動かしていく組織は強いと感じています。
若松 それには、経営者自身やトップマネジメントが「何がやりたいのか」「何を実現したいのか」を明確に持っていることが重要です。要するに、パーパスやビジョンへの情熱です。
組織は拡大するほどに官僚化していくものです。経営企画部が策定した資料だけで完結させていると特命部隊にもなりません。経営行動にプライオリティーやメリハリが付かないのです。変化の大きい時代こそ果敢に挑戦し続ける姿勢を大切にする必要があるので、その意味で経営企画部の組織デザインは大事です。
布川 当社はソフトウエアを作っていますが、今の激震は間違いなく生成AIです。生成AIの登場によって開発コストが大幅に下がっており、参入障壁も下がっています。また、各企業が可能な限り内製しようとする流れもあり、従来のやり方を続けていては将来的には厳しい未来が待っているという危機感が、世界的に高まっています。
ただ、特に日本にはそうした波が到達する速度が遅いため、社内の危機感は高くない。そこに焦りを感じています。目の前の売り上げも上がっているため、余計なことをするよりも目前の事業に集中し続けた方が良いと考えるのは普通のことです。しかし、創業者という立場から言えば、5年、10年単位で未来を見据えないと、企業の存続そのものが危ぶまれます。新規事業は失敗する確率の方が高いのも事実ですが、挑戦しないことで変化を嫌う組織になっていく長期的なリスクは計り知れません。
若松 リーダーの決断には、「逡巡の罪」という言葉が当てはまります。「リスクを恐れてチャンスを逃す方が、決断して失敗するより罪は大きい」という意味です。すなわち、「リスクを取らないことが企業にとって最大のリスク」になります。
※1 Chief of Staffの略で、経営トップを補佐し、戦略立案、情報管理、部門間調整、重要プロジェクトの推進など、組織全体の意思決定と実行を最大化する役割
※2 Center of Excellenceの略で、特定分野の専門知識や人材、ノウハウを集約し、組織全体に提供・推進するための中核組織
経営管理システム分野でサービスの幅を広げる
若松 主力の「Loglass 経営管理」に加え、「Loglass 人員計画」「Loglass IT投資管理」など、サービスの幅が広がっています。そもそもこの事業領域のソフトウエアで起業したのはなぜでしょうか。
布川 私は大学卒業後、SMBC日興証券でM&A、IPアドバイザリー業務に従事し、業務の一環として多くの企業分析に携わりましたが、投資先企業の資料の中には読み解くのに3週間かかるようなエクセルのシートが数多くありました。当時、苦労した実体験が1つ目の動機です。
その後、2017年に東証マザーズ市場(現東証グロース市場)上場直後のGameWith(ゲームウィズ)に経営戦略担当として入社しました。創業4年目でまだコーポレート機能も十分ではない中、自らコードを書きながら仕組みを構築したところ、比較的うまく回ったことが2つ目のきっかけになりました。
私が感じた課題は、経営管理に必要なデータが集約されていないため、データの統合や集計に膨大な時間や手間が掛かること。このため、迅速な経営判断ができないことでした。「他社はどうしているのだろう?」と思って聞いて回ったところ、同じように困っている人が多いことを知り、経営管理のシステム化に挑戦しようと決めました。
若松 やはりそこは起業家であり、創業者です。自身が体験したことと、顧客の声を聞いて「実際に困っている人がいる」「世の中にない価値である」と実感して起業されたわけです。実際に使う人が何に困っているかを熟知しているからこそ、良い製品を作ることができます。
布川 実は、営業の場での製品説明や他社動向に関する解像度が低く、思うように事業成長を加速させることができない時期がありました。その状況を打開しようと始めたのが、月1回の「Customer Talk Live」です。導入企業の中で最もLoglassを使っている方に、当社の社員の前で、活用法や感想など生の声を語っていただいています。実際に使用しているLoglassの画面や社内管理用のエクセルのシートなどを見せていただくこともあり、非常に勉強になります。
Customer Talk Liveの良い点は2つ。1つ目は、製品の解像度が格段に上がるため、社員の提案レベルが上がります。2つ目は、お客さまが喜んでくださること。経営企画は縁の下の力持ち。聴衆の前で話す機会は少ないですが、約100名の前で話す経験は良い刺激になるそうです。加えて、講演内容がヒントとなりプロダクトの改良や新機能につながるなど、互いにメリットが多いので続けています。
