FCC(ファーストコールカンパニー:100年先も顧客から真っ先に声をかけられる会社)実現を支援する、経営者のための戦略プラットフォーム「トップマネジメントカンファレンス」(タナベコンサルティング主催、全6回)。第3回(2025年8月開催、テーマ「AIが日本企業に起こすビジネス変革」)では、AIを活用した成長戦略について、JAPAN AI株式会社 代表取締役の工藤智昭氏に講演いただいた。

JAPAN AI 代表取締役社長
工藤 智昭 氏
企業や働き方を変えるAIにかける思い
私は、2010年にジーニーを創業。広告プラットフォーム事業やマーケティングSaaS事業などを行い、2017年には東京証券取引所グロース市場に上場を果たしました。
その後、2023年にAI導入コンサルティングやAI活用プロダクトの開発・販売を行うJAPAN AIを設立しています。
ジーニーのグループ会社であるJAPAN AIは、日本の企業や働く人のために役立ちたいという思いから立ち上げました。ジーニーグループは、伝統的な企業からベンチャー企業まで1万社を超える取引実績があり、JAPAN AIは常時、数百社の企業と取引しています。
私は早稲田大学時代からAIを研究してきましたが、その可能性は無限大です。現在、アメリカではイノベーションが起き、日本でもAIに関する取り組みが加速しています。
今回はAIの最前線についてお話しし、皆様の企業で取り組む際の参考にしていただければと思っています。
企業に寄り添い伴走するJAPAN AI

出所:JAPAN AI講演資料
JAPAN AIの支援範囲は「AX(AIトランスフォーメーション)コンサルティング」「AIプラットフォーム」「AI開発」の3サービスです。
もともとは「JAPAN AI CHAT」という、初期のChatGPTのようなサービスを提供していました。 そこから社員の代わりになったり、共に働いたりするプラットフォーム「JAPAN AI AGENT」を始めました。
その過程で、企業からAI導入の推進方法や業務との親和性、浸透方法についての課題をいただくようになり、コンサル企業と共にAIコンサルティングサービスを始めました。企業固有のAI開発や、生産性・売り上げの向上につながるサポートが市場から評価されています。
弊社のAIコンサルティングサービスは伴走型です。机上の空論にならないよう、構想や実現内容をヒアリングし、企業内でのAIの浸透や業績の向上、工数の削減に至るまでサポートしています。
昨今は、AX基盤構築(生成AI活用プラットフォーム)として、社内マニュアルや営業資料、売り上げ・人事の情報をデータベースに統合し、 管理するツールを提供しています。また、用途や場面に合わせて連携できるデータプラットフォームも扱っています。
生成AIは企業活動の起爆剤
経営に生成AIを取り入れると、業績や働き方が劇的に変化します。
まず、営業においてAIを活用すると、生産性が大幅に向上します。たとえば、弊社では1人の営業社員が1カ月に行う商談数が2倍になりました。顧客への提案書作成がほぼ自動化され、上長への報告や商談の議事録の作成時間も短縮されています。
また、人材の適正配置も可能となりました。現在、JAPAN AIでは分析作業やデータ活用をほとんど自動化し、120人いる組織をたった1人の営業事務担当者が運営しています。
ジーニーでも、プラットフォームにデータを入れ、AIに分析させた上で請求書類を自動作成することで、間接費用を削減できました。
こういった事例はジーニーやJAPAN AIだけでなく、国内でも広がっています。AIを活用することで手のかかる業務が自動化され、浮いた費用は売り上げの向上やほかの用途のために投資できます。
さらに、属人性の緩和や再現性の向上にもつながっています。
以前は、新入社員や異動社員のオンボーディング(人材育成)の工程が膨大であり、就業規則のレクチャーや業務マニュアルのインプット、商談の経緯・結論・取り組みなどの情報が散在していました。
そのため、前任者と深いやり取りを何度も行い、資料を確認しなければ、顧客との商談経緯が分かりませんでした。
それがAIによって、誰もがいつでも情報にアクセスできるようになりました。ベンチャー企業は人材の流動性が高く、引き継ぎに懸念があるため、本当に助かっています。AIの恩恵によって、弊社では、Year on Yearで1400%超の成長を実現しました。2025年から2026年に向けてはAIをフル活用し、5倍から10倍の成長ができると考えています。
このように、生成AIを活用した企業活動は生産性の向上に直結します。AIを活用すれば、100人規模の企業でも、1000名から1万名規模の企業と同等の仕事ができます。今後、AIの活用はますます進んでいくでしょう。
われわれの製品の提供事例に、ネット広告代理店事業をされているピアラがあります。同社はAIの導入によって資料作成業務の負荷を削減し、新人や若手でも高クオリティーの顧客レポートを作成できるようになりました。
業績を飛躍的に伸ばすAI AGENT
2025年は「AIエージェント元年」といわれています。これまでのAIと一線を画す技術が登場し、国内外問わず、AIエージェントの時代に突入しました。
多くの経営者が3年以内に現在の業務の50%が自動化されると考え、それに向けたロードマップを設定しています。
今後数年のAI化への取り組み方によって、企業の生産性は倍になると想定されています。日本でも、まだ生産性を上げられる余地が残されているのです。
AIエージェントは、人間が設定した目標やゴールに対して自律的に特定のタスクを選定し、最適な行動を実行するシステムです。
AIエージェントはChatGPTを開発したOpenAI社が定義する「AGI(汎用人工知能)への進化レベル」に当てはめると、単なる会話型AIではなく「自分で考えて行動を起こすAI」に進化しています。
現在の「AIエージェント」の特徴は以下のとおりです。
・自律的にタスクを実行できる
・複数の外部ツールと連携できる
・従来の生成AIよりも利用者のハードルが大幅に低い
われわれも2024年後半からAI AGENTを提供し、日本企業が使いやすい価格やサポート体制を整えています。JAPAN AI AGENTでは、管理画面から日常的なタスクを実行する「AI社員」をつくり放題です。

