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イベント開催リポート
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コラム 2026.03.24

地方発・世界基準へ。ガーデンから始まる空間価値創造の経営論 タカショー

FCC(ファーストコールカンパニー:100年先も顧客から真っ先に声をかけられる会社)実現を支援する、経営者のための戦略プラットフォーム「トップマネジメントカンファレンス」(タナベコンサルティング主催、全6回)。第6回(2026年2月開催)では、タカショー代表取締役社長の高岡伸夫氏にご講演いただいた。


株式会社タカショー 代表取締役社長 高岡 伸夫 氏

株式会社タカショー 代表取締役社長 高岡 伸夫 氏


37年ぶりの「世界園芸博」とタカショーの挑戦

私は現在、ガーデンおよび外構・エクステリア分野を中心に事業を展開する企業の経営に携わっています。来年度、いよいよA1(最上位)クラスの国際園芸博覧会が横浜で半年間開催されます(2027年3月19日~9月26日)。横浜での開催は実に37年ぶりであり、世界から約1,500万人の来場者が見込まれています。

私は、この博覧会が単なるイベントにとどまらず、日本の産業構造やライフスタイル提案に大きな変化をもたらす契機になると考えています。

今回の園芸博は、「幸せを創る明日の風景」がテーマです。私はこのテーマこそ、これからの時代を象徴していると感じています。この園芸博をきっかけに、従来の大量生産・大量販売型の産業モデルから、人の感性や心の豊かさに寄り添う産業へとシフトしていく流れが、より鮮明になるのではないでしょうか。

創業時年商2800万円規模から始まり、現在では売上高200億円を超える企業へと成長させてきました。本稿では、私がどのように時代の変化を読み取り、社会に適応しながら企業を進化させてきたのかをお伝えします。


「家のくらし」と「庭のくらし」。健康と感性への投資

園芸は単なる装飾ではありません。人の健康、コミュニティー、そして経済に直結するインフラです。

私は、これからの時代において「健康」と「感性」が最大の価値になると考えています。実際にドイツでは、健康寿命を延ばす政策の一環として、庭づくりに補助金を出す取り組みがあります。

これは、庭を整備し、屋外空間で過ごす時間を増やすことで医療費削減につなげるという考え方です。私はこの発想に強い示唆を受けました。ドイツにおいては、庭は「贅沢品」ではなく、「社会資本」なのです。

人は健康をお金で直接買うことはできません。しかし、健康のためであれば投資を惜しまない。この本質に立ち返り、私は「家のくらし」と「庭のくらし」を両輪とするビジョンを掲げました。

住宅を建てる際、建物本体に予算を集中させがちですが、私は住宅の約3分の1のコストで魅力的な庭空間を実現できると考えています。例えば、家の前面に大きなカーポートを設けるのではなく、建物配置を工夫して裏手に庭を設け、かつての縁側のような半屋外空間をつくる。そこにストーリーを持たせることで、近隣コミュニティーとの関係性も育まれます。

私は、商品単体の機能価値ではなく、「感性機能」に基づく空間価値の提供こそが重要だと考えています。大量生産でシェアを取る時代は終わりつつあります。これからは、お客さまが無意識に求めている感性に応えることが、競争優位の源泉になります。


地方創業から上場へ

私は1980年、友人3人とともに和歌山で起業しました。当初は売り上げもなく、電話も鳴らない状況でしたが、やがて開港する関西空港へのアクセスの良さという地の利を見据え、「地方から世界へ」という志で歩み始めました。

創業初期に、私は自ら経営企画書を作成しました。その中に、「1998年に上場する」と明記しました。そして実際に1998年、ジャスダック証券取引所への上場を果たしました。目的を定めれば、手段は変わります。自転車で行くのか、飛行機で行くのかは、到達目標によって決まります。経営も同じです。

私は、経営の基本は経営計画書にあると考えています。ただし、それは熱いスローガンではなく、冷静でシンプルな設計図であるべきです。そして、最も重要なのは人材です。会社は人の成長フレームを超えることはできません。

創業当初、私はUターン人材を採用するモデルをつくりました。現在専務を務める幹部も、このモデルで採用した人材の一人です。特別な才能があるわけではありませんでしたが、適切な環境で力を発揮できる人材でした。私は「人を感じ、つかみ、いかす」ことが経営者の本質的役割だと考えています。この役割に応じて採用を行ったのです。

1992年には、資金繰りの限界から廃業の危機に瀕しました。しかし諦めることなく、投資と経営を分離するために上場を志向し、再成長の道を選びました。再投資を怠らないこと、財務力を高めること、そして次の手を常に考えることが、企業を持続させる鍵だと私は学びました。