若松 営業部門だけでなく、CS(カスタマーサクセス)・開発なども含めて生の声に触れられるのは良いですね。ログラスのクライアントがスタッフ部門であるので、利用者の生の声がどうしても届きにくくなります。
TCGでは独自の業績管理システムである「業績先行管理システム」に活用しています。このメソッドとシステムはクライアントにも提供しています。予算管理と先行業績と実績管理をクラウドERP(経営統合システム)と融合させて、先行累計利益差額を全社、全社員で共有する仕組みをつくり、これを私たちの業績マネジメントのベースメソッドにしています。Loglassを導入したことで、精度が高く、タイムリーに業績先行管理を実現できるようになりました。
布川 ありがとうございます。
若松 予算管理をする会社は多いものの、業績先行管理を導入している会社はほとんどありません。この考え方をもっと広げていきたいと考えていますが、私は業績先行管理のDXは経営企画の本質的な部分だと思います。財務部の領域という意見もありますが、経営企画は特にバランスシートも含めて、事業利益の先にあるものを把握すべきと考えています。
布川 個人的な見解を言えば、財務の本質は資金調達。一方で、業績先行管理は事業の話ですから、財務ではなく経営企画の領域だと思います。予算に対して差額が生じた際、大事なことは打つ手をどうするかです。その意味で言えば、経営企画は数字を把握して打つ手を示し、推進する役割があると思います。
若松 その通りですね。その視点を理解した上で出る経営企画部の提案は、会社の戦略を決めていくことになります。TCGは、「プロ役員とは未来の業績に責任を持つ人」と定義していますが、トップマネジメントの参謀としても、特命部隊としても、目先の業績だけではない未来の業績責任を果たすことができます。
布川 同様のケースは人事と経営企画にも当てはまります。人の配置は経営戦略と密接です。採用が仕事になっている人事は多いですが、経営戦略上、人をコストや投資として変換する視点は重要です。
若松 経営企画と人事、財務がつながるシステムが必要です。ログラスでは、先ほども紹介したように経営管理のほかにも、「Loglass 人員計画」や「Loglass IT投資管理」といったサービスも展開されていますね。
布川 「Loglass 人員計画」は、人事と経営企画を横断するサービスです。人の採用や退職、休職の管理、兼務による案分などの人員台帳が、経営企画が持つ経営管理の数字にダイレクトにつながる仕組みです。
若松 人的資本の観点からも非財務情報を開示しなければなりません。経営者の立場からすると、財務指標や人的資本指標の部分は経営企画に集約し、リーダーシップを発揮させたい。実際に統合報告書(IRリポート)を作成するのは経営企画ですから、最終的には経営企画に集約される仕組みが良いのではないでしょうか。ただし、実行の部分は経営者の強い意志と情熱、各現場のリーダーシップが必要です。
布川 2025年12月に、統合報告書やIRの分野に向けた新サービス「Loglass AI IR」をリリースしました。投資家やアナリストとの1on1ミーティングの内容が記録され、クラウド上で自動生成されるサービスで、キーワードによって分類された内容を統合報告書などに盛り込んでいくことが可能です。
IRの“一丁目一番地”は統合報告書です。単なる決算開示を超えた統合報告書を作成できれば、企業価値が高まります。企業価値が高まれば資金調達力が向上し、人材の質を上げることができます。結果、会社が儲かって良い景気がつくられるというスパイラルが起こります。
また、コーポレートファイナンスの世界では、企業価値を高めるには、キャッシュフローを増やすか、WACC(加重平均資本コスト)を下げるかしかない。WACCを下げる方法として、統合報告書の発行や投資家との1on1ミーティングの実施などが挙げられます。現在、キャッシュフローの増加とWACCの低減の両方をカバーする事業フレームを推進しているところです。
若松 事業領域の幅をどうデザインされるのか非常に楽しみです。企業価値にフォーカスしていて、事業戦略のフレームがコーポレート部門に集約されるので分かりやすいですし、可能性が無限に広がる点も良いと思います。
布川 ありがとうございます。当社はヒト・モノ・カネの領域に強みがあります。現状はBtoBのSaaS※3を通じた価値提供が主軸ですが、私たちはこれにとどまるつもりはありません。ソフトウエアの目指すべき理想はSI※4ですが、生成AIの登場によって、これまで非定型だった業務が定型化されつつあります。それは、SIしか解決できなかった業務領域において、ソフトウエアのチャンスが広がっていることを意味します。そこへの参入は当社にとって大きな挑戦であり、事業の柱になると私は考えています。