出所:JAPAN AI講演資料
JAPAN AI AGENTが従来のAIチャットと違うのは、並立したタスクをツール横断しながら実行する点です。
AIチャットは一問一答形式で指示が必要ですが、JAPAN AI AGENTは一度の指示で商談の文字起こし・議事録の作成・ネクストアクションの抽出・お礼メールの作成までを行います。人間は一連の業務をチェックして送信するだけです。
また、JAPAN AI AGENTはRPA(ロボットによる業務自働化)と似ているといわれますが、自動化の種類や幅に違いがあります。
JAPAN AI AGENTは、自然言語で指示できるため誰もが作成可能です。人間並みの思考力を持つため、広範囲の業務を任せられ、投資対効果はRPAよりも早期に現れます。AI AGENTは、既存の業務フローをAI活用して効率化します。具体的にはマニュアルや手順を基に短期間で開発し、マニュアルがない場合は有識者のインタビューを基に設計します。
企業のあらゆる業務をどうAIに落とし込むのかという面をサポートし、複雑な業務については弊社がご依頼を受けてAI化をしています。
また、弊社では機密情報をAIに取り込んでも、世界中に広がらないようブロックをかけています。このように、AIが学習しないよう強固なセキュリティー製品を選ぶべきです。
海外のプラットフォームとJAPAN AI AGENTの違いは、特定のプラットフォームに依存せず、あらゆる企業内クラウドと連携可能な点です。賢く用途に適合したAIを使えるのが弊社の強みだといえます。
オリジナルのAI開発事例には、某企業のパッケージデザインの生成プロジェクトがあります。以前は、商品デザインをその都度デザイナーに依頼し、大量の工程を経て作成していました。そこで、AI画像生成機能をカスタマイズし、スキル不要でデザインを合成・調整できるようにしました。
これにより、デザイナーに依頼する前に、起案者がAIを用いて自分の手元でデザインを試せるようにプロセスが改善されました。
また、トップセールスの経験値・知識と顧客からの問い合わせを集め、ナレッジデータ化し、組織全体で共有する仕組みも形成しています。
これにより、若手社員がトップセールスのナレッジに、FAQチャットで気兼ねなくアクセスできるようになりました。
これから必須となるAI、導入と推進のポイント
AIの活用を推進するには、4つのポイントがあります。
1つ目は「ミニマムスタート。まず使ってみる」です。AIに触れる環境を用意し、抵抗感をなくします。そして、積極的に使う社員を数人集め、仕事での使用方法を議論しつつ、自社に合ったシステムを探します。
2つ目は 「費用対効果の意識」です。モニタリング画面があるツールを使い、定期的に活用方法を議論し、自社の使い方に合わせてカスタマイズします。そうすることで結果的に活用率が上がり、業務負担軽減の実感が得られるようになります。
3つ目は 「サポートの有無・質の判断」です。自社のITリテラシーを客観的に見つめ、外部の推進支援の必要性を判断します。AIは日進月歩で進化しているため、「人」によるサポートがあり、使い方のレクチャーや推進への取り組みに協力的な企業を選ぶべきです。
4つ目は「経営レベルの意思表示」です。本気で企業を良くしていく「意思」を示すことで、社員たちのAIに対しての取り組み方が変わります。
AIを使う企業は業績が非常に上がります。働き方の改善や人手不足の解消にもなり、知見のない分野についても教えてくれます。
初期には、われわれもAI導入の推進に難しさを感じることもありましたが、これからは、働く人にとって間違いなくAIは必須になるでしょう。