6年間で売上高が1000億円伸長、操業度を上げ効率化を推進
若松 新商品や新市場を開発する「イノベーション」に加え、「コスト・リダクション」を改革の柱とされています。業績を拝見すると、2009年度から2015年度の6年間で売上高が1000億円拡大しており、加えて総資産経常利益率は毎期10%以上。これらは強い意志がないと達成できない成果です。
コスト・リダクションに取り組む上で、変えた点はありますか。
伊藤 今まで国内は、「売れた分だけ作る」という発想でした。食品は鮮度が大切ですから、出来たてを届ける意味で、食品メーカーとして正しい方法です。しかし、生産ラインの操業度は65~70%程度。それをフル稼働することで原価を下げ、「たくさん売る」という考え方に変えたことで業績が向上しました。原価を下げてたくさん売れば利益が出る。その利益をお客さまに還元すると、さらに買っていただけます。
若松 カルビーはジャガイモなど原材料の生産から行っていますから、歩留まりが重要です。歩留まりは消化率で決まるため、全部消化し切った方が利益は出るわけですね。
伊藤 考え方を変えたことで販路も変わりました。以前はディスカウントストアなどとの取引には消極的でしたが、今は「お客さまがそうした店で買いたいなら積極的に売ろう」と考えています。国内の販売先にも開発余地があったわけです。
若松 チャネルが広がったのですね。イノベーションのストーリー力と業績への展開力。その両方に長けていると感じます。
グローバル戦略を推進海外売上比率3割目指す
若松 今後も積極的に海外展開を進めていくのでしょうか。
伊藤 売上高に占める海外比率は約12%(2016年3月期)ですが、伸び率は高く、2011年3月期(約3%)の約4倍へと拡大しました。今後は30%まで海外比率を高めたいですね。
カルビーのユニークな商品を展開する余地は十分にあると思いますが、現地に合ったマーケティングが不可欠。各国の現地スタッフを責任者にしています。
若松 食は地域の特徴が顕著に表れる分野の1つですから、海外各地の顧客価値に合わせるためにも分権が必要ですね。
伊藤 海外事業においては、特に分権が重要。北米で人気のスナック菓子『ハーベストスナップス』は、現地法人の社長に米国人を起用したことで大ヒットした好例です。当初、日本人がデザインしたパッケージで展開していましたが、ヘルシーフードという限定的なマーケットから出られずにいました。そこで、現地化に伴ってパッケージデザインやマーケティングを任せたところ、人気に火がついたのです。
若松 日本企業は商品に自信を持っているだけに、現地化に対する認識が遅れている側面もあります。現地の感覚に合わせるには、それぞれの国・地域に任せる覚悟が必要ですね。
伊藤 大事なことは「米国人が選ぶデザイン」であること。当社に限らず、日本の食品メーカーの商品がおいしいのは間違いありませんが、味やデザイン、ネーミングも含めて、極端に言えば「全て現地に合わせる」くらいの覚悟が必要です。その方がお客さまとの接点が大きく広がります。
若松 攻守のバランス、その中で挑戦する経営姿勢がカルビーの持続的成長につながっているように感じます。分権によって、各商品の海外も含めた市場を活性化し、企業の総合力をさらに高める「自立・透明・シンプルな経営」の推進を祈念しております。本日はありがとうございました。
PROFILE
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- カルビー㈱
- 所在地:〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館22F
- TEL:03-5220-6222
- 設立:1949年
- 資本金:120億800万円
- 売上高:2461億2900万円(連結、2016年3月期)
- 従業員数:3728名(連結、2016年3月末現在)
- 東証1部上場