※3 Software as a Serviceの略で、ソフトウエアをインターネット経由で提供・利用するクラウドサービス形態
※4 System Integrationの略で、システムの企画・設計・開発・運用・保守までを一貫して請け負う事業・サービス
「良い景気を作ろう。」
企業価値の向上で誇れる未来をつくる
若松 最後に、ログラスの今後の展望をお聞かせください。
布川 当社の「良い景気を作ろう。」というミッションを実現するには、クライアント企業の価値を高める必要があります。利益増加や事業拡大で企業の価値は上がります。企業の価値が上がると国民の所得が増え、消費が増える。それによってさらに企業が儲かるという循環をつくっていきたいです。
加えて、繰り返しになりますが、企業の価値を高めるには、キャッシュフローを上げてWACCを下げること。キャッシュフローの増大に向けて経営管理や人員計画に関するサービスを展開する一方、先ほど触れた「Loglass AI IR」によって、投資家との対話を深化させ、WACCの低減を強力に推進していきたいと考えています。
若松 ますます事業領域が広がっていきます。プロダクト以外の展開も期待されます。
布川 当社のビジネスでは数字を扱うことがメーンになりますが、数字だけに頼る議論に限界も感じています。数字から導き出される打つ手は限られていますが、経営者の頭の中にある考えや、経営会議で交わされた議論、担当部長だけが持っている情報など、そういった属人的な情報がシステムを通して共有されれば、議論はより深まり打つ手は増えていきます。そうした環境をつくるところまで、事業を広げたいという野心は持っています。また、エンジニアを派遣したり、コンサルタントを派遣したりと、プロダクトだけにとどまらないサービスの提供によって、本当の意味でのファイナンシャル・プランニングの革命を起こしたいですね。現状、ログラスはソフトウエアや生成AIの売り上げが主軸ですが、コンサルティングおよび基盤となるプロダクトの収益を生み出していく。これを今後3年で実現したいと考えています。
若松 ぜひ、志や夢を大切に、実現していただきたいです。ログラスがますます企業価値の向上に貢献し、良い景気をつくっていくことを祈念しています。本日はありがとうございました。

布川 友也(ふかわ ともや)氏
ログラス 代表取締役 執行役員CEO
1993年東京都生まれ。2016年に慶應義塾大学経済学部卒業後、SMBC日興証券投資銀行入社。PE、総合商社によるM&Aや投資先IPOアドバイザリーを担当。その後、GameWithの経営戦略室にてIR・投資・経営管理などを担当し、2019年に東証一部(現プライム市場)への上場を経験。同年にログラスを創業、代表取締役CEOに就任。クラウド経営管理システム「Loglass」シリーズを開発・提供。
(株) ログラス
所在地 : 東京都港区三田3-11-24 国際興業三田第2ビル9F
設立 : 2019年
代表者 : 代表取締役 執行役員CEO 布川 友也
従業員数 : 315名(2026年1月現在)
若松 孝彦 わかまつ たかひこ
タナベコンサルティンググループ タナベコンサルティング 代表取締役社長
タナベコンサルティンググループのトップとしてその使命を追求しながら、経営コンサルタントとして指導してきた会社は、業種・地域を問わず大企業から中堅企業まで約1000社に及ぶ。独自の経営理論で全国のファーストコールカンパニーから多くの支持を得ている。
1989年にタナベ経営(現タナベコンサルティンググループ)に入社。2009年より専務取締役コンサルティング統轄本部長、副社長を経て2014年より現職。2016年9月に東証1部(現プライム)上場を実現。関西学院大学大学院(経営学修士)修了。『チームコンサルティング理論』『100年経営』『戦略をつくる力』『甦る経営』(共にダイヤモンド社)ほか著書多数。
タナベコンサルティンググループ(TCG)
日本における経営コンサルティングのパイオニアと呼ばれ、東証プライム市場上場の経営コンサルティンググループ。1957年の創業から現在に至るまで約19,000社の経営コンサルティング実績を有する。全国900名のプロフェッショナル人材が、上場・大企業、中堅企業に対して、ビジョン・戦略策定から現場の経営システム・DX実装まで一気通貫に支援するチームコンサルティングを提供している。