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行政・自治体との連携事例

行政・自治体とタナベコンサルティンググループのコンサルチームが取り組んだ経営改善の事例。施策と成果を紹介します。
2023.06.01

宮城県:経営視点で、農業法人の抱える多様な課題をサポート

ポイント


1 農業法人の多様な課題解決をサポート
2 参加者自身が経営課題と向き合い、経営視点を養う機会に
3 支援終了後も取り組みや参加者の交流が継続

 

 

お話を伺った人


宮城県 農政部 農山漁村なりわい課 6次産業化支援班
八木 千恵 氏
菊田 拓実 氏

 

 

 

 

 

「デリシャストマト」の生産、加工品の生産や販売を手掛けるデリシャスファーム。カフェ事業のオペレーション改善、クラウドファンディング、自社ECサイトを活用した新商品の販売などを実施し、事業成長につなげている

 

 

6次産業化を進め、息の長い「なりわい」の創出を目指す

 

——宮城県では、令和3年度より「みやぎ6次産業化推進プラン」を策定し、生産から加工や販売まで手掛ける農林水産業の6次化に取り組まれています。宮城県は6次産業化・地産地消法に基づいて農林水産大臣が認定する「総合化事業計画」の認定件数が82件で全国10位、東北地方では1位であり、積極的に6次産業化に取り組んでおられますが、目標値などは設定されていますか。

 

八木氏:宮城県では「みやぎ食と農の県民条例基本計画」に基づいて、食に関するさまざまな計画や目標を立てています。6次産業化の規模や付加価値をどう計るかは難しいところですが、1つの指標としているのが、国で調査している6次産業化総合調査の農業生産関連事業の年間販売金額です

 

※令和5年4月現在

 

——宮城県は水産物や畜産物、米などの農産品に恵まれており、「食材の宝庫」と言っても過言ではありません。そうした中で6次産業化を推進される背景についてお聞かせください。

 

八木氏:6次産業化の支援については、かなり長期にわたって取り組んできました。そもそも、農家が農産物をつくって販売するだけではなかなか所得が上がりません。打開策の1つが、農作物を作るだけでなく加工や販売まで手掛ける6次産業化です。宮城県では農家の所得を少しでも上げるため、さまざまな支援を行ってきました。

 

——6次産業化の現状や支援内容についてお聞かせください。

 

八木氏:「6次産業化」と一言で言っても、事業者によって規模やステージはさまざまです。そもそも6次産業化には狭義と広義の定義があり、もともとは農家が生産から加工、販売まで一体で手掛けるものをそう呼んでいました。

 

しかし、最近は国もより広く捉えるようになっており、いわゆる農商工連携で、商工業者と連携して商品開発したり、既存のECサイトを活用して販売したりするケースも含まれるようになっています。

 

そうした中、宮城県では商品開発のサポートや食品衛生法対応への支援、あるいはタナベコンサルティングに支援いただいたような経営改善、商品開発や販路開拓など、さまざまな課題に合わせた事業を展開しています。

 

 

6次産業化への取り組みを推進している宮城県。生産者や旬の農産品情報の発信、宮城県の名産を集めたWEB物産展など、農業や農産品の情報を発信するwebコンテンツが充実。

 

 

参加者が自らの経営課題と向き合い、経営視点を養う機会に

 

——タナベコンサルティングは宮城県農政部と一緒に令和4年度「みやぎ6次産業化リノベーション支援事業」を実施させていただきました。すでに6次産業化に取り組んでいる4事業者を対象に販売強化を目指す支援事業でしたが、商品開発や販売促進に関する課題はどの辺りにあったのでしょうか。

 

八木氏:新たな視点で売れる商品を開発したり、販路を開拓したりしていく機会をつくりたいと考え、今回の支援事業を企画しました。農家さんはこれまで、農作物をつくって売ることに専念してきました。毎日、おいしいもの、良いものをつくろうと真摯に取り組まれる半面、消費者や売り先を見据えた商品開発に関しては、工夫や改良の余地がありました。

 

具体的には、商品開発や販売促進をする際、「売れ筋の商品は何か?」「世の中に何が必要とされているか?」といったマーケットインの発想が必要です。しかし、これまで農家はそうしたノウハウを持ち合わせておらず、プロダクトアウト的な商品開発に偏っていることが課題だと感じていました。

 

——売れる商品をつくる上でニーズとのマッチングは非常に重要なポイントです。今回、候補企業の中からタナベコンサルティングをパートナーとしてお選びいただいた理由をお聞かせください。

 

八木氏:みやぎ6次産業化リノベーション支援事業は、令和3年度の事業スタート時にコロナ禍となっており、新しい生活様式に対応する商品開発やECサイトを使った販路拡大といった事業者の課題解決を目的としていました。実際、県内の事業者においても2020年以降はお客さまの減少をはじめ、少なからずコロナ禍の影響を受けました。

 

選定に関しては、事業目的や期間、概要などを提示した上で事業運営を希望する企業に企画提案していただくプロポーザル方式を採用。研修や支援の内容、これまでの事業実績などを総合的に審査した結果、タナベコンサルティングが選ばれました。

 

 