AIと感性価値の融合。空間ビジネスの進化

近年、私は住宅分野に加え、非住宅分野やインバウンド向け空間にも注力しています。神社仏閣や観光施設など、日本らしさを求める空間に対し、パッケージ化した設計・部材提供を行っています。

2022年からは、ウェブ上で空間を販売する試みも始めました。これは従来のリアル営業では想像できなかったモデルです。私は、時代の変化を予見しながらも、足元の経営基盤を揺るがせてはならないと常に自戒しています。

タカショーのビジネスモデル 出所:タカショー講演資料

出所:タカショー講演資料


タカショーはガーデンのライフスタイルメーカーですが、大手他社のように別注ができないことを逆手に取り、別注対応ができる会社をつくりました。また、幅広い商品展開でライフスタイルを提案することをテーマにしようと決めました。さらに、100人いれば100通りの趣味嗜好があるため、大手企業ができないようなさまざまなカラー展開も行いました。

最近では、リアルとAIを活用したDXを双方のコンテンツからハイブリッドで提案できるビジネスモデルをつくっています。

他社では今更そんなことをやっても採算が合わないと思われがちですが、当社は大手企業ができないことに注目し、大手他社と差別化を心掛けています。

AIの進化は、まさに時代の切れ目です。私はAIを脅威ではなく機会と捉えています。例えば、「庭プラス」や「EXVIZⓇ AI」といったサービスでは、住宅に特化した学習モデルを活用し、誰でも短時間で高品質なレンダリングを行える仕組みを構築しています。1回30円程度でリアルなCGを生成できるこうしたモデルは、従来の専門企業には参入しづらい領域です。

専門企業がこういったサービスを展開しようとすると、どうしても当社が提供する価格帯では採算が合わない。しかし当社では、自社でも使用することからマイナスになることはありません。

また、ベトナム・ハノイに図面制作会社を設立し、大学内にサテライトオフィスを設けて日本語教育と技術指導を行っています。ハノイでは上記のようなAIサービスやアプリケーションの企画についても行っています。


タカショーの経営ポリシー

私は20年前に読んだダニエル・ピンク氏の著書『ハイ・コンセプト』(三笠書房、2006年)に深く共感しました。同著で説明されているのが、「ハイコンセプト&ハイタッチ」という理論です。具体的には、「効率や論理だけでは人は動かない。意味・物語・共感が必要である」という考え方です。私はこの思想を経営の軸に据えています。

また経営について、私は次の5点に注目しています。

大きな経営の考え方 出所:タカショー講演資料

出所:タカショー講演資料


1つ目は、「企業は人なり」です。私が何より重要だと思っていることは、社長がどれだけ立派かということではなく、いろいろと任せられる幹部社員がいるかどうかです。会社というものは、幹部を育てることが社長の夢であり、その幹部を長く、しっかりと育てていくことこそが社長の大きな役割だと思っています。

2つ目は、「常に新しいことへチャレンジ」、3つ目は、「スピード感が大事・集中と選択」です。ほかには負けないことを選択し、集中して行う必要があります。

4つ目は、これは自分も反省しなければいけないことですが、陰と陽があるように、「すべてにおいてバランスが大事」です。投資と経費のバランスや仕事と休暇のバランス。良い時と悪い時のバランス。これらのバランスが取れている会社の経営者は、社員に安心感をもたらすと思います。

最後の5つ目は、さまざまな方がおっしゃいますが、「運を大事にする」です。私は運が悪い人は注意力散漫な人だと思っています。よく失敗する人は、左右を確認せず赤信号でも車を発進させてしまうようなところが見受けられます。

運の良い人はいろいろな人と付き合い、会社にとっても社会にとっても役に立ちます。一方で、運の悪い人と付き合わざるを得ない場合は、無理をすれば自分まで運が悪くなる可能性があるため、じっと待つ必要があります。

最後に、私は常に「社長10ヶ条」を念頭に置いて行動するように心掛けています。

社長の10ヶ条 出所:タカショー講演資料

出所:タカショー講演資料


経営は、「人が、すべてをつくる。未来は、人がつくる。」と言いますが、例えば机やマイクなどの具体的な物が会社をつくることはありません。必ず、人がつくります。その人とは、社長を意味すると思っています。

私は、万が一社長が体力の衰えを感じるようになったら、辞めたほうがよいと思います。辞めたくないと思うのであれば、体力を付けるべきで、無気力は最大の敵になります。このことは、経営する上で一番大事なことだと思っています。

どのようにすれば若く躍動的に仕事をすることができるかを考え、実際に動きだしていく。こういった観点でアピールしていくだけで、社員はみんなついて来ると思います。「社長は若い」って言ってもらうことはとても良いことだと思います。

地方から世界へ。ガーデンから始まった私たちの挑戦は、いまや空間価値創造へと進化しています。私はこれからも、感性とテクノロジーを融合させながら、新しい時代の風景を創り続けていきます。