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100年経営対談
100年経営対談
成長戦略を実践している経営者、経営理論を展開している有識者など、各界注目の方々とTCG社長・若松が、「100年経営」をテーマに語りつくす対談シリーズです。
100年経営対談 2015.10.29

愛がなければ感動は伝わらない ジャパネットたかた 髙田 明氏

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ハイトーンボイスと徹底した商品ストーリー提案で顧客満足度を高め、お茶の間の人気を集めているのが、「ジャパネットたかた」創業者の髙田明氏だ。小さなカメラ店を売上高1500億円の通販大手に育て上げた背景には、どのような理念があったのか。経営哲学、会社への思い、次世代への期待などについて話を伺った。

 

 

おごらず「誰のために」を問い続ける

 

若松 先般は、タナベ経営主催のセミナー「社長教室」へのご出講、ありがとうございました。ジャパネットたかたは、売上高が約1540億円(2014年12月期)と、通販業界大手に成長されました。成長過程において、「会社が変わったな」と感じた時期や節目はありましたか。

 

髙田 家業のカメラ店(佐世保店)を出した30歳当時から、「1000億円を目指す」などの意識はなく、今でも(その規模に)育てた感覚はありません。しかし、企業が大きくなるにつれ、社会の人々から見られていることを感じるようになり、1000億円を超えたとき、それを強く実感しました。

 

企業が大きくなると、経営者の責任と課題が増えます。社員が増え、養う意識も随分と変わりました。

 

若松 企業成長には「1・3・5 の壁」があります。年商で100億円、300億円、500億円、1000億円、3000億円……という規模の壁です。ジャパネットたかたが超えたのは、まさに1000 億円の壁だったのかもしれません。

 

企業経営の原点となる志や夢を、どのように持たれて成長してこられたのですか。

 

髙田 長寿企業は、一貫して普遍的なものを持っています。普遍的なものとは、消費者の求めに応じること。時代の変化に対応しながら、消費者が求めるものを提供し続ける。おごらず、「誰のために」と自分に問い続けることが重要です。

 

だからこそ、企業理念は「人の幸せに寄与すること」以外にありません。半面、企業が継続的に発展するためには、利益などの数字も重要です。

 

私は“ 数字人間” で、数字にコミットする経営手法を取っています。「経営者が数字のことを言うのはタブーだ」と言われますが、全ての経営者は数字で動いている。利益を上げねば、世の中のためにならないからです。その数字をつくる過程が理念に基づいているかどうかで企業の価値は変わります。

 

成長とは、自社をどう高めるかであって、他社との比較ではありません。ライバルを意識し過ぎると、身の丈を超える数字を求めるようになりがちです。背伸びし過ぎれば、社員や取引先にしわ寄せがいってしまいます。

 

若松 髙田社長が築いてこられたビジネスモデルだからこそ実感できる経営観です。私も企業成長は顧客価値の変化への対応と自己変革の先にあると考えています。そして経営理念は、成果(利益)が挙がらないと信じる価値にはなり得ません。企業規模が大きくなるほどミッション(使命)が必要です。髙田社長はどのような会社を目指してこられたのですか。

 

髙田 「求められる会社」です。「こういう会社がある」ではなく、お客さまから「こういう会社は必要だよね」と思われる会社になりたいのです。商品を買ってくださる方だけでなく、子どもやお年寄りの方にも、ジャパネットたかたのことを知っていただけている。そうした存在感を質・量ともに持ち続けられる会社であってほしいですね。

 

若松 これまでに300社以上の企業再建を手掛けてきましたが、会社がつぶれてなくなるのは、社会における存在価値がなくなったからです。「求められる会社」であり続けることは、「100年企業」になる条件であると思います。

 

株式会社ジャパネットたかた 前代表取締役社長/株式会社A and Live 代表取締役 髙田 明(たかた あきら)氏

株式会社ジャパネットたかた 前代表取締役社長/株式会社A and Live 代表取締役 髙田 明(たかた あきら)氏
1948年長崎県生まれ。大阪経済大学卒業後、機械製造メーカーに就職し通訳として海外駐在を経験。74年に父親が経営するカメラ店へ入社。86 年に「株式会社たかた」として分離独立。99 年に現社名へ変更。90 年にラジオショッピングを手掛けたのを機に全国へネットワークを広げ、その後テレビ、チラシ・カタログなどの紙媒体、インターネットや携帯サイトなどでの通販事業を展開。2012 年には東京へオフィスとテレビスタジオを新たな拠点として開設。2015 年1 月に「株式会社ジャパネットたかた」の代表を退任し、同時に「株式会社A and Live」を設立。

社長業で必要なのは、「愛」です。
人を愛して感じる心がないと、人を動かすことはできないし、人に感動を伝えられません。 髙田 明氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消費者1人ずつに呼び掛けるつもりで商品を提案

 

若松 私は髙田社長から、エアコンや高圧洗浄機などいろいろな商品を買いました(笑)。テレビでのプレゼンテーションは、髙田社長が目の前にいる感じ、お茶の間にいる感じがするから不思議です。あの臨場感はどこからくるのでしょう。

 

髙田 常にお客さまと対話をする気持ちで、カメラに近寄ったりします。社員に対しても同じで、家族のような感覚で接しています。私は道ですれ違う人からも、よく声を掛けられます。そういう距離感を会社全体で出したい。コールセンターでも、お客さまと家族のような会話ができる人を養成したいですね。

 

若松 顧客に最も受け入れられるのは「あなただけのビジネス」です。一方、商品はたくさん売らねばなりません。多くの消費者に向けて、「あなただけに提案している」というイメージを打ち出す。だから、多くの消費者が心奪われるのでしょうね。

 

髙田 50万人の視聴者がいれば、その一人一人に呼び掛けるつもりで話しています。最近は、高齢者にタブレット端末をご紹介しています。音声認識機能があり、指で触って体感的に操作するタブレット端末は、シニア世代にこそ適していますから。

 

若松 IT に苦手意識を持つ人も多い高齢者に、タブレット端末を売るのはすごいですね。商品の提案が全てソリューションになっています。主婦にも高齢者にも家族にも、それぞれの課題を解決する「ソリューション提案」。その切り口が常に新しくて「ハッとする」、「そういう使い方があったのか」と納得する。髙田社長ファンが多くいらっしゃるのも分かります。ところで、通販業界はこれからどのように進化するのでしょうか。

 

髙田 若い人たちは先端技術を使いこなしていますから、今後はネットスーパーが発展するでしょう。恐らく店舗は“ 倉庫” になりますよ。例えば、ネットで注文すれば、最寄りのコンビニエンスストアから商品が届く。これからの10年、20年で相当変わるでしょう。

 

若松 メディアミックスを進められていますが、ネットやテレビなど媒体別の購入割合はどれくらいでしょうか。

 

髙田 現在はネットとテレビが同じくらいで、紙媒体がそれより少し多い状況です。メディアミックスの特性で、テレビだけを見て購入するのではなく、テレビで見てからネットで購入する方も増えました。どの媒体から買ってもらってもよいのです。これからは、間違いなくネットが主流になり、テレビ通販も電話で注文を受けることはなくなるでしょう。コールセンターは注文を受けるのではなく、アフターサービスがメーンになります。こればかりは人がやらないと。