支援終了後も取り組みや交流が継続

 

——令和4年度の支援事業について、感想や印象をお聞かせください。

 

八木氏:それぞれの事業者が抱える課題は異なりますが、集合研修や個別支援を通して目に見える課題だけでなく、根底にある課題まで洗い出せたことは良かったと思います。その上で、各事業者が課題解決策を立てていらっしゃいました。

 

また、今回の参加者はほとんどが経営者を支える人材でしたが、そうした層のスキルアップを図ることができたと思います。目の前の課題だけではなく、経営者として必要な視点が身についた点は非常に良かったと感じています。

 

——どのような場面でそうした印象を持たれましたか。

 

八木氏:生産者はどうしても「良いモノをつくりたい」という情熱が先走り、採算面が後回しになりがちですが、その挑戦が経営的にどの程度プラスになるのかを考える視点が磨かれたように思います。

 

さらに、経営的にマイナスが予想される場合でも、「どうしたらプラスになるのか」「どこを直すべきか」「ほかにも大事な部分があるのではないか」など、さまざまな視点から検討できるようになったと感じます。集合研修において、経営的な視点から企業のあるべき姿についてもお話いただいたことが非常に良かったと思いますね。

 

 

集合研修ではアグリ業界のトレンドや課題を押さえ、6次産業化の成功企業事例などを習得。また現状分析を通じ、自社の抱える課題を見つめ直す機会に

 

 

——集合研修では、参加者の皆さんの真剣に学ぼうとする姿がとても印象的でした。

 

八木氏:最後のフォローアップ研修では、個別指導で整理した課題や解決策、各事業者の取り組みについて発表してもらいました。抱える課題はそれぞれ違いますが、他の事業者の取り組みは非常に参考になったようです。また、発表後には積極的に質問し合ったり、より詳しい話を聞いたりと交流されている姿は印象的でした。

 

——個別指導の中で中期経営計画を作成した事業所もありました。令和4年度の支援事業は2023年3月で終了となりましたが、現在はどのような取り組みをされているのでしょうか。

 

八木氏:各事業者は継続して支援事業で作成した計画に取り組んでおられます。例えば、支援事業終了後に新たな販路として産直通販サイト「食べチョク」に自社のオンライン直売所を開設したところもありますし、別の事業者はクラウドファンディングの準備を進めていると聞いています。

 

こうした支援事業は、終了と同時に動きが止まってしまうケースも少なくありませんが、今回はタナベコンサルティングの支援を受けながら、事業者が自ら計画を立てた点が良かったと思います。事業者自身が考えた計画ですから、止まることなく前に進み続けておられます。

 

 

「令和4年度みやぎ6次産業化リノベーション支援事業」の内容と実施時期

 

 

地域ぐるみで地方創生、「農山漁村発イノベーション」促進へ

 

——参加された事業者の皆様が、それぞれ前進されていて大変うれしく思います。最後に宮城県の6次産業化について、今後はどのように展開されていくのでしょうか。

 

八木氏:農商工連携をより強化していきたいと考えています。宮城県は農業だけでなく、水産業や笹かまを筆頭に水産加工業も盛んなので、そうした設備やノウハウを水産業や林業でも生かせるのではないかと期待しています。農業や水産業、林業といった垣根を越えてコラボレーションや農商工連携の展開が増えると、もっと宮城県らしさを発信できます。

 

また、6次産業化に関しては、国の掲げる方針が令和4年度に大きく転換されました。農林水産省のホームページにも「農山漁村発イノベーション」の推進が掲げられていますが、地域の文化・歴史や森林、景観、スポーツ、エンターテインメントなどの地域資源を活用した取り組みを図っていく流れになっています。

 

そのため、これからは農林漁業者はもちろん、地元企業なども含めた多様な主体の参画により、新事業や付加価値を創出していくことが求められていきます。

 

そうした方針を受けて、宮城県としても農山漁村がなりわいとして成り立つための新たな産業を創出していきたいですし、来年度からはそうした取り組みに対する支援事業をスタートさせたいと考えています。

 

 

いちごの生産販売を手掛ける一苺一笑は、3カ年経営計画・部門ビジョンを策定。1on1ミーティングも実施し、全員でベクトルをそろえ、連携して業務ができるように組織体制を整えた

 

 

——豊富な農林水産業と地域資源を結びつけることで、宮城県の魅力がさらに高まるはずです。加えて、経営的な視点で事業をデザインできれば産業として花開く可能性は大いにあると思います。

 

八木氏:農家の収入は天候に大きく左右される上、価格の上下が激しく収入が安定しづらいのが現状です。それを6次産業化や農商工連携によって収入を安定させ、農業を続けていける状況をつくっていくことが重要だと考えています。

 

農林水産業が加工品の製造や観光業などと結びつくことで、年間を通して仕事がある状況をつくることは、深刻化する後継者問題に対しても意味があると考えています。

 

——6次産業化において「なりわい」は1つのキーワードと言えますね。宮城県が農商工連携や地域資源を活用しながらますます発展されることを祈念しております。本日はありがとうございました。

 

 

PROFILE

※ 掲載している内容は2023年5月当時のものです。

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